第4話フェルトVSハイネ
《セシルの最後》
今僕は組織セシルの本拠地の前にいる。
「じゃあ、早速潜入開始といきますか」
僕はセシルが拠点としている建物に入ったが、警備員の姿どころか、誰一人として建物にはいなかった。
「なんで人がいないんだ? まあ、そっちの方が僕にとっては好都合だけど。でも、情報がない場合もあるかな」
なぜなら、ここへ来た理由はデスイーターについての情報を入手するためであるからだ。
僕は建物の奥へ進んでいく。
一番大きなドアの前。
結局一戦もしないでセシルのリーダーの部屋に着いてしまった。ご丁寧に部屋の前のタグに『組織長の部屋』と書いてある。
「なんか拍子抜けだったな」
そんなことを口に出しながらドアを開けた。・・・僕は驚いた。
そこには100人と少しの人間の死体があった。しかも、全員体のパーツごとにバラバラにされていた。
そして、その死体たちの上に女性が座っていた。その姿は神話などに出てくる、人間を殺すためだけに異界から現れた死神のようだった。
「いけない子ね。ここは坊やが来るところじゃないわよ。死にたくないのならさっさとおかえり」
女は僕に気づいてか、僕を見て喋りかけてきた。
僕の脳が理解する、こいつは危険だと。
「お姉さんこそ、そこで何やってるの?」
僕は無知な子供のふりをして尋ねる。
「私はね、ここで人を殺してたのよ」
どうやら人を殺したことを隠す気もないようだ。・・・・・まぁ、この死体の山を見ればいくら子供でもわかるだろうけれど。
「お姉さんって、もしかしてハイネっていう人?」
僕は確認を取るかのように女に尋ねる。
「なんで坊やが私の名前知ってるのかしら? もしかして奴隷ちゃんが言っていたガックを潰した人?」
この女性はどうやらハイネだったようだ。しかも、もうすでに僕のことが知られているらしい。
「奴隷ちゃんって、青髪の少女のこと?」
僕は隠すことを諦め、奴隷が青髪の少女のことか確認を取る。
「そっか、やっぱり君が潰してたんだ」
ハイネは予想が当たったのが嬉しいのか笑いながら言う。
「ほら、お前の質問に答えるような言い方をしてやったんだから、お前も僕の質問に答えろ」
僕はハイネをにらみさっきを込めて言う。
「ちゃんと口で伝えない人には教えてあげないけれど、今回は私たちの仕事を手伝ってくれたお礼として教えてあげる。奴隷ちゃんは青髪で赤い目の昨日ガックを潰しに行った少女だよ」
ハイネは僕を見て小さく笑って言う。
「まぁ、安心して。君も殺してあげるから」
ハイネさっきまでと同じ表情をしているが、明らかにハイネの周りの空気が変わる。
「それは困るな、僕はまだ死ねないんだよ」
僕は構えながらハイネに言う。
「そう残念ね、ここで死ぬのは確定事項なのに。
ハイネの体が紫色の煙になっていく。
「これがあんたの能力、自分の体を煙に変える能力か」
確かに体は煙になっているようだが全てではないようだ。じゃっかんだが人影が見える。
「そうこれは私の能力によって生み出された煙、この煙を吸えばあなたは死ぬわ」
僕はハイネが言ったことを聞くと、とっさに口と鼻を手で塞ぐ。
「じゃあ吸わないようにしないとな。炎の
透明の炎が僕の周りを覆う。そしてその炎が正四角柱となった。僕はそれができるのを確認すると口と鼻を塞いでいた手を離す。
煙が炎に触れた瞬間、煙は消えて言った。
「なんで私の煙が消されていくのよ!」
ハイネは自分の煙が消されていくのを見て焦っているのか、発した声からは余裕が感じられない。
「蛇の毒を抜く方法の中に、蛇を焼いて毒を無力化する方法があるでしょ?」
僕がヒントをあげるようにハイネに言うと、ハイネはそれに気づいたのか。
