第51話流氷山



季節が変わり夏になっていた。


僕たちは3つ目の山を抜けて流氷山へと向かっていた。


そんな日の早朝


「ねぇ、フェルト、なんで三つ目の山あんなに綺麗だったのに生き物が1匹もいなかったのかな?」


アクアは僕に訪ねてくる。


「なんでだろうな? 黒い生き物といい、獣の行動といいキラーズと何か関係していると見て間違い無いだろうけど」


そうだ、僕たちは3つ目の山を越えるに当たって獣や動物を一回も見なかった、まるで嵐の前の静けさと言わんばかりの光景だった。


「やっぱりフェルトもそう思うよね」


アクアも僕と同じような考えを持っていたのか同意してくれた。


「そういえば、アクアはなんでそんなに僕のこと慕ってくれるんだ?」


僕はずっと気になっていたことをアクアに質問する。


「そ、それは・・・・」


アクアの顔が急に赤くなる。


「・・・・・・フェルトが・・・」

「ドガッ!ドガッ!」


アクアが何か言おうとした時に巨大な岩が馬車のすぐ近くの地面に落ちる、その数は一個や二個などではなく大量に落ちてきている。ただ、巨大な岩は馬車を狙っているわけでは無いようだ、その証拠に馬車から離れたところにも巨大な岩は落ちていた。


「アクア、一様、氷の防御壁貼れる?」


僕はもしも岩が馬車に当たった時のためにアクアに氷でコーティングできるかどうか聞いた。


「・・・・・・うん、任せて」


アクアは顔を赤くしていたが、今の状況を理解したのかすぐに返事をして氷で馬車を固める。ただ、車輪まで凍らせてしまうと馬車が進まなくなってしまうので車輪と馬だけはノーガードだ。


「フェルト、なんだこの状況は?!」


さっきまで寝ていたエルが巨大な岩が落ちてきた音で起きたのか僕に説明を要求する。


「わからない、いきなり空から巨大な岩が降ってきたんだ」


僕は馬車の中を見る、やはりムイたちも起きて戦闘態勢に入っていた。ついでに男子陣は座って寝ていたので腰を痛そうにしている。


「フェルトお兄ちゃん! 馬車の上を見て!」


ムイが空に指をさしてそういう。

僕は言われた通りに見て見ると、そこには。


「なんだよ、あれ」


そこには空に浮かんでいる巨大な山があった。


「エル、あれが何かわかるか?!」


僕はすぐにエルに聞く。だが、エルは空を信じられないという目で見ていた。


「エル!」


僕の声に気づいたのかエルがこちらに向いて喋る。


「あの空に浮かんでいる山は・・・・・・目的地の流氷山だ」


僕たちは驚きに目を丸くする。エルはこういう時、冗談を言う奴じゃ無い。と言うことは、あれが本当に目的地の流氷山と言うことになる。


「少し挑発して見るか」


そう言ったのは、ジル・・・・ではなくジルの体を借りたキルだった。

キルは空中に十数本の剣を生成すると空に浮かんでいる山めがけて剣を放つ。


『カランカランカラン』


キルが放った剣が山に当たる前に空中で止まったかと思うと、そのまま地面に落下して剣が消えた。


「な、俺の能力が消された?!」


キルはそう言う。みんなは驚いているのか『本当か?!』とキルに聞いているが僕だけは違った。なぜなら、僕はその能力に心当たりがあるからである。


「みんな、あの山に乗り込まない?」


僕はアクアたちに提案する。


「「「ああ」」」


みんなが口を揃えて同意してくれる。

僕はその声を聞くと、馬車の下に黒赤の鳥を炎で生成して馬車ごと空に浮かばせる。


「じゃあ行くよ」


僕たちは空中に浮かぶ流氷山目指して空を大きな炎の鳥と一緒に目指す。





僕たちは流氷山に着くとそこでも馬車を走らせる。


馬車を走らせてから少しして。


「フェルトくん、あれ見て」


ジルが森の薄暗いところを指差す。


「キャハ、ヤッパリキタ!」


そこには大きな鎌を持つ少女の姿があった。


「お前は?」


僕はその少女に見覚えがあった。


「エー、ヤダナーもう忘れちゃったの? フェルトお兄ちゃん」


少女はそう言って気味の悪い笑みを浮かべる。


「そんなバカな、お前が生きているはずがない」


僕は強い殺意とともにその言葉を言う。


「そうだよー、私はもうフェルトお兄ちゃんの知っている私じゃないよー」


少女は気味の悪い笑みをしながら言う。多分、僕のこの反応が面白いのだろう。


「フェルト、誰あの子?」


アクアが僕に少女を警戒しながら聞いてくる。


「・・・・・・・・・・」


僕はすぐには話さなかったが。


「死んだはずの僕の妹」


僕がそう言うとアクアたちは少しの間体を強張らせた。


「なーんだ、ちゃんと覚えててくれてたんじゃん」


少女はそう言って笑う。


「少なくとも、僕の妹リンはそんな気味の悪い笑い方や、そんな不真面目な喋り方はしない」


僕はそう言い切る。


「それに、リンが死んだのは8年前で5歳の時だ。今のお前はどう見ても5歳の体型じゃない」


そうだ僕の妹リンは僕が6歳の時、病気で死んだんだ。


「ふふヤッパリ貴様の顔は面白い」


リンがさっきまでの高い声とは違う男のような声で言ったかと思うと、リンの体が紫色の風に包まれる。そして風が晴れた時にリンが立っていた場所には見覚えのある男が立っていた。


「久しぶり、私が任務でゆういつ殺せなかった少年」


ハルトやネイ、両親を殺した張本人がそこには立っていた。


「お前は!」


僕は腰にさしていた刀を抜くとすぐに男に斬りかかる。


「君とはまた戦いたいが、今回は私は戦わないよ」


男はそう言うと指を上にあげる。


死体人形デッドパペット、さぁしたいと戯れるがいい!」


男の後ろの空間が歪み、そこから大量の死体が出てくる。


「じゃあ私はこれで」


男は後ろにできた空間の歪みに入るとその場から消える。


「おいフェルト! この死体たち動き始めたぞ」


エルの言葉で僕は我に返る。


「助け・・・て・・・・・ここ・・ら・・解放・・・・て」


死体たちみんながそう言って目から涙をこぼしている。そして、死体たちの先頭には・・・・リンの死体が動いて大きな鎌をもちこちらに向かってくる。

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