第28話フェルトとアクア



 僕はジルたちが温泉を出てから、少しして温泉を出た。

 温泉を出て、屋敷に戻っていくと。


「フェルトさん、お帰りなさい」


 ムイが屋敷の中に布団を敷いていた。


「あれ、なんでここに布団が敷いてあるの?」


 僕は首を傾げてムイに聞く。


「薬の精霊さんが今日はここで寝るといい。って行ってくれたんです」


 ムイはニコニコしながら楽しそうに布団を敷いている。・・・布団敷きって楽しいのか?


「そうだったんだ」

「夜ご飯は、今アクアお姉ちゃんが作ってるんで」


 それを聞いた瞬間、僕のお腹がなった。


「ははは、久々にアクアのご飯たべれると思うと楽しみだな」


 僕は笑いながら言う。


「フェルトさん、体に異常はないですか? 吐き気がするとか?」


 ムイは真面目な顔して聞いてくる。


「大丈夫だよ、特に悪いところはないよ」

「そうですか」


 僕はそう言うと、ムイは安心した顔で頷いた。

 少しして、アクアが夜ご飯を持っていた。

 その後、エルとジルが一緒に来た。

 どうやら、ハイドはアクアと一緒にご飯を作っていたらしい。

 僕たちは、夜ご飯を食べて寝た。



 僕は、夜中にふと起きる。明かりもないので結構くらい。

 僕は寝付けそうになかったので少し森の方を散歩することにした。


 しばらく歩くと。

 どこからか、誰かが泣いている声が聞こえる。

 僕は声がする方に近づいていく。


「本当に良かった。フェルトが帰って来てくれて本当に良かった」


 そこには、目から涙を流しながら笑うアクアの姿があった。


 ガサッ。


 僕は、少し音を立ててしまった。


「誰?・・・フェルト」


 アクアはこちらを見てそう呟き、顔を真っ赤にする。


「フェルト、居たんだったら声ぐらいかけてよ! 恥ずかしいところ見せちゃったじゃない!」


 アクアが、顔を真っ赤にして行ってくる。・・・かわいい


「そういえば、アクア僕のために熊の血を入手して来てくれたんだよね。ありがとうね」


 僕がお礼を言うと。

 アクアは、また泣き出した。


「え、ちょっと、僕なんか変なこと言った?」


 僕がおどおどしていると。


「ううん、嬉しくて泣いただけ」


 アクアは涙を手でぬぐい、笑って返してくる。


「その、お礼と言ってはなんですが、僕になんかできることがあったら言ってね」


 僕がそう言うとアクアは。


「いいよ別に、私も助けてもらったし」


 やっぱりいい子だこのこ。

 でも僕は。


「僕の気持ちが納得しないからお願い」


 僕が頭を下げると、アクアは少し考えて。


「じゃあ、今だけ甘えていい?」


 意外な言葉が帰って来た。

 アクアはあまりよくがないように見えたけど。


「いいけど、何するの?」


 僕はアクアに問う。


「ちょっとここに座って」


 僕はアクアに言われた通りに地面に座りあぐらおかく。

 すると、アクアは僕の膝の上に乗って来た。


「え、ちょっとアクアさん何してるんですか?」


 僕は、おどおどしていると。


「やっぱ我慢できないや」


 アクアは僕の胸にしがみつき泣く。


「ありがとう、帰って来てくれて。後、ごめんなさい。フェルトを助けるためとはいえ、その、キ・・・キスしちゃって」


 アクアは泣きながら顔を赤くしている。・・・忙しい人だな。


「アクア、僕にキスしてたんだ。だから、エルたちがアクアに聞いてって言ってたんだ」


 僕は笑て言うと。


「い、嫌じゃないの?」


 アクアが恐る恐る訪ねてくる。


「アクアみたいなかわいい子にキスされて嫌がる男は、僕が許さないよ。それに、命を救ってもらったんだ、僕に文句を言う資格はないよ。まぁ、確かにキスには驚いたけどさ。てか、逆に僕なんかにキスしても良かったの?その、ファーストキスとかじゃなかったの?」


 僕は逆に慌てながら聞くと。


「ふふっ」


 アクアが笑った。


「私のファーストキスなんだから、ありがたく受け取ってね」


 アクアは笑っていた。

 その笑顔は、僕が見た中で一番綺麗で可愛かった。


「あの〜、そろそろ恥ずかしいんでどいてもらえますか?」


 僕はアクアに聞く。


「お願い、もう少しだけフェルトの膝の上にいさせて、ここに座ってると安心するから」


 アクアはそう言って涙を拭きながら頭を僕の胸に当ててくる。


「すぅー、すぅー」


 どうやら、アクアは寝てしまったようだ。


「おーい、アクアこんなところで寝たら風邪引くぞー」


 僕は小声でアクアに言うが、どうやら聞こえてないようだ。


「しょうがないな」


 僕は無理に起こすのは悪いと思い、炎の熱と形を操って、アクアの全身を覆う炎のマントを生成する。


「やっぱり、かわいいな。・・・こんなことを思ってたらネイに怒られちゃうかな」


 僕は6年前に死んだ彼女のことを思い出す。

 今僕の中にあるネイの炎はどうやら、ネイの魂の一部らしい。

 だから、ネイの魂は、直接表に出てこれないらしい、出てこられるのは、約2回らしい。


「はは、そろそろ僕も眠くなって来たな」


 僕はそう呟くと、炎の柱を背中に作る。


「これにもたれれば寝れるな」


 僕はそれから朝まで寝た。


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