第59話イフリート・再
《精神世界》
ジルが男と戦う少し前。
『僕は何のために仲間を手に入れたんだろう。仲間なんて作らなければこんな気持ちになんてならなかったのかな?』
僕がそんなことを考えていると。
『お前らしくもないな』
僕は聞き覚えのある声を聞く。
『お前は確か、イフリートか』
この声を出しているのはかつてアクアの生命力でキラーズにいる、僕たちが今戦っている男を殺そうとしている獣だ。
『仲間なんて作らなきゃよかった、などとつまらぬことをいうのか貴様は』
どうやら僕が考えていたことは全部筒抜けらしい。
『人の考えていることを勝手に覗くのは良くないぞ』
僕は姿の見えないイフリートに言う。
『別に我も知りたくて知ったわけではないわ。ここは精神世界、考えたことがこの場にある魂に全て聞こえてしまうのだ』
イフリートはそういって僕の考えを除いたことを否定する。
『今のお主はどうしたいのだ?』
イフリートが聞いてくる。
『どうも何も、あの男を倒したい。だけど、僕にはそれを成し遂げるための力がない』
僕は自分の無力さを感じながら言う。
『俺を従えた主人はこんなにも腑抜けだったとはな』
僕の目の前に黒い炎が現れる。
『腑抜けって、お前も僕の目を通して見ただろ? あんなのに勝てるわけないじゃないか』
僕は黒い炎に強く言う。だが黒い炎はそれを否定するように。
『たかが一回負けただけで何いってるんだ? お前はそんなに馬鹿になったのか? なぜイフリートを使わない。なぜ俺を頼らない? お前には守りたい人たちがいるのだろう?』
黒い炎は僕が前黒い炎に言ったことを同じように返してくる。こんな時にそういう返し方をするのは反則だと思った。
『お主は我に圧倒的な力の差があっても勝っただろ? あの時の気持ちはどこいった!』
イフリートが若干切れ気味にそういってくる。
「僕はアクアを死なせない。絶対に守る」
僕の頭にはっきりと僕がアクアに誓った言葉が流れる。
『そうだよな。僕はもう二度と大切なものを失いたくないんだった』
僕は自分の頬を両手で三回叩く。
『イフリート、黒い炎、僕に力を貸してくれ!』
僕は気持ちを切り替えてイフリートと黒い炎に救援を頼む。
『我もあやつには多少因縁がある。それに、我もお主がどうするのか気になるからのう。アクアとかいう娘との進展が特にな』
イフリートはそう言っておじさん臭く笑う。
『イフリート、なんかおじさんみたい』
僕がイフリートにそういうと、イフリートは『何を言っている?』と返してきた。
『我は人間の年齢でいうととっくの昔におじいさんとかいう年齢をも越しておるぞ』
イフリートは面白おかしく笑う。
『そうだったな』
僕もつられて笑う。
『俺は、主人についていくだけだぜ』
黒い炎もどうやら僕に力を貸してくれるようだ。
『じゃあ、早く現実に戻らないとな』
僕はそう言ってから、現実に戻る方法を知らないことに気づく。
『そういえばどうやって戻るの?』
僕がそう言った瞬間、僕の体が赤い炎に包まれる。
『その炎に全身が包まれたらすぐ現実だ』
黒い炎がそういう。
『そうか。この炎は・・・・』
僕は少し離れたところに一人の少女の姿を確認した。
『この炎は暖かいな』
そして僕は現実へと意識が戻る。
《イフリート!》
僕は現実で目をさますと。
「うわァァァ!」
空から落下していた。それもそうだろう、僕は蹴り飛ばされて外に放り出されたのだから。
「イフリート!」
僕がそう言った瞬間、僕の背中が燃え、背中から出た炎は次第に大きくなっていき一体の巨大な炎の獣とかす。
「イフリート、このまま突っ込む。俺を投げ飛ばしてくれ!」
僕はイフリートにそう頼むと、イフリートは投げ飛ばすのではなく僕を抱えて、一瞬で城のアクアたちがいるところに戻っていく。
『グシャッ!』
僕が城に戻った時と同時に何かが破裂する音が聞こえた。
「・・・・え」
僕の目の前でジルが殺された。
「お前は! 何回僕から大事な人を殺していくつもりだぁぁ!」
僕は背中からイフリートを分離させ、足を黒い炎で覆い、そして一気に加速して男の元に行く。
「どりゃぁぁ!」
僕は黒い炎を手にも纏わせ男を力強く殴る。
「なっ!」
僕はそのまま男を後ろに殴り飛ばす。
「
僕はジルの体に触れてそう唱える。ジルの体は一瞬で再生する。
「え、なんで俺生き返って」
ジルは自分の体を見渡す。
「ジル、僕の能力で君を生き返らせた。今は早くアクアたちのところに戻って。そして、みんなで防御を固めていてくれ。多分この辺一帯は燃えると思うから」
僕はジルのそう言ってから男の方へ向く。
「すごいな、まさか、僕が吹き飛ばされるなんて。まぁ、どうせこれで終わりなんだろうけどな。
男から風のかぶしが放たれる。
「イフリート、頼む!」
僕がそう言った瞬間、イフリートの腕が風の拳を遮る。
「これはなかなか強く殴ったものよな。そもそも、あやつはこんな技は使わなかったぞ」
イフリートが楽しそうにそういう。
「イフリートか、久しぶりだな。僕は龍の力を自分に取り込みすぎて能力が変化してしまってね、だから僕はもう龍を召喚することはできないんだよな」
男は独り言を言うように僕たちに情報を提供する。
「あまりなめるなよ」
僕はそう言って右手で刀を構える。そして、左手に黒い炎で剣を生成する。
「はぁぁぁ!」
僕は男の右腕を切り落とす。それに続き、左腕、右足、左足と斬って行く。
「くそ、
男は僕を見てそう言うが、放たれる斬撃波はイフリートが全て防いでしまう。
「上に打ち上がれ!」
僕はそう言って、炎を男の下から噴き上げさせ男の体を上に向かって打ち上げる。そして、刀に氷と炎と黒い炎を纏わせる。
「これで終わりだぁぁ!」
僕は左手に持っていた黒い炎でできた剣を捨て、両手で刀を持ち上に打ち上げられた男めがけて突き刺す。
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