第20話突撃開始



 僕たちが、選んだ作戦はこうだ。


『みんなで、正面突破する!』


 普通は、バカじゃないの!って言われることだけど、それ以外に潜入の方法がなかったのだ。

 それと、今日は、警備が一番強い日のようだから、突撃は明日になった。

 今日は、みんなで特訓、ということになった。


「ジル、少し特訓に付き合ってくれ」

「わかりました」


 僕とジルは、馬車から少し離れた森の中に行った。


「じゃあ、フェルトいくぞ!」


 どうやら、キルの方が出てきたらしい。


「ジルって言ったんだけどな、まぁ、キルでもいいか」

「そんな残念そうな顔するな! 剣生成ソードメイク


 キルの横に長い両手剣が生成された。


「じゃあ、僕は。炎の双剣ファイヤーダブルソード


 僕の横に炎でできた二つの剣が生成される。


「じゃあいくぞ、キル」

「こい、フェルトー!」


 僕とキルは3時間ぐらい、剣を打ち合った。


 昼頃。


「ジル、フェルト遅い!もう、昼ごはん冷めちゃうとこだったじゃない!」


 アクアが、怒っていた。


「ごめんなさい」


 ジルが、素直に謝る。


「フェルトは謝らないの?」


 顔は笑ってるのに、目が笑ってないよ。ジルなんてガタガタ震えてるし。ムイは、馬車の中で毛布かぶって丸くなってるし。エルは持ってたお茶こぼしてるし。なんか異常に寒いし。