「まさか、私の煙も同じ原理で無力化してるって言うの?!」
ハイネから発せられる声には驚きが含まれていた。
「そうだよ、今の僕にその技は通用しないよ」
僕がハイネに勝ち誇った風に言うと。
「ふ、ふははははははは」
ハイネはいきなり笑い始めた。
「どうした、気が狂ったの?」
僕がハイネに聞くと、ハイネは。
「いや、これぐらいで買った気でいる坊やが面白くてね。私は煙の効果を操れるのよ、だからこんなこともできるの」
ハイネが笑いながら言った瞬間、僕が生成した炎のバリアの近くが爆発する。
「バゴーン」
爆発によって、僕の右腕は損傷する。
「何が起こったの?」
僕は周りを見るが、何も爆発するものはない。
「今この場所にある煙は火に触れると爆発するようにしたのよ」
ハイネがそんな僕を見てか、笑いながら言う。
「だからか、じゃあこれを解けばいいだけじゃないか」
僕はファイヤーキューブを解いた。瞬間、口から、目から、鼻から血が吹き出した
「何これ」
僕には意味がわからなかった。
「坊や、誰も毒の煙を消したなんて言ってないわよ」
ハイネが低く恐怖を与えるような声で言う。
「元ある煙にさらに爆発効果の煙を追加したってことか」
僕は意識が切れそうなのをこらえてハイネに聞く。
「そうよ、まあ、諦めて死ぬことね、じゃあね坊や」
ハイネはそう言って煙を消して去っていく。
僕は力を振り絞って。
「
僕から吹き出していたちは僕の中に戻っていき爆発効果の煙は消え、炎の結界がまた貼られていた。
「な、坊や何したの?!」
ハイネもこちらに気づいたのか、驚愕の声をあげる。
「時を戻しただけだよ」
僕はハイネに教える。
「坊やの能力は、炎を自由自在に操るじゃないの!?」
「あんたらのところにもいるだろ二つ持ちが。まぁ、僕の炎の力は貰い物だけどな」
僕がハイネに言うと、ハイネは思い出したかのように『あっ』と言った。
「そういうこと。でも、またあの煙を出せばいいだけのこと、そういう能力にはクールタイムが絶対あるわ」
ハイネの推測は普通はあっている。だが、僕は普通の生き方をしていない。
「確かに、普通の生活をすればクールタイムが必要なままだった。でも、俺が過ごしてきた6年間は、復讐のためだけに使った時間だ。クールタイムを無視して使うことも少しならできる」
僕は自分の周りに炎を出す。
「な、そんなチート級な能力をクールタイムなしで打つなんてどうかしてるわ」
ハイネの驚愕している顔が、霧が晴れたおかげではっきり見える。
「確かにな時を戻すために3年研究につぎ込んだ。クールタイムを縮めたり、一回クールタイムを無しして使う方法を身につけるために2年間戦い続けた。だから、こんな状況に慣れてんだよ!」
僕が強く言い放つと、周りの炎もそれに合わせて激しく燃える。
「そんな、く、じゃあ私も本気を出すわ。
ハイネがそう言った直後、真っ黒な煙が出て視界が見えにくくなる、耳が聞こえにくくなる、息がしづらくなる、煙が炎に触れて爆発する、煙が雷を纏っている色々な効果の煙が撒き散らされている。だが、今の俺には関係ない!
「
この部屋一帯の僕以外の時間が止まった。そして。
「
僕の目の前に炎の玉が作られ、ハイネめがけて飛んでいく。
「
サンボールがハイネに直撃する瞬間に、時間を操るの方の能力を解除した、僕の炎の結界に煙が当たり爆発が起こる。
『バギィ』
今の爆発で体の骨が何本か折れたようだ。
だが、ハイネはそれだけでは済まないだろう。
「いっけぇぇ!」
炎の玉はハイネの近くでハイネが出した煙にあたり大爆発を起こす。
「バゴォォォォン」
ハイネの影と思われるところで爆発した。
「ウワァァァァァァァ」
ハイネが叫び声をあげた後、煙は消えて言った。
僕は勝ったんだ!
