第7話 初授業

闘技場に移動し、いよいよ実践防衛魔法の授業が始まる。担当はモローカ。〈こいつに教えれるのか?〉とターナーは正直に思ってしまう。だが仮にも〈何かあったら俺が守ります〉とまで生徒たちに啖呵切っていた男で間違いはないのでそれなりに期待はしていた。


「魔法の基礎こそ、この防衛魔法だと俺は思っています。まずは身を守る力を全力で手に入れるように。」


モローカは説明を続ける。


「中学までで魔力については習ったと思うけど、その魔力の強さ・大きさ・硬さ・形をコントロールすることで様々な魔法を可能にしてます。まず始めにみんな自分の魔力を円盤形にする練習をしましょう。」


生徒たちは思い思いに円盤をつくる。ただし魔力は無色透明である。普通にしていると見ることができないがモローカはマジマジと見回してから褒める。


「おお!みんなイイ感じ!個性がでてますね!」


目の周りに薄くした魔力を形成しそれを通して見ると魔力が実体として見えるようになる。1つの魔力体をつくることで精一杯の生徒たちにとってはやや高度である。だがターナーは円盤形の魔力体を維持しつつ他の生徒たちの円盤を観察する。複数の魔力体を同時にコントロールする技術。この程度はマローノとの特訓で修めていた。


「おお!マエジャスさんのなんか力強いね!」


「そうスか?あざーす。」


ターナーは形は見えるがなかなか強度までは見抜けない。ひとまずさすが教師といったところであった。


その後も順調に授業は進み記念すべき1回目の授業は幕を閉じる。


「以上で授業を終わります。15分休憩挟んだら模擬バトルに入るのでまたここに集合するように。」


モローカが話し終わると張り詰めていた雰囲気が少し緩み休憩をする。


「クワバル!トイレ行こうぜ!」


わざわざ大きな声でゲノサンが仲良くなりかけていたクワバルに呼びかける。ゲノサンはターナーが気にくわないと感じているやつである。何故かモローカの彼女についてニヤニヤしながら聞いていた腹の立つやつである。ターナーは模擬バトルでは絶対にメタメタにすると誓った。


「ターナーくんの円盤すごかったね。ヒヒ!」


ターブヒヒが話しかける。ターナーは〈またお前か〉などと思う前に驚いた。


「ターブヒヒくんも見てたの?」


「い、一応ね!いやぁでもターナーくんのキレイな円盤見てたら全く叶わないなぁって、」


ターナーはなかなか面白いこの事態にターブヒヒに対して不思議な期待を抱くようになるのであった。


「さぁでは模擬バトル始めます。ルールは簡単。相手を丸枠の線の外に追い出したら勝ち!直接触れたり肉体的なダメージを与えたら反則負けとします。」


模擬バトルはあくまで模擬であるうえ、男女も関係なく行われるため反則負けの縛りがガチガチである。ルールの中で勝つというのがキーになってくる。


「このトーナメント表確認してくださーい。」


モローカが魔法でトーナメント表を発表した。クラスの人数がちょうど16人であるため、4回勝つと優勝である。


ターナーの初戦は第2試合で相手はイズミルコという眼鏡の男だった。全くもって負ける気がしない。だがここで過信しないことの大切さこそマローノの教えである。ターナーは体内の燃えるような闘志を抑えつつしっかりと観戦しようと決めた。まもなく第1試合が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る