第50話雪男
《アクアからの渡しもの》
日付は変わって。
アクアたちは『ムイちゃんとハイドが寒いから朝風呂入りたいって言ってるから私たちも入ってくる』と言って僕が作った風呂に入りに行った。
それから少しして。
アクアたちが戻ってくる。
「ねぇ、フェルトあれ何?」
アクアは洞窟の奥の方を指差す。そこには雪男が数十体いた。
「エル、今戦えるか?」
僕はエルに聞く。
「任せ、て」
エルは立ち上がるがフラフラしている。
「やっぱいい、エルは休んでて」
僕はエルに言ってから。
「スズ、武器を一個お願いできる? 素材は適当なのでいいから」
僕はスズに武器を一個要求する。
「ねぇ、フェルト、これ使って」
僕はアクアから武器を渡された。・・・・なぜアクアから?
「昨日、私とスズちゃんとで作ったの。ほとんどスズちゃんが作ったようなものだけどかんざしのお礼」
アクアはそう言って綺麗な水色の刃の刀を渡してくれる。
「ありがとう。じゃあ使わせてもらうね」
僕はアクアから刀を受け取ると雪男に向かって行く。
『ズパッ、ズパッ』
僕は雪男を切るが、僕の技術がないせいか皮膚を傷つけているだけで全く刃が通らない。
「フェルト、その刀、異道具だから私の能力が組み込まれてるから使って!」
馬車の方からアクアの声が聞こえて来た。
「使ってと言われてもどうやって使えば」
僕は雪男を攻撃しながら呟く。
「ウゴォォォ!」
雪男は不意に雄叫びをあげる。瞬間、違う雪男たち全員が僕めがけて攻撃をしてくる。
「あぶねっ!」
僕は紙一重で回避する。
「くそ、じゃあ炎で焼かれろ!」
僕は雪男たちのうちの一体に触れて炎で燃やす。だが、そんなの御構い無しに雪男は僕に重たいパンチを放つ。
「グハッ!」
雪男の拳が僕のお腹を捉える。僕は後方へと吹き飛ばされる。
『バゴーン』
僕は氷の壁に背中から思いっきりぶつかる。
「ハァ、ハァ、あいつどんな神経してるんだよ体が燃えてるのに御構い無しとか普通にふざけてるだろ」
僕はそう吐き捨てる。
「ウゴォォォ」
またしても雪男が雄叫びをあげる。雪男たちは一斉に僕に向かって走ってくる。
『どうする、炎が効かないから時間を止めるか? いや、それだと状況が長引くだけだ。すぐに決められるとしたら・・・・・』
雪男たちは僕に殴りかかってくる。
「
僕はそう叫び、能力で雪男たちの体、首などを切断する。
「オォォォ」
雪男たちはそう叫び地面に倒れる。
「なんとかなったのか?」
これで戦闘は終わったと思われた。だが、雪男は切断された部位から氷の柱のようなものが出て雪男の体を修復してしまった。
「嘘だろ?!」
雪男はそんな僕のことなんて気にしなずに僕にパンチを繰り出す。
「ドゴォォォン」
さっきとは比べ物にならない威力の拳が僕に直撃する。
「カハッァ」
僕は又しても後方へ吹き飛ばされる。そしてそのまま、アクアたちのいる馬車の近くの氷の壁に背中からぶつかる。
「フェルト! 大丈夫?!」
アクアはすぐに僕に駆け寄ってくる。
「ガハッ!」
僕の口から血の塊が出る。
「
僕はすぐに雪男から受けたダマージを回復する。
「フェルト、本当に大丈夫?」
「ダメージは回復したが、このままだと僕の体力が限界になるかも」
僕は素直にアクアに伝える。
「フェルト、私も戦う」
アクアが真剣な表情で僕に言ってくる。
「だめ」
僕は即答する。
「なんで?! このままじゃフェルトが死んじゃう」
アクアは強く言う。その表情は本気で僕を心配している表情だった。僕は内心嬉しく感じる。
「大丈夫。僕はそう簡単に死なないから」
僕はアクアに笑いかける。
「でも!」
アクアは納得できないのかすぐに反論しようとする。
「じゃあ、アクアはスズと一緒に雪男がエルたちのところに行った時に対処してくれる?」
僕はアクアにそう言う。
「うん、わかった。でも、フェルトがピンチな時はすぐに助けにいかせて」
アクアは涙目で僕にそう言う。やっぱりこの娘はいい子だ本気で僕のことを心配してくれてる。
「じゃあ、ピンチな時はお願いね。頼りにしてるよ」
僕はアクアにそう伝えると雪男にまた走っていく。
「絶対に負けられない!」
僕は刀を握る力を強める、刀は僕の意志に応えるかのように光る。
「くらえ!」
僕は雪男を斬る。
『カチカチカチ』
僕は雪男を切断することに成功した。そして雪男は斬られた部位から凍っていき、その氷は雪男の体を包み込み雪男の体と一緒に『パシン』と音を立てて弾けた。
「これが、この刀の力」
僕はアクアからもらった刀を見る。
「これなら、いける!」
僕はすぐに刀を構えると他の雪男に斬りかかる。
「ウォォォォォ」
雪男は叫び僕に殴りかかってくる。
「遅い!」
僕は雪男の拳を刀で斬る。そしてさっきの雪男同様、雪男の体を氷が覆い弾けてバラバラになる。
「「「アァァァ」」」
雪男たちは一体だけでは勝てないと考えたのか一斉に殴りかかってくる。
「好都合」
僕は刀に意識を集中させ僕を中心に円を描くように刀を振る。
『スパァン』
白い斬撃波が雪男たちの体を斬っていき、斬り口から凍っていき全身を覆い弾けてバラバラになる。
僕は雪男たちを斬っていく。
気づけば残りは雪男は一体だけになっていた。
「ウガァァァァァ」
雪男は叫ぶ。瞬間、雪男の体が黒い帯みたいなもので覆われる。
「なんだあれ」
僕は不思議に思いつつも雪男に斬りかかる。
『カキン』
さっきまで雪男たちを真っ二つにしていた刀の刃が止められる。
「なっ!」
僕はそれに気づくとすぐにバックステップを踏み後ろへ下がる。だが、雪男を覆っている黒い帯は僕の手足に巻きつくと殴る準備をしている雪男の方へ引っ張っていく。
「やばい!」
僕は防御しようとするが手足が動かせない以上それもできない。
「
僕の前に薄い透明な氷の壁ができる。だが、その強度はすごく、雪男の拳を受けてもヒビ一つ入らない。
「フェルト! 今」
アクアがそう言う。
「ハァァァ!」
僕は刀を雪男に向けて斬る。
「ウガァァ」
雪男は縦に真っ二つに切断されて、他の雪男同様、氷になって弾けてバラバラになる。
「勝て、た」
僕はその場に倒れる。
それに気づいてか、アクアがすぐに僕の方へと走ってくる。
「勝てたよ」
僕はアクアに笑いかけるとアクアは涙を流して。
「本当に心配したんだから!」
と言って僕のお腹を殴る。
「グハッ!」
僕は思わず声を上げてしまう。なぜなら、パンチの威力が意外にも強かったからである。
「あの、アクア? パンチの威力がけが人にするような威力じゃないと思うんですけど?」
「心配させたお返しです」
そう言ってアクアはクスリと笑う。アクアの目にはまだ少し涙が残っていた。
僕たちはそれから十日かけて洞窟を出て、四日で山を越え3つ目の山に向かっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます