第91話アクアの墓2
《不思議な場所》
「さて、まずは村の隅に追いやった木材の中で使えそうなのを選んで」
僕は
「これだとまだ木材が足りないな。それに木材に土とかがたくさん付いているせいで床が汚いな・・・・」
僕は少し考える。
そして、まず床は完全には制御できないスズの異能力を出力などを落として使い床についた土などを洗い流していき、風を操る異能力で周りの風を操作し床の上に溜まってしまっている水を全て吹き飛ばす。
「あとは足りない木材をどうにかしないとな」
僕は周りに生えている木に視点を変え、黒い炎で剣の形を生成し木を根元から横に斬る。
そして、木が地面に完全に倒れるまでに何回か斬り900ヘーホーセンチメートルほどの四角形の木の棒を一本作る。それを数回くり返し10本ほど、仮宿の核となる柱を作り床を綺麗にした方法で柱を綺麗にしてから床の上に移動させる。
次に、壁を作るために周りの木を伐採し一本で厚さ3センチほどの板を10枚ほど作り、それを繰り返し合計で700枚ほど作る。
「よし、じゃあ組み立てるか」
僕は
それを何度も繰り返すこと5時間。
「少し頑張りすぎた・・・」
仮宿目的で最初作っていたはずが、すでに2階部分が出来上がりちょっとした大きい一軒家ができていた。
なぜこうなったかと言うと、最初は一階作っただけで良かったけれど内装を作っていくうちに、少しずず気に入らないところが出てきてそこを直していたらいつのまにか2回が出来上がっていた。
「まぁ、できたものは仕方ない。あとはベッド用のくぼみに獣の羽毛とか入れておけば完成なんだよな」
「ワァーなにこれ」
僕がそんな独り言を言っていると、仮宿の外からムイの大きな声が聞こえる。
「フェルトお兄ちゃん、なにこれ?」
ムイが猛スピードで階段を上がって、仮宿の二階にいる僕の元までやってくる。
「いや、構造に木にくわないとこがあったから、そこを直していたらこうなった」
「なんでここまで大きくなったのかはまだよくわからないけど、もしかしたらこれ使えるかな?」
ムイはそう言って背中になぜか背負っていた鞄からゴートシップと呼ばれる獣の羽毛を大量に取り出す。
「これどうしたの?」
「この近くにゴートシップの生息地があって、そこにいたゴートシップ全ての羽毛。安心して、一体も殺していないから足りなかったら数時間後にはまたとってこれるよ」
ムイは笑いながらどんどんゴートシップの羽毛を出していく。
確かにゴートシップの羽毛は数時間たてば完全に戻っているがそれには相当の生命力を使うらしいし、はっきり言ってこの量は多かった。
「いや、これで十分足りるよ」
僕はムイからゴートシップの羽毛を預かると早速ベッドのくぼみに敷いていく。
「完成」
僕がそう言うと、ムイはベッドの上に寝ろこがる。
「わぁ、すごい本物のベッドだ。久しぶりにベッドで寝るなぁ」
「あんまりはしゃぐと羽毛が出てきて・・・」
僕はムイに使う時の注意を言おうと思ったが、ムイはもうすでに気持ち良さそうにいびきをかきながら眠っていた。
「そうだよな、最近はずっと戦闘続きでゆっくり休めなかったからなぁ。まぁ、今日ぐらいは休んでもらおうか」
僕はムイに気づかれないようにそおっとドアを開け、仮宿の一室から出る。
「「おお、これすごいな」」
僕が仮宿の外に出ると、今度はエルとジルの驚く声が聞こえてきた。その数分後にはスイとライの声、最後にスズとエトの声が順番に聞こえてきた。
どうやら、ムイは一人で行動していたらしい。
「今日の見張り番は僕一人でやるからみんなはずっと戦闘続きだったからゆっくり休んでていいよ」
最初は遠慮していたみんなだが、部屋の内装を見た直後『じゃあ、休ませてもらうね』と言って全員部屋で休むことになった。
「それじゃあ、見回り行ってくるか」
僕はそんなことを一人つぶやきながら仮宿を出る。
「ん?」
仮宿をでて、少し歩いたところで結晶石の目の前で座り込んでいる少女を見つける。
「どうかしたの?」
僕は少女に声をかける。
「一応終わりました」
「じゃあ、仮宿を立てたからそこで休みなよ」
僕は名前彫が終わったという少女に仮宿で休むよう促す。
「ここにいたいので大丈夫です」
「そう、なら別にいいけど。君用の部屋も作っておいたから休みたくなったら休みなよ」
僕は少女にそう告げて、村の外に出る。
そして、危険な獣がいないか村の周りを探索することにした。まぁ、もし危険な獣がいたとしてもムイたちによって討伐されている可能性が高いため意味ないかなぁ、と思いながら村の外を歩くこと数分。
『うふふふ』
森の奥から女性の笑い声が聞こえる。
「これは、精霊か?」
精霊は本来物理的に人間に危害を加えたりはしないが、悪戯好きで人間を惑わすことがあるから、見つけ次第注意する必要がある。
