第78話試練1
《一番古い前世》
僕は湖を底に向かって泳いでいく。そして湖の底に手が触れる。
湖の底に手が触れた瞬間、眩しい光が目に入り目をつぶってしまう。
僕は息が吸えることに気づくと目を開けて周りを見る。周りには物などが何もなく、ただただ真っ白な空間が広がっていた。
「ここは、精神世界か?」
「そうだよ」
僕の目の前にいきなり10歳ぐらいの黒い瞳をした短髪の子供が現れる。
「お前が僕の前世の一人?」
僕は男の子に尋ねる。
「そうなるね。早速僕と戦わないかい?」
「いや、その姿で戦うのか?」
「その姿も何も、これが僕の死んだ時の姿だよ。僕が生きていた時代は今より過激な人とか不治の病といっぱいあったからね。まぁ、僕は力の使いすぎで死んだんだけどね」
男の子は暗い話をしているのにもかかわらず、ニコッと笑いながら話す。
「そんな事より、早く力を手に入れたいんでしょ? なら始めようよ」
男の子は体格からは考えられない速度で僕との間合いを詰めて、一気に拳を振るう。僕は刀を握り氷の壁を作り、拳を防ぐ。
「これぐらいじゃあ一撃も与えられないか。じゃあ、もっと強く打ち込もうかな」
男の子は拳を振るう。僕はさっきと同じく、氷の壁を作り拳を塞ぐ。だが、さっきより硬く作ったはずの氷の壁が砕かれ、拳は僕の顔めがけて飛んでくる。
僕はとっさに左手で拳を防御する。氷の壁のおかげで拳の威力はだいぶ落ちたのか、左腕の骨にヒビが入る程度のダメージで済んだ。僕はとっさにキュアを使い、骨に入ったヒビを治した。
「これでもダメなのかぁ。なら、他の異能力使わないとダメそうだね」
男の子は頭で何か考えている。言ってしまえば隙だらけだ。僕は刀を男の子めがけて振るう。僕は刀を振るうのにためらいがなかった。なぜなら、この子は本気で倒しにいかないと、逆にこちらがやられてしまうからだ。
「おっと、人が考えてる時に攻撃するなんて・・・・、考え事してた僕が悪いか」
男の子はそう言って、最低限の動作で刀を避ける。
「やれやれ・・・・。いいこと思いついた。
僕はスズが使った技と似たような名前を聞いて安心する。なぜなら、男の子は手に何も持っていないからだ。僕はすぐに刀を構え直し、男の子に向かってさっきとは比べ物にならない速さで刀を振るう。
だが、この時の僕はこの世界に同じ異能力は存在しないことを忘れていた。
『ガキィィン』
金属と金属がぶつかる音が聞こえる。僕は目を見開いた。なぜなら、アクアが僕にくれた刀を手に持ち、僕の一撃を受け止めていたからだ。
「あはは、面白いやその顔。驚いてるでしょ? 僕が使える異能力の一つだよ。まぁ、君も僕を倒せば使えるようになるんだけどね」
男の子は笑いながら刀を振り回す。
「じゃあ、また僕から攻撃を仕掛けるね」
男の子は刀を構えて、僕に向かって歩き出す。僕はすぐに刀を構えて対処しようとする。
「
何も見えなくなった。そして、気付いた時にはアクアがくれた刀に似た刀が僕の脇腹を抉っていた。
「・・・な」
僕は一瞬で起こった出来事についていけず混乱する。だが、脇腹からくる激痛によって脳が高速で働き、この場の状況を理解した。
「もしかして、僕の異能力?」
僕は脇腹からくる激痛に耐えながら、男の子に尋ねる。
「どう、驚いた? それと、時間を操る異能力は僕たち全員が使えるんだよ。説明すると、異能力はそれぞれの魂が持つ物であって、生まれた時にランダムに異能力が決まるわけではない。だから、何回生まれ変わろうがその魂の異能力が違うのに変化することはない。そして、僕たちが使えるこの時間を操る異能力は、異能力の中で唯一、生まれ変わるたびに強くなっていく異能力。普通は生まれ変わったら異能力も初期ステータスに戻る。だけど、僕たちの異能力は何度生まれ変わっても衰えることはない。
もう分かっているだろうけど、記憶の図書館が力の封印場所になってるわけ。生まれた時からたくさんの異能力の情報が頭に入ってきたら、脳がやけくるって死んじまうからな」
男の子は僕の異能力について教えてくれる。
「まぁ、お喋りもこれぐらいにして、さっさと続きを始めますか」
男の子はそう言って刀をさらに食い込ませていく。趣味の悪いことに、男の子は僕がすぐに死なないようにじわじわと痛みを与えてくる。
「いい加減に・・・しろ!」
僕がそう叫ぶと同時に、氷の塊が男の子の立っている地面から噴き出して、男の子を後方へと飛ばす。
「
僕はイフリートの力を解放する。そして、黒い炎と赤い炎を身に纏い、炎の形は龍の形をもしていく。
「
僕はない右腕を炎で生成し、炎の右腕に氷で生成した剣を握る。
「へぇ、やっと本気で戦ってくれるんだ。じゃあ、僕も本気で戦わないとね」
男の子がそう言った直後、男の子の皮膚の色が黒く染まり、筋道が黄色になる。そして目の色が黒色になり、瞳の色は赤色になる。
「これが僕の使える異能力をほとんど融合させた姿だよ。この姿の僕と戦った人は全員死んでるから」
男の子はそう言って刀を捨て、拳を構える。
「
僕は攻撃される前に時間を止めて攻撃しようとする。だが、時を止めたはずなのに男の子の姿は僕の視界には映らなかった。
『ドスッ』
「異能力を発動するのにかかる時間がかかりすぎだよ」
僕のお腹に男の子の拳と同じ大きさの風穴が開く。
「もうちょっと楽しめると思ったんだけどだなぁ」
男の子は空いている方の拳を後ろに引く。
「じゃあね」
男の子はなんの躊躇いもなく拳を放つ。僕はそれを見ているだけしかできなかった。
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