第79話試練2
《記憶と異能力の継承》
『ペキペキペキペキ』
僕が男の子の速さに反応できずにいると、氷が勝手に生成され、男の子の拳をギリギリで受け止める。
「あれ、反応できるんだ・・・、でもそれ、君の異能力じゃないでしょ?」
「そうだけどなに?」
僕は警戒しながらも答える。
「いや、他人に守られるってダサいなって思っただけ。それに、その刀からは僕の嫌いな感じがするから、折りたいなと思ったんだ」
僕は刀を守るように後ろに隠す・・・・、ではなく、刀を正面に構えることにした。
「あれ、この戦法効かないんだ。あれだけ力の差を見せつけられたら、普通は刀を隠すとかするのに」
「隠そうとするときに隙ができるでしょ。君の速さだったらほんの一瞬でも隙を見せれば一瞬で殺されちゃうよ。現にさっきも殺されかけたし」
「よくわかってるじゃん」
男の子はそう言って、地面に投げ捨てた刀を踏み潰す。
「やっぱり、僕は来世でも結構強いんだね。でも、僕は誰にも負けない」
男の子から黄色いオーラのようなものが出る。
僕は目をつぶり、感覚を研ぎ澄ます。
「最初に戦ったのが僕なんて運が悪かったね」
男の子は音速を超える速度で接近してきた。
『スパァン』
男の子の右腕が切り落とされる。
「グァァ、お前、何をした!」
男の子は僕を睨む。
「人間は早ければ早いほど、動きがわかりやすくなる。まぁ、成功する確率が低くかったけど、なんとかなってよかったよ」
僕は冷や汗をかきながら何が起こったのかを話す。
「僕が、そんな手に引っかかったっていうのか?!」
さっきとは比べ物にならない殺気を男の子が僕に向けてくる。
「こんな屈辱は初めてだ・・・・。絶対に、殺す」
男の子の殺気はすごかった。
今も僕の足と手は小刻みに震えている。
額から冷や汗が止まらない。
だけど僕は、刀を構え直し、さっきと同じく目をつぶり、感覚を研ぎ澄ます。
「さっきと同じ手はくわないんだよ!」
男の子の気配が分身する・・・、いや、分身したわけではなく速すぎて、気配がいたるところから感じられた。
僕は体全体を守るためとわざと隙ができたように見せか行けるために刀を地面に突き刺した。
「は!諦めたか!」
何かがこちらに飛んでくる。
僕はほんの一瞬だけ周りの気配を探って、すぐに刀の異能力を発動させる。
ついでに、後ろから狙われたときように、背中に黒と赤色の炎の弾丸が生成される直前で時間が止まったものを生成しておく。
『グシャッ』
刀の異能力が捉えたのは、男の子が踏み潰した、アクアが僕にくれた刀の偽物だった。
偽物とはいえアクアがくれた刀にそっくりなため、あまりいい感じはしなかった。
「僕の勝ちだぁぁ」
いつのまにか後ろに男の子が現れる。だが、後ろにはさっき設置した炎の弾丸がある。
僕は時間停止を解除する。
『ズドォォン』
炎の弾丸は男の子の心臓を貫通した。
「・・・・え・・・完全にかったと、思ったのに」
男の子はそう残して、光の粒子になって僕に溶け込んでくる。
「勝てたのか?」
僕は気がつくと、地面にへたり込んでいた。正直、うまくいくか不安だった。もし、最後の一手で男の子が僕の脇腹あたりをを狙っていたら、僕は完全に死んでいただろう。この勝利は完全に実力などではなく、たまたま今回は運が良かっただけだった。
僕はその事実を噛み締めながらも、体の感覚を確かめる。
「・・・っ」
いきなり僕の頭に見たことのない風景、人、村の映像が流れる。
「なんだ・・これ」
頭に流れてくる映像の中に、アクアにそっくりな人がいる。僕はそれを見て、確信する。
「ああ、これはあの子の記憶か・・・・」
この映像が水の中から外を見たように、少しぼやける。
僕は最初、水の中で遊んでいるんだと思ったが、じっと見ると・・・・、アクアに似た女の子の肌にアクアに呪いが発動した時のような跡がついていた。
「・・・なんでだよ、・・・だけは一緒にいてくれるんじゃなかったのかよ。僕は、お前がいなくなったらどうすればいいんだよ」
女の子の名前の部分だけノイズがかかって聞こえなかったが、アクアが目の前で死んだ、あの時の僕にそっくりだった。
「僕はその後すぐに、力を使い果たして死んだんだよ」
僕の頭の中にさっきの男の子の声が聞こえる。
「これが、僕の記憶と異能力。受け取れ。そして、彼女の運命を変えて、彼女を殺した奴の人生を終わらせてこい」
男の子の声は聞こえなくなった。
僕は自分の力を確かめるために、男の子が本気の時の姿を想像して、異能力を発動する。
「うっ、これ結構体にくる」
僕はあの子の異能力が使えることを確認できて、あの姿が体に大きな負担をかけるということがわかったので、これからの戦いのために異能力を解除した。
そして、僕は周りに気おつながらも少し休息をとることにした。
《フェイテ》
3分ほど休んだら、次の僕の前世が現れた。どうやら、男の子はゼンんせの中でも相当強かったらしく、あまり苦戦を強いられることはなかった。
僕は順調に異能力と記憶を継承していく。
だが、やはりどの記憶にも最後はアクアの運命を変えれずに、アクアの前世が死んだ後すぐに、力を使い果たして死んでいる。
僕は何度も見ているうちに、どんどん精神が削られていくのを感じていた。それもそうだろう。何せ、前世とはいえアクアが死ぬところなんてものは見たくないからだ。
「早いね、もう僕の番まで来るなんて」
僕が戦いを終わらせ、少し休息をとっていると、目の前にフェイテが現れる。
フェイテは僕の髪の色と同じ白、目の色は黒だ。
ただ、来ている服がいつもと違い、背中に文様が入った、赤色の浴衣を着ている。
「ああ、この姿なら気にするな。僕・・・俺が生きていた時代はこれが普段着だったからな」
フェイテがいきなり喋り方を変える。
「手加減はしない。だから、お前も俺を殺す気でかかってこい」
フェイテはそう言って、一本の刀を生成し両手で構える。
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