「ご、ごめんなさい」

「よろしい」


 あたりの、温度が戻った気がする。


 僕たちは、昼食を食べて、また、特訓に入った。





 特訓の後の風呂はやっぱ最高だなー。


 僕がそんなことを思っていると。


『おい、お前、自分の命あと10日しか猶予がないことはわかっているんだろうな?』

「黒い炎か」

『だから、わかっているのかと聞いているんだ』

「わかってるよ」

『イフリートでも正規の手順で100日かかったんだぞ。しかも、ちょっとしか、操れない状態でだぞ』

「ちょっと待て、100日って死んでてもおかしくないだろ!」

『人間の生命力と、地獄の獣の生命力を一緒にするな』

「そ、そうだった。・・・・ところで、さっき、正規ルートで、と言ったけど、裏ルートがあるの?」

『し、しまった』

「逃げるのは、無しだよ」


 僕は、問い詰める。


『わかった、わかったから。でも、この方法は邪道なんだ、聞くだけ聞いてみるか?』

「うん」

『わかった。一回だけ俺を完全に使う権利がある。それを使い終わった後に、俺を操る感覚をつかめれば、俺を完全に使えることができる』

「失敗した場合はどうなるの?」

『・・・・・』


 黒い炎は黙ってしまった。すると


『失敗したら、どんな生き物でも、死ぬ』


 黒い炎は、声のトーンを落として、しゃべった。


「それは、お前の意思で黙っていたのか?」

『俺と、彼女の意思だ』

「そうか、じゃあ、それを使うときは、本当にやばい時にするよ」

『それならいい』

「それと、ひとつ聞いていい?」

『なんだ?』

「この黒いあざ、侵食スピードが速くなっている気がする」

『そんなことはないはずなんだが』

「はっきり言うと、もう、俺の右半身と左足にまで、広がっている」

『な、そこまで広がったら、あと5日だけしか生きられないぞ』

「やっぱりか」

『やっぱりって?』

「この、能力を使ってから第六感かな、わかるんだ、自分の体の状態が」


 僕は、黒い炎にそう伝える。


『そうか。・・・・死ぬときは、俺も一緒だ、だから安心して死んでくれていいぞ。地獄えの道案内は俺がやってあげるから』

「ねぇ、ちょっと酷くない?なんで俺死ぬ前提なの?」


 僕は、それから少し、黒い炎と会話をして温泉を出た。




 僕は、朝起きて、少し森の中で、黒い炎を操る練習をした。


「フェルト、何をやってるの?」


 いきなり声をかけられて、僕は驚いた。

 声の主は、アクアだった。


「いや、少し特訓をしようかと」

「フェルト。・・・私に隠してることあるでしょ?」


 図星だ。


「いや、特にないよ」


 嘘をつく。


「フェルト、お願い。隠してること教えて」

「だから、ないよ」


 また、嘘をつく。


「そう、わかった。フェルトが話してくれる時まで待つよ」

「そうしてくれるとありがた・・・・」

「今、隠してることがあるって、認めたね」


 アクアはニコッと笑った。


「でも、安心して、フェルトが話してくれるまで私は待つから」

「アクア・・・・」


 アクアには無駄な心配をかけたくない。でも、できれば嘘もつきたくない。

 でも、これを話してしまったら君は、悲しんでしまうだろう。


「ごめん、でも、近いうちに話すよ」

「うん、わかった」


 僕と、アクアは馬車に戻って行く。



「お、フェルト、アクアおかえり」


 エルとムイが朝食の準備をしていた。


「速く、食べろよー。そろそろ、研究所に行くからな」


 エルが言った。


「わかった」

「わかりました」


 僕とアクアが返事をする。

 僕たちは食事を済まし。動きやすい服に着替える。


「じゃあ、行くよ」


 エルが言った。

 僕たちは、研究所に向かった。





 研究所の前には、キメラ化した門番が立っていた。


「ジル、あのキメラの種類は?」


 僕は、ジルに聞く


「人と人です」

「あんな、なりでも元は人間だったんだな」

「今は、ただの知能のない化け物です。研究所もリーダーがあいつらを操っているだけなので」


 僕は、ジルと話しながら、門番を倒す。


「やっぱり、少ない人数だと弱いな」

「まだ、まだ、序盤です。しかも、こいつらは、失敗作です」

「じゃあ、奥にまだ強い奴がいるんだな」

「そうなりますね」

「じゃあ、できる限り体力は、抑えていかないとな」

「そうですね」


 僕たちは、奥に進んで行く。


 研究所に入ってから、数十分。そろそろ、研究所の中央部まで来ただろうか。


「ここまで、敵と一回しか戦ってないと、逆に、罠があるようにも思えるな」


 僕が、走りながら話しかける。


「そうだね」


 アクアが、答える。

 すると!


「ズドーン」


 大きな地響きとともに、目の前に、大きなキメラが現れた。


「ジル、あれはなんだ?」

「多分、何種類もの生物を合成して、キメラ化させたんだと思う、あれは、人型だから、多分、人間も使われてると思う」


 ジルが、推測を説明する。


 でかいキメラが腕を振り落とす。

 すると、風圧が僕たちを襲う。


「どんな力してんだ、こんなの当たったらひとたまりもないぞ」


 エルが、そういう。


アイス


 アクアが巨体のキメラに大きい氷をぶるける。


「ガシャーン」


 氷は砕け、巨体のキメラにはダメージは通っていなかった。


「これじゃあ、きりがない。ムイ、一緒に戦ってくれるか?」


 エルが、ムイに問う。


「わかりました、これじゃあきりがないですしね」


 ムイが返事をする。


「フェルト、アクア、ジル、ここは俺たちが引き受けたから、先に進んでくれ、こっちが終わり次第、そちらに向かう」


 エルが僕に向けて言う。


「わかった、死ぬなよ」

「ここで、死ぬ気は無いよ」


 エルは笑って返す。


「ムイも死ぬなよ」

「わかっています。私も、ここで死ぬ気は無いので」


 ムイが笑顔でそう言う。


「じゃあ、頼んだ」

「任せろ」

「任してください」


 僕とアクアとジルは、先に進む。

 当然、巨体のゴーレムはそれを防ごうとする。

 だが、


「バシン」


 白虎が巨体キメラの腕を押し出した。


「フェルトさんたちの邪魔は、させません」

「ムイ、ありがとう」


 僕たちは、奥へ進んで行く。


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