精霊は注意するとちゃんとそれを守ってくれるのでそれほど困ることはない。
『こっちにおいで』
僕の目の前に一体の緑色の精霊が現れ森の中に進むよう促す。
最初は惑わすつもりだと思ったが、どうやらそうではないらしい。精霊は人を惑わす時に固有の異能力を使う、だが、この精霊からは異能力を使ったと見られる痕跡はなかったからだ。
「一体どこに連れて行くの?」
『精霊たちの集まる場所だよ。今日は特別に君を招待してあげる。この辺の黒いなにかを殺してくれたお礼だよ。それに君に会いたがっている人・・・精霊もいるからね』
精霊はそう言って森の中にどんどん進んで行く。
もし、森の中で迷っても空を飛んでいけば帰れると思い精霊についていく。
そして、森の中を歩くこと1時間。
『ついたよ』
そこには幻想的な光景があった。
森のひらけた場所にはたくさんの精霊たちがいて、中央に円を作るように周りにたくさんの色の花が育っており、その色は精霊たちの色と同じ赤や青、緑に黄色と言った様々な色の花があった。
「ここは?」
『ふふ、やっぱりあの人そっくり』
違う精霊にいきなり話しかけられた。
僕は声がした方を振り返る。すると、そこにはアクアそっくりの人形の精霊がいた。
「アクア、なのか?」
『残念、私は君のいうアクアじゃないわ。私は前世のあなた、フェイテの彼女。要するにアクアの前世の姿よ』
「そう、か」
『もしかして、アクアちゃんじゃなかったことにがっかりしてる? それだったらごめんね』
アクアにそっくりな精霊は焦りながら謝る。その仕草一つ一つがアクアにそっくりなため、涙が出そうになるのを堪える。
「それで、あなたが僕に会いたがっていた精霊ですか? そうでなくとも質問したいことができたんですけど」
僕はなぜ、死んだはずの人間が精霊となって僕の目の前に現れたのか不思議だったため、アクアにそっくりな精霊に聞くことにする。
『あなたに会いたがっていた精霊は私だよ』
「何のために?」
『もう、冷たいなぁ。もう少し優しくしてくれてもいいじゃない』
「すいません。冷たくしているつもりはなかったんですが。どうしてもあなたとアクアを重ねてしまうので」
僕は感じ悪くしたことをすぐに謝り、理由を説明する。
『まぁ、いいや。それより、君の質問ってなにかな?』
「その前にあなたの名前を伺ってもいいですか?」
僕は話を聞く時にいい呼び名も思いつかなかったので名前を聞くことにした。
『そうだったわ、まだ私の名前は言ってなかったわね。私の名前はエミよ』
エミと名乗るアクアにそっくりな精霊はそう言って微笑む。
『それで、聞きたいことってなにかな?』
「エミさんは何でここに精霊として存在できているのですか?」
僕がそう質問を投げかけると、エミさんは困った顔をして少し考える仕草を取る。
『んーとね、ここの精霊たちのおかげかな? 精霊は本来死んだ子供の魂が小さな人型を保った状態なんだよね。だから、この世界に残った私の小さな魂の欠片だけでもこの世界に精霊として存在させることができるみたいなの。
まぁ、ここが特別な場所だからってとこも含まれるみたいだけどね』
僕は『特別なところ』という単語に引っかかった。
「特別なところ?」
『実はね、そこに私のお墓があるんだ。フェイテが作ってくれたお墓がね』
僕はエミさんが指をさした方を見る。
そこには確かにお墓が建てられていた。
『それでね、私からお願いがあるんだけど。いいかな?』
エミさんは僕に頭を下げてくる。
「何ですか?」
『アクアちゃんのお墓をここに作ってくれないかなぁって。ここは特別な場所だから、獣や人に荒らされる可能性も低いし精霊たちのおかげで綺麗な場所が保たれているからお墓が壊れるということはまずないから』
確かにエミさんが言った通りここは幻想的でエミさんのお墓も壊れるどころか汚れが一切ついていなかった。
『それに、ここにお墓を作ると。来世の人が精霊に導かれてここにくることがあるの。その時に前世の記憶を取り戻すかもしれないから』
僕は少し考える。そして、
「わかりました。それに、一人じゃない方がアクアも悲しくないと思いますから」
僕はワープ空間を生成し、そこから氷漬け状態のアクアの体を取り出す。
「ここの地面掘ってもいいですか?」
『いいわよ。それと、ありがとね』
僕はなぜお礼を言われたのかわからなかった、むしろこちらがお礼を言うべきだと思ったがなにも言わないことにした。
まず僕はアクア体が入る分の大きさの穴を地面に開ける。そして、アクアの体を凍らせている氷ごと土の中に入れる。
そして、その上にミスリル合金でアクアの名前、年などが彫られた竿石を生成する。そして、竿石の前に日本の空色の短剣を刺す。
『それは?』
それは、とはこの短剣のことだろうか?
