第14話地獄の炎



 イフリートがルールの説明をし終わる。


「要するに、お前は、攻撃はしなずに自分の炎を纏って、僕の炎を無力化する。

 僕は10発以内に、お前にダメージを与えればいいんだね」

「そうだ」

「じゃあ、いくよ!炎の竜騎士ファイヤードラゴンナイト


 僕の体が、炎に包まれていく。


双剣撃焔そうけんげきほむら


 全火力を一撃に使った。

 だが、イフリートには傷一つつかずに黒い炎に消された。


「あと、9発だ」


 イフリートは数えていく。


『考えろ、考えるんだ。僕の一番強い攻撃が消されたんだ、僕の出す炎じゃこれは、勝てない。・・・僕の出す炎じゃ?・・・そうか、自分の炎だけじゃなくイフリートの炎も使えばいいんだ。敵意がある炎は利用しづらいけど、普通に炎を出してもらえばいいんだ』


 僕はそう考え、イスリートに話しかける。


「イフリートお願いがある」

「なんだ?」

「地獄の炎をここに出してくれ。何か対価が必要なら、残りの攻撃回数を1回にしてもらっても構わない」

「何か考えがあるのだな? いいだろう、地獄の炎の中でも、私でさえ自由に操れない、黒い炎を出してやろう」

「黒い炎?」

「地獄の黒炎ヘルブラックファイヤ


 僕の横に、僕と同じぐらいの高さの黒い炎が現れる。


「この炎は?」

「それは、地獄で四番目ぐらいに危険な黒い炎だ。私もただ出せるだけで、自由自在には操れないのだ」

「そうかありがとう」


 僕はその炎を体に纏っていく。


「な、何をしている、死にたいのか!?」

「死にたいわけじゃない、お前に勝つためにするんだ」


 黒い炎が体にまとわれてどんどん形が変わっていく。


「お前、それは地獄の炎を取り込んでいると同じなんだぞ」

「それでも、アクアを守れなかったら意味がない!」


 黒い炎は、僕の体にどんどんまとわりついていく。


「よし!そろそろ・・・グハァッ!」


 体が内側から焼けるようだ。


「な、なんだこれ。体の内側が」

「自分が出した炎、以外の炎を使うんだったら、一回体に取り込む必要がある。

 しかも、お前は最初から炎の取り込む量が半端なく多かった。もうじき、お前は体の内側から焼けていき、最後は廃も残らないだろう」

「じゃあ、体に馴染ませればいいんだね?」

「簡単にはできんよ」

「僕の身に纏う炎よ、僕のからだを焼け!」


 身にまとっていた炎が激しく燃える。


「な、何をしている」

「僕の炎で、黒い炎を抑えようと思って」


 指から黒い炎が出てきた。

 だが、黒い炎は消された。


「こ、これは回復のキュアファイヤ

「貴様、こんな能力を使えたんじゃないか」

「お前のを見て覚えたんだ」

「嘘をつけ、たかが一回見ただけだろ」

「一回見ただけでも覚えられたんだよ。まぁ、多分相性が良かったんだ」


 体から黒い炎がどんどん出ていく。

 その度に、黒い炎は止まっていく。


「さて、ここからが本番だ。黒い炎よ、俺の炎となれ!」


『断ろう』


 炎が喋った。


「お前、喋れるのか」

『これでも、生命だ』

「そうなのか、で、なんで俺の炎になってくんないの?」

『お前は、私を扱うに値しない』

「じゃあ、今回だけ君の力を使わせてよ」

『そんなに、あの女が大事か?』

「え、なんで知ってんの?」

『お前の中に入った時に、一通りの記憶は見させてもらった。お前は大事なものを全て奪われたのだろう。また、大事な人を作って、それを奪われたりしたらどうする?』

「奪われないように強くなればいいだけだ」

『この世界に、最強無敗はないのだぞ』

「それぐらいは、知っているさ。俺だってもう、一度絶望に落ちた、だからここまで強くなれた。だけど、大事な人を守りたいっていう思いが人を強くすることもあるんだ!」

『そうか、面白い。ならば、その思いとやらを見せてみよ!』


 体に纏っていた赤い炎と、黒い炎が混ざり合い龍の形を作っていく。


「炎の黒龍ファイヤーブラックドラゴン


 僕は、炎でできた龍を纏っていた。


『さぁ、最高の一撃を出すのだろう?しかも、この精神世界にダメージを与えずに。今回だけは、貴様に力を貸そう』

「ありがとう!」


 黒い炎が両手に集まる。


「黒炎の双剣ブラックファイヤーエッジ


 黒い刀が両手に現れる。


「なんだその、刀は! 本当に黒い炎を操ったというのか?!」

『さぁ、貴様の思いとやらを見せてみよ!この刀は振るだけで、普通の人間なら手が焼け落ちるぞ』

「やってやるさ、そして、手も残しながらな!」


 僕は刀を構える。


「いくぞ、イフリート!」

「面白い。受けて立とう。炎の結界ファイヤーシールド

「黒炎竜の双撃ブラックファイヤドラゴンアタック


 黒い炎の一撃が、イフリートのだした炎の壁を突き破る。

 そして、イフリートの体を真っ二つにする。


「グハァ」

「どうだ!」

「まさか、私に一撃を与えるだけではなく、真っ二つにしてしまうなんて。・・・仕方がありません。しばらく地獄で体を治してきます。

 私を一対一で倒した勝者には褒美をあげたいですが・・・助けが必要な時私を呼んでください、そうしたら私の炎を貸します」

「いいのか?」

「はい。それでは」


 イフリートは炎となって消えていく。


「か、勝ったのか」

「フェルトさん早く出てください」


 ムイがいた。


「そろそろ、エルさんの能力の効果時間が限界のようです」

「わかった」


 僕とムイは開いた扉から出る。





 アクアの精神世界から出た瞬間、すぐに扉が閉まった。


「フェルト、どうだったか?」

「イフリートがいた」

「い、イフリート?! よくそれで無事だったな、この子もお前も」


 そんな会話をしていると。


「んん。・・・ここは?」


 アクアが目をさました。


「あ、アクア?・・・・アクア!!!」


 僕は抱きついていた。


「え、ちょっと待って状況が理解できない。てか、恥ずかしいから離れて、それと、君、なんでこんなに汚れてるの?」


 アクアが混乱している。

 僕はアクアを離す。


「ご、ごめん。混乱するよね、えっとまずは、アクアが刺された時から話すね」


 僕は、今までの成り行きをアクアに伝える。

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