第8話 ターブヒヒvsキャホリン

1回戦第1試合。


ターブヒヒ vs キャホリン


もちろん審判はモローカが務める。いよいよ高等学校の実戦魔法っぽくなってきたという感じで見ている生徒たちも高揚感と緊張感が混ざり合う。


ターブヒヒの対戦相手キャホリンは女の子。それもパッチリした目のキレイ系の女の子である。ターナーはターブヒヒが果たして〈ちゃんとできるのか〉を心配するばかりであった。


「模擬バトル。はじめっ!」


モローカの掛け声でバトルが始まった。


まずはキャホリンが仕掛ける。先ほどの防衛魔法の授業で作った円盤をターブヒヒに押し付けていく。


「くらえ!ほら!」


「いてて、す、すごいなぁ、中々しっかりした魔力を持ってるんだね、」


「言ってな!デブ!このまま押し出してやるよ!」


ターナーは2組の女子は口の悪いのが多いと切なくなった。隣で見ているクリソンも口がパカんと開いていた。


「だ、だけどこの辺だけ魔力の層が薄いね、」


ターブヒヒが円盤の一部分にチョコンと魔力を当てると円盤が弾けてなくなった。


「え!?なんで!」


「うーん、どうやって外に出てもらおうかなぁ、相手は女の子だし、」


「女だからってナメてんじゃねぇよ!」


今度はキャホリンの魔力がターブヒヒの足を掴む。


「持ち上げて枠の外に投げてやる。」


キャホリンは意外にも強引な技を終始繰り広げている。ターブヒヒは頭を悩ませた様子で呟く。


「残念だけど、それは無理だと思うなぁ、」


「こう見えても私はパワー系…ってあれ?」


キャホリンがどんなに持ち上げようとしてもターブヒヒは大地に仁王立ちしたままビクともしない。


「なんで!?300kgまでならいつも持ち上がるのに!」


「そっかぁ、す、すごいなぁ、だけど今のボクの体重は1t(トン)あるからね。」


《体重魔法 ターブヒヒ》


「あれは、まさか?」


ターナーは思った。信じたくはないが、認めざるを得ない。紛れもなくそれは自身がまだ発現していない〈オリジナル能力〉であった。


「もうあんなにオリジナルをコントロールしてるのか!すごいなぁ。」


クリソンが感心していた。当然、ここにいる生徒は全員15歳を迎えているので発現はなんら不思議ではない。だが、それをバトルの中で取り入れるのは難易度が天地ほど変わってくる。


ターブヒヒが心なしかカッコよく見えた瞬間であった。


「今度はボ、ボクから行くよ。」


するとキャホリンの踵(かかと)が地面からフワっと離れた。


「なにこれ!?なにしたんだよ!」


「き、君の靴を空気よりもずっと軽くしただけだよ!これでもう地面への踏ん張りが効かなくなる。」


ターブヒヒの体重魔法は、自分以外の物体にも作用できるようだった。


「ボ、ボクから手は出せないから、ほら全力で技を打ってきなよ!」


「ちっ!お望み通りくれてやる。私のフルパワーの魔法玉だ!くらえ!」


キャホリンが大きな魔力の塊をターブヒヒに向かって放つ。その時、キャホリンは場外へと飛ばされる。


「きゃっ!」


ターブヒヒは自身へ放たれた魔法玉を片手で止め、飛ばされたキャホリンが地面に身体を打ち付けないよう魔力で着地をサポートした。


「足の踏ん張りが、き、効かないとそのパワーは制御できないみたいだね。」


「勝者・ターブヒヒ君!」


モローカが判定をした。見事な第1試合の内容に思わずパラパラと拍手を送る生徒もいた。


「ターナーくん、つ、次は試合だよね?がんばってね。」


ターブヒヒに声をかけられたターナー。〈負けられない〉という気持ちは次の対戦相手にではなく、良い試合をみせたターブヒヒに対してのものである。


いよいよ模擬バトルはターナーの対戦。第2試合を迎える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る