第45話異変の原因

SIDE



『ここは、どこだろう。なんだが落ち着く』


 私は目を開け、周りを見る。

 周りには私を不思議そうに見ている人たちがいた。


「なんですか」


 私はとっさに声をあげた。そして今自分が座っているところがベットの上だと言うことに気づく。


「大丈夫?」


 一番最初に声をかけて着たのは綺麗な水色の長い髪を持つ赤い目をした少女だった。


「えっと、あなた方は組織の方達なんでしか?」


 私はこの人たちが敵かどうか聞く。


「組織って、もしかしてキラーズのことか?」


 少女の後ろにいた白い髪で黒い目をした少年が言ってきた。

 顔立ちが私の知っているキラーズの王に似ていたこともあってか、私は殺意を向ける。


「あなた方は一体何者なんですか?」

「僕たちは獣討伐隊待機所を潰しにいく旅人たちだよ」


 白髪の男が答える。


「じゃあ、もう一つ質問です。なんで私はここにいるんですか?」


 私は一番の疑問を問う。


「まさか覚えてないのか? 君が昨日の夜、僕たちが夕飯を食べている最中に魚をねだりにきて食べたら寝込んだんでしょ」


 白髪の男にそう言われると、昨日のことを思い出す。


「すいませんでした、その、さっきなんて飛ばして」


 私はすぐに謝る。


「別に良いよ、初対面だしね」


 白髪の男はそう言って笑う。


「良ければ聞かせてほしいんだけど。君ってどう言う種族なの? それと、なんで僕の顔を見てそんなに怯えているの?」





「あなたたちには恩がありますので話します」


 少女が話す。


「私はキラーズの実験施設から逃げてきました。その実験というのが新しい種族を生み出すという実験で実験成功者はキラーズの本拠の牢屋に閉じ込められ色々な実験をさせられました。時には人間と殺し合ったりしました。

 私は多分見たと思いますが狼と人間が混ざった存在です。研究員たちは私たちのことを人狼じんろうと呼んでいました。

 もうあの実験施設が嫌になった私は、実験に失敗した生物が森に廃棄される日に私は失敗作と一緒に森の中に入りました。

 ですが、実験の失敗作は生きたまま森に出されたせいで森の獣や動物たちを次々に殺したり、食べたりして生きました。当然私も捕食対象として見られ、流氷山からここまで狼になって逃げてきました。

 あなたを怖がっている理由は実験施設で一番実験を楽しんでいた人に似ているからです。人違いなのにすいません」


 少女がそう言って自分が何者なのか、どうして僕を怖がったのか話してくれる。


「そうか、それと今ので疑問に思ったこと聞いて良い?」

「どうぞ」

「『私たち』ってことは他にも何人か君と同じような人がいるんだね」

「何人かどころか私と同じ種族に分けられる人は四十人ほどいました。それ以外にも妖精と人間が混ざって作られたエルフや、龍と人間が混ざって作られた龍人と呼ばれている種族もいました」


 少女は寂しそうにしながら説明をしてくれる。


「そういえば自己紹介がまだだったね。僕はフェルト『14歳』、で僕の隣にいる青い髪の少女がアクア『14歳』、そこの金髪の子の中で一番幼い子がムイ『11歳』、ムイの隣にいるのがエル『18歳』、そしてまだ自己紹介していない男の方がジル『14歳』で女の方がハイドちゃん『14歳』」


 僕は狼少女にアクアたちの名前と年齢を教えて行く。


「私の名前はスズです。13歳です。」


 狼少女、もといスズは自分の名前と年を教えてくれる。


「あと、人狼は普通の人間の10倍は長生きすると実験でわかったそうですから、人狼の歳でいうとまだ1歳ぐらいですかね」


 スズちゃんはそう言って笑う。


「スズちゃんは、自分と同じ種族を助けたい?」


 僕はスズちゃんに聞く。


「助けたいですけど、私には一人で乗り込む力なんてないですから」


 スズちゃんは悔しそうにそういう。


「じゃあ僕たちについてくる?」

「・・・・・え」

「僕たちの目的はキラーズの王を倒すこと。スズちゃんの目的は自分と同じ種族を助けること。目的地としては同じでしょ。だから、スズちゃんが僕たちに情報提供をしてくれるんだったら僕たちと旅している間は食料を用意するってのはどう?」


 僕はスズちゃんに提案する。


「いいんですか? その条件だと私のデメリットが一つもないですよ」

「いいよ、僕にとってはメリットだらけだから。それに、仲間は多い方がいいしね。アクアたちもいよね?」


 僕はアクアたちにも確認を取る。


「これでまた新しい仲間が増えるね」


 アクアとムイが嬉しそうに凉ちゃんの手を握っている。


「フェルトが決めたならいいよ」


 エル、ジル、ハイドがアクアたちを見て少し笑っていう。


「じゃあ決まり、これからよろしくねスズちゃん」

「はいこちらこそ。あと、ちゃん付けは言いにくいでしょうからスズでいいです」

「わかったじゃあよろしくねスズ」


 僕たちは最初に情報を提供してもらい、新しく仲間になったスズの歓迎をするために夜ご飯は豪華になった。





 夜ご飯を食べ終わった頃。


「はーい、女子にとって悪い情報。温泉がこの近くにありません。ですので水浴びしかないです」


 エルが『パン』と手を叩いて注目を集めてからそう言う。


「えっ、温泉無いの?! これまでは行く先々で温泉湧いてたのに?!」


 アクアが驚いている。


「それはたまたま運が良かっただけだ。元からこの地方は泉はあっても温泉が湧きにくいんだ」


 エルがそう言ってため息を漏らす。


「温泉入りたかったな」


 ムイが残念そうにうつむく。


「エル、泉ってどこにあるの?」


 僕はエルに泉がどこにあるのかを聞く。


「向こうの方にあったけど」


 エルが指を差す。


「アクアたちもついてきてよ、面白いことするから」


 僕はエルが指をさした方へ歩いていく。僕の後ろをアクアたちが追いかけてくる。


 数分後。


「ここが泉か」


 僕は早速準備に取り掛かる。




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