《ハイネの本当の能力と願い》
爆発したであろうその場所にはハイネが転がっていた。
「坊や強いのね、お姉さん負けちゃった」
ハイネは負けたのになぜか嬉しそうだ。
「いいえ、あなたも強かったですよ」
僕は素直に戦った時の感想を伝える。
「そう言って貰えると嬉しいわね、坊や私の本当の能力知りたくない?」
「本当の能力?」
僕は言っている意味がわからなくて、もう一度リピートしてしまう。
「私は体を煙にしてるんじゃないの、年を煙にしているのよだから自分でも、いうの恥ずかしんだけど、私はもう200歳なのよ」
僕の思考が一瞬止まった。
「にっ、200歳?!?!」
僕は声を上げていう。
「そうよ、今まで戦ってきた人で私に勝てたのは奴隷ちゃんとボスぐらいかしら」
ハイドはそう言って、その時を思い出したのか小さく笑う。
「ラジルは勝てなかったのか?」
僕はデスイーターの準最強の男の名前を口にすると、ハイドは少し驚くがすぐに。
「ラジルが今のボスよ」
衝撃の事実を知らされる。
「えっ」
「ウォルフはキラーズに入ったの」
キラーズという言葉に僕は殺意を覚える。だが、表には出さない。
「じゃあデスイーターはキラーズに関係しているの?」
僕がハイネに聞くと、ハイネは。
「それは私にもわからないわ、でも一つだけわかることはキラーズは年を重ねるたびに強くなって言っている」
僕も薄々気づいていたが、ハイネの言葉で確信に変わる。
「そうなのか。・・・・・最後に一つだけ教えろ」
僕がハイネに言うと、ハイネはまだ何かあるの? と言う顔をした。
「何?」
「ウォルフの能力はなんだ?」
僕は一番きになっていることをハイネに聞く。
「それは私にもわからないわ」
「そうか、・・・・もう一つだけいいか?」
僕はハイネが答えた後、僕はもう一つ気になっていたことを聞いていいか聞く。
「最後じゃなかったのかしら?」
ハイネはそう言って意地悪そうに笑う。
「いや、なんで僕にそこまで情報を教えてくれるのかが気になって」
僕が最後の疑問を口にすると、ハイネは真剣な顔をして。
「奴隷ちゃんを救って欲しいの」
意外だった。この部屋にある死体の山を築いた本人が、人を心配するとは思わなかったからだ。
「ちなみに理由を聞いていいか?」
僕がハイネに尋ねると、ハイネは。
「私みたいなおばさんにはもう、人生をやり直すことはできないけど。奴隷ちゃんにはまだ未来があるもの。
好きな人を作ったりとか、結婚したりだとか、子供ができたりだとか。
そんなことをたくさんして欲しいからかしらね」
ハイネは穏やかな顔をして言う。
「わかった、その約束は守る。だから、安心してあなたが行った罪を受け入れてこい」
僕がハイネの願いを聞くと言うと、ハイネは。
「もう一つお願いがあるの。奴隷ちゃんにあなたの大事なものを奪ったのはキラーズの連中とラジルだと伝えて欲しいの」
僕の記憶に深く刻まれている過去が、頭に流れてくる。
「わかった、伝えておくよ」
僕がハイネに行った直後、ハイネから。
「ごめん二つになっちゃった」
ハイネから、意外と元気そうな声が聞こえる。
「聞いてやる」
僕は呆れてため息をついた後言うと。
「奴隷ちゃんに名前を与えて上げて、そしてあなたが外の世界を見して上げて」
ハイネからその言葉を聞いた時、僕は本当はこの人はいい人なんだと心から思った。
「なんでそんなにそいつのことを心配するんだ?」
僕は何故かと聞くと、ハイネは満足そうな顔をして。
「奴隷ちゃんは、私にとって娘みたいな存在だからか、なぁ・・・」
ハイネは静かに息を引き取った、
「わかった、伝えておくよ」
僕はハイネの魂に語りかけるように呟く。
「なんで僕は、敵の願いを聞くなんて約束したんだろうな」
僕はハイネの死体を埋葬して、たまたま近くにあった花で飾られた墓地に埋めた。
そして、僕は鳥の宿へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます