第10話アクアの本気

SIDE



 今、私とムイは敵の組織の中で一緒に戦っている。


「ムイ大丈夫?」

「はいなんとか。アクアお姉さんは大丈夫ですか?」

「私はこれぐらいつい最近までこなしてたから」

「そうなんですか」


 そう言っている間にも敵はどんどん襲いかかってくる。


「やっぱり弱くても数になると強いね、殺しても殺しても数が全然減らない」

「そうですね、私の使い獣もそろそろ限界みたいです」


 そう、私たちはフェルトと別行動をし始めてからまだ30分しか経っていないのだ。


「ちょっとこれはやばいかもね」

「ですね」

「ムイちょっと衝撃に耐える準備しておいて」

「な、何をするんですか!?」

「ちょっと荒っぽいこと。氷の結晶アイスクリスタル


 敵の頭上に氷が出現し一気に落ちる。


「ドーン!」


 敵の頭に氷が刺さり敵がどんどん倒れていく。


「ふぅー、これでだいぶ数が減ったでしょう」

「最初からそれ使っていればよかったんじゃないですか?」

「この技はピンチな時ぐらいしか成功しないし、体力の消費量が半端ないからなるべく使いたくなかったんだ」

「そうですか」

「次くるから準備して」

「わかりました」


 だが私たちは砂煙が晴れた後の光景を疑った。


「そ、そんな」

「うそ、でしょ」


 そこには頭に氷が刺さったままの人間が動いていた。しかも、また私たちを襲ってきているのだ。


「なんで、動いてんの、私はちゃんと殺したはず」

「わかりません、でもどこかに死んだ人を操る能力者がいるはずです」


 私たちは、死人の攻撃を避けつつ術者を探す、だが、死人の止むことのない攻撃を避けているのが精一杯になってくる。


「アクアさん」

「何?」

「術者との戦いをあなたに任せてもいいですか?」

「いいけど、なんとかする方法あるの?」

「はい、ずっとこの状況が続けば不利になるのはこちらですので」

「わかった、任せるは。でも、無理はしないでね」

「はい。神獣白虎よ己が力を解き放て。白虎解放ストッパーかいじょ


 白虎が光そして私たちの周りにあった死体を消し炭にした。そして、一人だけそこには立っていた。


「ばた」


 ムイが倒れた。


「ムイ!」

「大丈夫です。あとはよろしくお願いします」


 ムイが呼び出した白虎もムイの気絶とともに倒れた。


「わかった、あとは任せて」


 私はムイにそう告げる。


「くックソ、せっかくここにある死体だけで倒せたのに」

「あんたは絶対に許さない!」





「あんたは絶対に許さない、だからじわじわと死んでもらう」

「なめるなよ、この小娘風情が!」


 死体を操っていたのは、中年のおばさんだった。


「私だってね、この組織の超異能力に匹敵する能力の使い手って言われてたんだからね」

「言われてたってことは今はもう言われてないんだね」

「黙れ!あのガキが入ってこなければよかったんだ」

「あのガキ?」

「重力を操るガキだよ、あいつずっとリーダーの護衛などをしていてムカつくんだよ」

「それただの嫉妬じゃん」

「な、このクソ娘がいい気になるなよ!」

「私だって負けるつもりはない、せっかくムイが開いてくれた道だから」

「そう言ってられるのも今のうちだ。龍死体召喚ドラゴンキャダバーサモン


 龍の死体が地面から出てくる。


「な、何よそれ」

「私の能力は、死体を操り保存できる能力なのよ」

「じゃあこの龍は・・・」

「もちろん、本物よ、リーダーが私のためにって闇市で買ってきてくれたの」

「な、嘘でしょ?」

「さぁ、龍よあの小娘を喰い殺せ。死体操作キャバダームーブ


 骨の龍が動き始める。


氷結ひょうけつ


 龍の足を氷で固める。だが、そんなのは効かないかのように氷を一瞬で壊した。


「さぁ、小娘よどうする?」

「だから、負けられないって言ってるっでしょ!」


 でも、ずっとこの状況が続くのはきつい。私にもフェルトがやったような炎を纏うみたいなことができれば。


「いや、ここでそれをやらなければ私とムイ両方とも死んでしまう」

「なんか作戦が浮かんだみたいだがもう遅い、龍よあの寝ている小娘を殺せ!」


 龍が寝ているムイの方へ飛んでいく。


「氷壁X10《アイスウォール》X10」


 氷の壁が龍の向かう方向に建てられる。だが、龍はそれをたやすく破っていく。

 最後の一枚にヒビが入ったその時、ようやく龍の動きが止まった。


「なんとかなって」


 龍は方向転換し私の方へ向かってくる。


「氷のアイスシールド


 私はすかさず氷の盾で身を守る、だが、龍は盾ごと私を吹き飛ばし壁に殴りつける。


「がはぁ!」

「いい気味だね小娘」


 本当にこのままじゃ圧倒的に私が不利だ。・・・やっぱりあれをやるしか。

 私は生成する氷のデザインを考えていく。


「は!小娘血迷ったか!」


 龍が私めがけて飛んでくる。

 龍の爪が私に当たる寸前。


「氷の魔術師アイスウィザード


 龍の爪は氷、崩れ落ちた。


「な、なんだその姿は。本当にさっきの小娘か?」


 相手が驚いている。

 私はじぶんの姿を確認する。

 白いマント、白い帽子、白い髪、白いワンピース、氷でできた杖に、雪の結晶が大きくなった髪飾りをつけていた。


「行き当たりばったりだったけど、なんとか成功した!」

「この、クソ娘が!死体融合キメラ


 骨の龍が中年のおばさんと融合する。


「はっはっは、小娘貴様もここで終わりだ!」


 何かと融合したような声が響き渡る。


「しねー、小娘!」

氷龍生成アイスドラゴン


 私の前に、私より身の丈が4倍ぐらいある氷でできた龍が生成される。

「小娘が!作り物の龍が本物の龍に勝てるわけないだろ!」

「作り物の龍でも龍は龍だ、いけ、アイスブレス!」


 キメラ化した龍の下半身が凍る。


「な、なんで動かせない!」

「あなたは死んでる人を道具にしただけじゃなく、ムイにまで殺そうとした、だから、私はあなたを許さない」

「小娘が!」

氷断アイスカット


 キメラ化した龍の両腕が切り落とされる。


「グワーーー」

「次は両足」

「バシャ」

「あーぁぁあ、たっ頼む許してくれ!」

「寝言は、寝てから言って!」

「バシュッ」


 キメラ化した龍の首が飛ぶ。


「あぁぁぁーーーーーーー」

「生まれ変わりがあるんだったら、次はちゃんとした道を通りな」


 私はそう呟きムイの方へよる。


「ムイ、起きて」

「ん は!戦況は?今どうなって、アクアおねえちゃんその姿は?」

「落ち着いて聞いて、ムイは先に馬車に戻っていて」

「それは、私がお荷物ってこと?」

「そうじゃないけど、私が今から行くところは多分だいぶ荒れてるから、炎とかに耐性がないと皮膚が全面火傷しちゃうは」

「わ、わかった・・・約束、絶対戻ってくるって約束して!」

「わかったは、じゃあ後で」


 私はフェルトの方へ、ムイは集合地点の馬車の方へ向かった。

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