第11話 ターブヒヒvsターナー②

ターナーの見解はこうであった。ターブヒヒの体重魔法は魔術のコントロールをしている際には効力が途絶える。もっと言うとと体重魔法と魔術を同時に繰り出すことができないのではないかと。


ターナーは気づいていた。ターブヒヒが初撃と二撃目のエア魔法剣をガードしている際にさりげなく魔力の絨毯をターナーの足元に生成していたことに。


つまりターブヒヒがターナーを重いままの状態で浮かせられたのは、ターナーの服や靴を軽くしたのではなくターナーが乗っている魔力の絨毯を軽くしたためであると。


そしてもう一つ気がかりは絨毯を仕掛けるタイミングであった。


ターブヒヒは体重魔法を使う前に魔術で絨毯を用意している。そこの順序にはターブヒヒの何らかの都合があるのではないかと。例えば、魔術をコントロールしている間は体重魔法の効力がなくなるのではないかと。


だからこそシンプルな攻撃ではあるものの防がれることを承知でエア魔法剣・参の型を放ったのである。


ターナーの目論見は大的中だった。ターナーの技をターブヒヒが魔力で防ぐその間に体重魔法から一時的に解放されたターナーはターブヒヒの背後へ回り込むことに成功した。


「そ、そうか、さすがターナーくん。だ、だけど体重魔法はただ魔術で物を持ち上げることとは違うから魔術で防げないよ!じ、弱点がわかったからといって攻略できるのかなぁ?」


依然としてターナーの身体は重りを支えたままであった。


「し、しかも肝心のボク自体は魔術を使っていようと体重を1tまでなら増やしておけるんだ!ターナーくんに、か、勝ち目はないよ!」


「エア魔法剣・ゲリラ豪雨」


ターナーは重い身体を強引に押し切り気合の技を放った。ターブヒヒに数え切れないほどの斬撃が降りかかる。それも上からだけではない。斜めからの斬撃。横殴りの斬撃。


「ターブヒヒくん、君は確かにすごいけど防ぎきれないほどの攻撃を浴び続けたらどう?」


「ボ、ボクは魔術も得意だからね、身体全体を覆うガードを張れば、も、問題ないさ」


「けどその間、物体への体重魔法は使えないね!」


「ヒ、ヒヒヒ!」


ターナーの読み通り、ターブヒヒは身体全体を覆うガードを張ってみせた。そしてターナーの読み通りターブヒヒのつくったガードは1mmも狂わないほど調律のとれた球体だった。


「ターブヒヒくん、綺麗なガードだね!」


「そ、そりゃボクの渾身の作品だからね!魔力が一箇所に固まらないようにってあれ!?」


ターブヒヒの身体が球体の中で横転する。


ターナーはターブヒヒの行動からターブヒヒの性格とガードの球体を推測していた。その行動とは、授業中に円盤の出来を褒めてくれたこと。またキャホリン戦で魔力の薄い層を指摘したこと。さらに遡れば学校の重い扉の開け方を見破ったこと。これらの行動はターブヒヒがかなり魔力の使い方に対して神経質であることを示す。そして使う魔術を見ていても無駄のなさを追求している点が伺える。つまりターブヒヒが自身を覆うガードを作るとすれば、角ばった形のガードだと魔力が一箇所に固まってしまうため球体のスタイルを採用するのではないかと。


「綺麗な球体を作ってくれると思ったよ!おかげで転がしやすいや!」


「ブ、ブヒぃぃー!!」


身体の重りも取っ払われたターナーはフンコロガシの要領でターブヒヒと球体を転がしていく。そしてその間も斬撃の豪雨がターブヒヒを襲う。


「め、目が回るぅ!」


ターブヒヒはついに丸枠の外まで転がり出る。


「ターブヒヒくんがもっと細身の体重魔法使いだったら転がりにくかったかもね!」


「勝者!ターナー!」


モローカの声が響くと同時に賞賛の拍手が鳴り止まなかった。そしてあのマエジャスがターブヒヒに声をかける。


「やるじゃねェかブタ!」


きっとマエジャスなりの最大限の敬意であったに違いないがそれを理解できる者は少なかった。

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魔術・妖術・処世術!? 田名崎剣之助 @kennosuke-tanazaki

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