第4話 2組担任モローカ
入学式が無事に終了し、クラスごとに異なる教室に待機をさせられる。きっとこのまま待っていれば担任となる教師が入室してくる手筈であろう。
ターナーとターブヒヒは1年2組。他のクラスからはすでに仲良くなった友達グループがたくさんあったのだろうか、楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてくる。ところがこのクラスは不気味なくらい誰も何も話さない状況が続いていた。
ガラガラガラ
ゆっくりとドアを開けて20歳くらいの若い男の人が入室してきた。
「みなさん、入学式お疲れ様です。俺がこのクラスの担任の…」
黒板に慣れた手つきの魔法で文字を書く。
「シメジロウ・モローカといいます。担当教科は防衛魔法学と実践防衛魔法です。えー、よろしくお願いします。」
【シメジロウ・モローカ 23歳・男・1年2組担任】
モローカは自己紹介を行う。故郷が国の外れの魔獣の住まうオイハギ山の麓であること。教師として1年目であること。趣味がギター演奏であること。実家の母がお節介なこと。
全く温まっていない2組の温度感でよくもまぁ話せるなと感心するほどであったが、話が面白いタイプの教師には属さないので、教室の雰囲気は冷たさを帯びたままである。
「みなさんの自己紹介も一人一人してもらいたいところですが、時間もないので今日は最初に話さなくちゃいけない話をします。」
モローカがそう発言した時、おそらくほとんどの生徒が〈お前の自己紹介が長いからだろ〉と心の声でツッこんでいたことだろう。
「新魔法団体についてです。」
モローカの出したこの単語に教室の温度がさらに冷たくなった。昨今の魔法界を騒がせている過激派革命家の集まる団体で、数々の事件を引き起こしていることは15歳の生徒たちも周知のことである。ただ、その団体の話をするのは暗黙のタブーであったためよりによって学校教師のこの発言に驚いた様子というのが多くの生徒の心境であろう。ターナーはこの手の話題が大好物であり、表では〈神妙な面持ち〉みたいな顔をしながら内心、興味津々であった。
「今勢いをつけている闇の勢力の狙いは若くて未熟で優秀な魔法使いです。すなわち今の皆さんくらいの年齢を境にリスクが高くなってきます。学校として全力で皆さんを守っていきますが、何があるかは予想できないので一刻も早く自分の身は自分で守れるようにしてください。」
さきほどの自己紹介の時とは別人のように語った。
「まぁでも安心してください。俺の担当は防衛魔法全般なので、何かあったら俺が守ります。」
モローカは急に声色を変えて明るく話した。そこへある生徒が唐突に質問をした。
「先生は彼女とかいないんですか?」
「え?えー、君は、えーと、ベジャージンくん、んーと一応います、、」
ターナーはこの手のどうでもいい質問を変なタイミングでするやつが大嫌いだ。先生から回答を引き出したベジャージンはニヤニヤと笑っている。
【ゲノサン・ベジャージン 16歳・男】
ゲノサンは偉そうにするやつだった。ちょっとしたセリフ一つですら上から言って聞こえてしまうそれはある意味でリーダー気質であろう。
ターナーにとって気にくわないこともあったがひとまずこの日のプログラムはすべて終わり、一同は解散をした。ターナーは未だにろくな友達もできていなかったが、初日から焦ってもいいことがないと考えていたので黙ってペガサスに跨がる。
そして毎日秘密に行なっている実践魔法の特訓の師匠の元へと急ぐのであった。
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