第12話フェルトの知人



 僕は今、アクアを背負いながら走って馬車に向かっている。


『僕があの時油断していなければ、アクアはこんなことにはならなかったかもしれない、それに、時空逆再生の能力を完全に使える状態だったらアクアは今こんな状態にはなっていなかったかもしれない。』


 僕はそう考えながら馬車に戻る。


「あ!フェルトさんお帰りなさい」

「ムイ!ここら辺にある薬草を全種類集めてきてくれ!」

「ど、そうしたんですか!?・・・アクアお姉ちゃん?」

「ムイ、頼む早く取ってきてくれ!」

「わ、わかりました」


 ムイは白虎とともに森の中へ入って行く。

 僕は、アクアをまずベットに寝かせ、脈を確認し、熱を測る。


「脈は正常、熱はなし、その代わりに体温がちょっとずつ下がって行っている」


 僕は今できる限りのことをした。

 30分もするとムイが帰ってきた。


「フェルトさん、この周辺の薬草全種類持ってきました」

「ありがとう」

「フェルトさん、あなた薬草の調合の仕方分かるんですか?」

「わからない、だからここから五日ほどで着くところに知り合いの薬剤師に見てもらう」

「その間、アクアお姉ちゃんはどうするの?」

「僕の時戻しの能力でカバーする」

「それじゃあ、フェルトさんが辛いんじゃ」

「確かに、自分の時間を戻すより、相手の時間を戻す方が疲れる。だけど、そんなことは言ってられない、やっと見つけたんだ、守りたいって思える人を」


 僕はなぜかそんな言葉を発していた。

 こんな気持ちはいつぶりだろうか、少なくともネイやハルトが死んでから、こんな気持ちには一回もなったことがなかったことはなかったはずだ。


「僕は、こんなにもアクアのことが心配だったんだな」

「人を心配するってことは、それだけその人を大事に思ってるっていう証拠です」

「僕はまだ、アクアとあってそんな時間経っていないんだけどな」

「時間は関係ありません、それを言い始めたら私だって、フェルトさんとアクアお姉ちゃんを本当の兄妹見たいに思ってますから」

「それは嬉しいな」


 僕の気持ちは少しだけ晴れた。


「さて、じゃあムイ、アクアの看病頼める?」

「はい!」


 僕はムイの返事を聞いてから馬を走らせる。





 僕たちが、あの村を出発してから5日目。

 なんとか食料も足りていた、夜は獣が襲ってきたりして食料を確保できたし、水は泉でたくさん取ってきた。


「ムイ、アクアの状態はどう?」

「はい、まだ安定しています、けど体温は徐々に冷えて行っています」

「そろそろ、目的地に着くからもうちょい待ってて」

「わかりました」


 10分後。


「ついた」

「ここが、フェルトさんの知人の家ですか」


 そこには、木でできた、少し大きめな家が一軒立っていた。


「おーい、ノア、いるか?」


 僕は、家のドアをノックする。


「僕は今眠いんです・・・フェルト?!」

「久しぶり」

「久しぶり・・・じゃないよ!君が突然いなくなって僕がどれだけ心配したか、君は知らないでしょ!」

「ごめん、ごめん」

「ハァ〜、で、そこにいる幼女はだれ?・・・もしかして、復讐からロリコンに変わっちゃった?」

「そんなわけないだろ!こっちは獣を操る超異能力者のムイ、で今馬車にいる娘が氷を操る超異能力者のアクアだ」

「それで、僕に何か用?」

「ああ、実はノアにアクアの症状を診てもらいたいんだ」

「じゃあ、こちらの提案を受けるんだったら聞いてあげる」

「なんだ?」

「僕もフェルトたちと連れて行ってよ〜」

「い、いやだ」

「あー、断っちゃうの〜?いいの〜?君が久しぶりに助けたいっていう人が死んじゃってもいいの〜?」

「わ、わかったから早くアクアを助けてくれ」

「じゃあ、交渉成功ってことでいいんだね」

「好きにしろ」

「ほーい、じゃあアクアちゃんの症状を見せてもらうね」


 ノアは馬車に眠っているアクアを見た瞬間。


「これは、めんどくさいな」


 と、呟いた。


「ノアどういうことだよ!」

「フェルト、君も薄々気づいてるんでしょ。この子をさしたものは非能力武器だってことぐらい」

「やっぱり、アクアを刺した凶器が非能力武器っていうことになれば僕の能力が聞きにくいのも合点が合う」

「・・・じゃあ、アクアお姉ちゃんはもう目を覚まさないの?」


 今まで、黙っていたムイが問いかける。


「そんなことはないよ、まぁフェルトの頑張り次第だけど」

「どういうことですか?」

「非能力武器は危険な獣の怨念が詰まった素材を加工して作っているから、刺された人はその獣の、呪いにかかるんだ。それを払う方法は、人と人との精神世界を開くための能力者とそこに入って、その獣の分身を討伐するための人が一人必要なんだ」

「じゃあ、まずはその能力者を探さないといけないんですね?」

「その、能力者ならここにいるよ」

「えっ?」

「僕がその能力者だよ、第一、何もわからなかったらその近くの病院とかに行くでしょ。フェルトは非能力武器のせんも考えてここにきたんだよ」

「そうなんですか?」

「まぁ、探すより楽だしね」

「とりあえず、フェルトこの子をそこの祭壇の上に寝かせて」

「わ、わかった」

「それから、ムイちゃんだったっけ?」

「は、はい!」

「この周りに獣が来たら討伐してくれる?」

「わ、わかりました」

「じゃあ始めるよ」


 そういい、ノアは詠唱する。


 ノアが詠唱を喋り終わると。

 アクアの上に大きな扉ができた。


「フェルト、これがこの子の精神世界だよ。準備はいい?」

「いつでもいいよ」

「あ、ついでに言っとくと、精神世界ではその人の精神が耐えられないような攻撃をした場合、この子は二度と目を覚まさないから覚悟してね」

「わ、わかった」

「じゃあ行くよ!、開門」


 扉が開く。

 僕はその中に入った。

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