第44話人狼
《みんなの考え》
「・・・ん」
「アクア、起きた?」
僕はアクアが目をさますとすぐに言葉をかける。
「フェルト・・・・・え、なんでフェルトがここにいるの?!」
「なんでって、ゴーレムに殺されそうになってるところを助けたんだよ」
「あ・・・・ありがとう」
アクアはバランスを崩したのか横に倒れそうになる。
「おっと、危ない。今空の上だから落ちたら死ぬよ」
僕がそう言うとアクアは周りを見て驚いている。
「え、なんで空の上? それにこの生き物なに?」
「えーと、こいつは生き物というよりかは、僕の能力で生成した鳥でゴーレムを倒した後、空を飛んで戻ったほうが早いかなと思って乗せてもらったんだ」
僕はアクアに説明すると。
「やっぱりフェルトは強いね。私なんて一体倒すのが限界だったのに。そんな力があれば私なんてただのお荷物だよね」
アクアが寂しそうな顔をしていう。
「別にお荷物なんてことはないよ」
「でも、私なんかがフェルトがこれから行くところについて行ったらまた死んじゃうよね」
アクアは僕が自分の無力さを感じた時と同じような顔をしている。
「絶対に死なせない」
僕は強く言い放つ。
「・・・・え」
「ちゃんというね。僕はアクアについてきてほしい。でも、アクアは死んでしまうかもしれない。それに蘇生する能力は一度生き返った人には使えない能力だから次にアクアが死んだら使えない」
僕はさらに続ける。
「でも、アクアが僕についてきてくれるんだったら約束する。絶対に死なせないと」
僕は自分の決心をアクアに話す。
「ついて行っていいの?」
「アクアが付いてきてくれるなら」
「じゃあ付いて行く」
アクアはそう行って笑う。
「じゃあ僕はもっと強くならないとな」
「私だって早く強くなりたいな」
僕とアクアは話をしているとすぐに馬車についた。
《山の中で》
「じゃあ、みんなついてきてくれるということでいいんだよね?」
僕が再度確認を取ると。
「くどい」
とエル。
「はい」
とムイとハイド。
「そうだね」
とジル。
「うん」
とアクア。
「じゃあ、これからもよろしくお願いします」
僕が頭を下げると『くどいよ』とみんなから言われた。
それから流氷山に行くために最初に越えるべき山、黄山に向かう。
商業の街を出発してから2ヶ月、季節は冬から春へ。
「まだ寒いけど、暖かくなってきたね」
僕は馬車を走らせながら隣に座るアクアに喋りかける。
「そうだね」
アクアはそういうと眠たいのかうとうとし始める。
ついでになぜアクアが隣にいるかというと、商業の街を出発してからというものなぜか僕の隣にばかりいる。
本人曰く『隣にいたほうが守りやすいでしょ?』とのことだ。まぁ、確かにそうなんだけどさ。
「そういえば、フェルトの誕生日っていつなの?」
アクアが急に質問してきた。
「僕の誕生日は7月7日だよ」
「そうなんだ」
アクアはそういうと、また風にうとうとし始めた。
今の状況を簡単に説明しよう。
エルはもう昼近くなのにもかかわらず寝ている。
ムイは伸びた髪を必死に紐で結んでいる。
ジルはさっきからキルの能力を使って剣の生成したり、消したりしている。
ハイドはずっとジルのしていることを興味津々に見ている。
みんな髪が伸びきっているがハイドだけは邪魔だからと行って、キルの能力で出した剣で髪を切ってしまった。
「Zzz」
アクアが僕の肩に頭を乗せてきたと思ったら寝息を立てて寝てしまった。
「しょうがないな」
僕は左腕でアクアの体をささえる。
そしてこの後、しばらくこの状態が続いた。
あたりはすっかり暗くなって、もう夜ご飯を食べる時間帯。僕たちは馬車を止め、野宿することにした。
「今日は、魚の塩焼き、レッドフルーツのサラダだよ」
アクアがそう言って皿に乗せられた料理を持ってきた。
僕たちは今黄山を越えるために黄山の山道を通ろうとしている。
「そういえば、この辺ってこんなに獣の数が少ないの?」
アクアがエルに質問している。
「いや、ここは結構強い獣が沢山いる場所だったはずなんだけどな何かあったとしか考えられないほど、獣の数が減っている」
エルが僕が疑問として抱いていることと同じことを言う。
「そうなんだ」
アクアが頷く。
僕たちが食事を楽しんでいると。
「ウゥゥゥ」
狼が森の中から銀色の毛を持つ狼が出てきた。お腹を空かしているようで僕たちの食べている魚を凝視している。
「この狼にこれやってもいい?」
僕はアクアに左k名を上げていいか聞く。
「いいけど、討伐しなくていいの?」
「あの狼はどうやら群れで行動しているわけじゃないみたいだし、僕たちじゃなくて魚に興味を示してるのが面白いからいいでしょ。それに村とか近くにないしね」
「別にいいよ」
僕は狼に焼き魚を3匹ほど皿の上に置き狼の元まで行き渡す。
狼は魚にかぶりつく。
「すごい食べっぷりだな」
僕が狼を見ていると、狼は魚を食べ終わった後地面に『パタン』と倒れた。
「えっ、おいだいじょうぶか?!」
僕は狼の息を確かめる。・・・どうやら寝ているだけだった。
「おーいエル、この狼すごい傷跡があるんだけど直してやってもいいか?」
「お前の好きにしろ」
「わかった。
狼の体が緑色の光に包まれる。
「おい、エル。狼が人間になるなんてことはないよな?」
僕は目の前で起こったことが信じられずエルに聞く。
「ないだろ、どうした、その狼が人間にでもなったか?」
「そのまさかなんだけど」
「嘘つくなら、もっとましな嘘を・・・・・・・」
エルもさっきまで狼がいた場所を見ると黙り込む。
「なんだこれは」
狼は顔立ちの良い銀色の長い髪を持つ綺麗な少女になっていたのだ。そして、さっきまで服を着ていなかったのに、ボロボロの薄い服を着ていた。
「ひとまず馬車で休ませよう」
エルが提案すると、後から集まって着たアクアたちも同意した。
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