「それとは短剣のことですか?」
『ああ、うんそれ』
「これは、アクアが死ぬ時に僕とアクアの指輪が変形したものです。何でこうなったのかはわからないですけどね」
僕はこの短剣についてわかっていることを説明する。
『そうなんだ。だったらそれは二人の愛の象徴だね!』
僕は吹き出しそうになる。他人に愛の象徴とか言われると恥ずかしくなってしまったからだ。
だけど、それと同時に僕は一つの変化を見つける。
「エミさん、体透けてきてませんか?」
エミさんの体が徐々に透けてきていた。
『ああ、本当だ。じゃあ、そろそろお別れの時間かな? フェイテと話してるみたいで楽しかったけどもうこんな夢の時間も終わりかなぁ』
エミさんはそう言って微笑むが、その表情には寂しさと悲しさが隠れていた。
「僕もアクアと話しているみたいで楽しかったです」
僕もお礼の言葉を言う。
『そう、それなら良かった。・・・・・あ、一番重要なこと忘れてた。その腰に刺してる刀をちょっと貸してくれないかしら?』
僕は言われた通り刀を渡す。
エミさんはそれを受け取ると、刀の刀身に手をかざす。直後、刀のヒビが完全に塞がり刀が微量の冷気を纏う。
「これは?」
『私の残りの魂を全部この刀に使ったから、前より強度も増したし、異能力の威力も上がったよ』
「すごい、ありがとうございます」
僕はエミさんにお礼を告げる。
『いいのよ、あと、帰りはここの子達が案内してくれるからね。じゃあ、そろそろ本当に時間だから』
エミさんの体はどんどん透けていき、最後にはありがとうと言葉を残して夜の闇に消えていった。
「ありがとうございました」
僕はその場で深々とお辞儀をする。
『そろそろ案内してもいいかな?』
緑色の精霊が他のいろいろな精霊を連れて訪ねてくる。
「お願い」
『了解。じゃあ、みんなやる気出すよぉ!』
緑色の精霊はここの精霊のトップなのだろうか、緑色の精霊の掛け声と同時に『オオォォ!』と元気のいい声が聞こえる。
直後、僕の体がなにもしていないのに宙に浮く。そして、空を高速で飛行する。
そして、数分後には村の入り口についていた。
『ついたよ』
「すごい早かった。ありがとう」
『ううん、これが私たちの頼まれた仕事だから。・・・・やっぱり、あなたからは精霊が好む気配が感じられる。だから、これは私からのプレゼントね』
精霊がそう言うと、僕の体が赤く光り、そのあとに緑、青と言った次々に様々な色に光り最後は白い光で終わった。
『いまあなたに与えたのは精霊の恩恵だよ。君が本当に力を必要とするときだけこの力は発動するから。まぁ、役立ててくれると助かるかな』
どうやら、精霊は全部が全部悪戯好きではないようだ。少なくとも今僕の目の前にいる精霊は優しさがある。
「ありがとうございます。では、そろそろ行かないと仲間が心配するかもなので」
僕は精霊たちに深々とお辞儀をして村の中へと入っていく。
『私たちはあなたをいつも見守っています!』
その声を最後に精霊たちは消えて行った。
僕はもう一回不可お辞儀をした。
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