第58話白剣虎
《炎》
『ズドォォォォォォン』
エルの体が縦に真っ二つになる。
「エルぅぅぅぅぅぅぅ!」
僕はそう叫んでいた。
「おっと、また蘇生されたら面倒だから。君は無効に行って」
男はそう言って僕との距離を一瞬で詰め、僕のお腹を扉の方向に向かって蹴る。僕はそのままとき離れた扉から部屋から出され、その奥の壁を突き破り、建物の外に出される。
『僕にはやっぱり力がないな』
僕の体は灼熱の炎に包まれる。
《ジルの新しい力》
白虎の力を僕に移してもらっているとき、目の前では二つのことが起こった。
まず一つは、男がエルの顔の前に手をかざして何かを言った瞬間。エルの体は縦に真っ二つになり、あたりに血を撒き散らし死んだこと。
二つ目は、フェルトくんがエルの元に行こうとした時に男が『蘇生されると面倒だから』と言って、エルとの間合いを詰めた時と同じような速さでフェルトくんとの間合いを詰めて部屋の外に蹴り出したこと。
僕はこのとき、ただ見ていることしかできなかった。
「エト、まだ終わらないの?」
僕は拳に力を入れてエトに聞く。
「もう少しです。あと1分あればなんとか」
エトはそういうが、今戦えるのはアクアちゃんとスズ、ハイドしかいない。
「ジル、私行ってくるね」
今までずっと穏やかな表情だったハイドが僕が捕まっているハイドを助ける時に遭遇した研究員に向けた時とは比べ物にならない殺気を出している。
「あいつは許せない」
ハイドはそういうと、岩のゴーレムを3体生成する。
「アクアちゃん! 援護お願い!」
エルが死んで、フェルトが部屋から出された時からずっと固まっているアクアちゃんにハイドが指示を出す。
「・・・・・え、わかった」
アクアちゃんはそれに気づいてか、戦う体制に入る。
「スズちゃんもお願い!」
ハイドはずっと男を睨んでいるスズにも指示を出す。
「君たちごときで何ができるのかな?」
男はそう言って笑う。
「ゴーレム、あの男を倒して」
ゴーレム達はハイドの指示に従うように男の方に動き出す。
『ズドン、ズドン、ズドン』
ゴーレムの拳が男に当たる。だが男は軽く100キログラムはあるゴーレムの拳を受けてもその場からピクリとも動かない。
「だから、こんな攻撃じゃあ効かないって」
男はそう言って、さっきから殴っているゴーレムのうち一体の前に右手を向けてから。
「
ゴーレムが一瞬で吹き飛ぶ。
「あと2体」
『ズドン』
ゴーレムがまたしても一瞬で吹き飛ぶ。
「あと一体」
男はそう言って右手をゴーレムに向ける。
「これで最後だね」
ゴーレムの体がまた、一瞬で吹き飛ぶ。
「
「
ハイドのゴーレム達が吹き飛ばされたあと、すぐにアクアちゃんとスズがそう言って氷でできた龍と水でできた龍を男の前に生成する。
「「くらえ! 能力融合。
二対の龍が放つブレスは水が何かに触れた瞬間、高速で氷に変えて行った。
そして、男の体を完全に凍らせた。
「「これでどうだ」」
アクアちゃんとスズはもうすでに息が上がっている。多分、この攻撃が全力だったのだろう。
『パキッ』
氷が割れる音がする。
「攻撃自体は良かったね、まぁ、相手が僕なら効かないも同然だけどね」
男の声が聞こえてから。男を凍らせていた氷が完全に割れる。
「「うそ、でしょ」」
アクアちゃんとスズは完全に男に怯えている。
「じゃあこの攻撃をそのまま返してあげるよ」
男は右手をアクアちゃんの方へ、左手をスズの方へ向ける。
「
男の両手からさっきのアクアちゃんとスズが出した攻撃が二人を襲う。
「終わりました」
その時ちょうど、エトからその言葉が聞こえる。
「
アクアちゃんとスズはライのによって救出される。だが、ライの両腕は凍っていた。
「あとは任せて」
僕はそのまま男の方へ向き、男を睨む。
「
僕の体が白い光に包まれる。
「お前は僕と俺が殺す!」
僕は剣を10本空中に生成する。そして両手にも剣を生成する。
「何をするつもりかな?」
男は面白そうに僕を見ている。
「剣よ僕の意志に応えよ」
僕が生成した剣が白い光を纏う。
「なんかヤバそうな感じだなぁ」
男は白い光を纏う剣を見て少し余裕そうな顔がなくなる。
「切り裂け」
僕がそう言った瞬間、宙に浮いていた剣達が一斉に男に向かって飛ぶ。
『バシッ、バシッ』
男が初めて自分から攻撃を防いだ。
「これ、食らったらやばかったな」
男はそう言って、剣10本を一瞬で全て折ってしまう。
「じゃあ、返させてもらうね。
男の周りに白い光を纏う剣が生成される。そして僕めがけて飛んでくる。
「これを狙ってたんだよ!」
僕はジル本人の本当の能力を使う。
「
僕に当たるはずの剣が方向転換し、男に向かって放たれる。
「な!」
男もこれは予想していなかったらしい、男は初めて顔を険しくし、構える。
だが、さっきまで余裕そうにしていたせいで剣は男が対処する前に男に攻撃を与える。
『グサ、グサ、グサ』
剣10本が男の体のいたるところに刺さる。
「これでどうだ!」
僕は少し勝ち誇った顔をして言う。だが男は。
「これは少しやばかったな。まぁいい、遊びはもう終わりだ」
男は男の体に刺さって剣を引き抜くとその場に投げ捨てる。
「このダメージをそのままお前に返す」
男はそう言ってまた目にも留まらぬ速さでかけ、一瞬で僕との距離を縮め僕の肩に触れる。そして。
「
僕は自分の体が破裂する感覚を覚えた。
「ガハッ!」
僕の意識は深い闇へと消えていく。
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