第29話目的地は商業の街

SIDE



 私は朝起きて周りを見る。・・・なんでフェルトがいるの?

 私は一人で呟くと、周りの状況に気づいた。

 私はフェルトにもたれて寝ていたようだ、しかも、暖かいマントまで被せられて。


「私、あれから寝ちゃってたんだ」


 私は呟く。


「そういえば、私、フェルトに寝顔見られたってことになるよね」


 私は一人で言ったのに、顔が熱くなる。


「はぁー、もういいや、私もフェルトの寝顔見ちゃえ」


 私は開き直る。

 フェルトは、相変わらず寝ている。


「疲れてるのかな」


 私はフェルトの顔を見る。


「私、フェルトとキスしたんだよね」


 私は今更になって後悔する。


「何をやってるんだ私わぁぁぁ! いくら助けるためとはいえ、フェルトには婚約者がいたのに、それに、今朝の私の行動はなんだぁぁぁ」


 はっきり言って、めちゃくちゃ恥ずかしい、穴があれば入りたいってこのことだろう。


「はぁぁぁぁー。死にたい」


 私が落ち込んでいると。


「アクア、おはよう」


 フェルトが起きた。・・・そういえば、まだ、フェルトの膝の上だった!


「ん、どうしたの? そんなに顔赤くして」


 フェルトは問いかけてくる。


「いや、昨日あんなことしなければよかったなぁ〜と後悔してました」


 私が素直に言う。・・・全部じゃないけど。


「結構可愛かったよ」


 意外な言葉が帰って来た。

 もう、私の頭は熱すぎてうまく働いてくれない。


「そ、そうだフェルトそろそろ戻ろうよ」


 私はおどおどしながらフェルトに提案する。


「そうだね、じゃあ行きますか」


 私はフェルトの膝から退く。


「じゃあ、行こうか」


 フェルトが私の手を引っ張ってくれる。


 私とフェルトは屋敷に歩いていく。




 僕とアクアは屋敷に戻ると。


「おかえり、丁度いいタイミングだ、今から行く街について話すからそこ座って」


 エルが屋敷に帰って来た僕たちを見て空いている席に座るように言う。


「次の目的地は、商業の街カーランだ。カーランでは、食料など旅の役立つものの調達。そして、一番の目的は、キラーズの研究所に続く、戦闘訓練所がある街だ」


 エルが興奮気味で言う。


「え、それって街に被害とかは出ないの?」


 アクアがエルに聞く。


「僕が集めた情報によると、戦闘訓練所は街から少し離れたところにあるらしい」


 エルがドヤ顔で言う。


「そうなんだ、じゃあ、早く出発の準備をしないとね」


 アクアが言うと。


『お主達、旅に出るならこれを持って行くといい』


 薬の精霊が小さな瓶を渡して来た。

 中には真っ赤な液体が入っている。


「「これは、薬?」」


 僕たちが全員首をかしげる。


『その薬は、能力が少しだけ強くなる薬だ』


 薬の精霊はそう言い鏡の中に帰って行った。


「ありがとうございました!」


 僕は頭を下げ鏡に言う。

 そして、僕たちは馬車を動かすための準備に入った。





 僕たちは、屋敷を出発した。


 日が暮れて来た頃。


「街についたら二人一組になって買い物するから、今のうちに決めとくよ」


 エルがそう言ってくじを作る。


「じゃあ、同じ番号のくじを引いた人がペアね」


 エルが手で番号を隠して僕に引いてと言ってくる。

 僕は一番右端のくじを引いた。

 こうして全員引き終わった後、番号をみんなで確認した。


 一番、ムイとハイド


 二番、エルとジル


 三番、僕とアクア


「エル、これって本当に運なの?」


 僕はエルに聞く。


「すごい運だよね、結構相性いいのかね」


 エルは、普通に返してくる。


「じゃあ、これで決まりだね。ムイちゃんとハイドちゃんは、主に食材を買って来て。僕とジルくんは旅に必要なテントとかの買い出しに行くから。フェルトとアクアちゃんは、これから寒くなってくるから、暖かい上着とか、分厚い布とか買って来て」


 エルはそれぞれお金を渡して行く。


「不思議なんだけど、このお金ってどうやって手に入れてるの?」


 アクア、不思議そうに聞く。・・・確かに、どこから取って来たのだろう。


「このお金は、僕の家の中にあったものを馬車に積んで持って来ただけだよ」


 エルはニッコリとしながら言う。


「あ、ついでに、その中のお金、半分は君たちの好きに使っていいからね」


 エルが、思い出したように言う。


「え、それって、私たちが欲しいものに使っていいってこと?」


 アクアがエルに聞く。


「そうゆうことになるね。まぁ、貯金するって言う選択肢もあるけどね」


 エルはアクアの質問に答えた。



 商業の街に着くまでに七日はかかったが、特に面倒ごとはなかった。


「おおー、ここが商業の街か」


 僕は周りの景色に驚く。

 ありとあらゆるところに、市場があり、いろいろなものが売っている。

 最初にアクアとあった街に比べると街の面積は小さいが、あの街よりは発展している。


「じゃあ、まずは宿屋だね」


 エルがそこらへんにある宿屋に入って行く。


 10分後。


「2部屋借りれたよ、男と女で別れてね」


 エルがニコニコしながら出てくる。・・・エルの後ろでは、恐怖に怯えている店主がいた。 何やったのこの人!?


「じゃあ、今日は旅の疲れを癒して、明日買い出しってことで」


 エルが言うと。


「「はぁーい」」


 全員で返事をした。







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