第3話 学校長パトランティス

写真を撮り終えるとすぐに自分の魔力属性を知ることができる。当然生徒たちはすぐにその場で現像された写真に表記してある属性を確認する。ターナーの属性は水属性、ターブヒヒの属性は木属性であることが判明した。


「水属性かー、海が良かったなぁー」


「ボクは木で満足かな。」


属性による違いは主に妖術において現れる。水属性であれば水属性魔法を得意とし、木属性であれば木属性魔法を得意とする。また地属性と海属性は極めて稀な属性であり、1000人に1人ほどの割合で体現する。


ターナーの耳に教師たちがやけに賑やかに話す声が聞こえた。


「今年はすごいなぁ!」


「3人もいるのか!地・海属性が!」


新入生総勢112名中、3名がレア属性だったという。レア属性はそれだけで魔法関係の職に就けるケースが多く、国の魔法精鋭隊での出世も見込める。まさしく今年は豊作であった。


ターナーは自分の属性が極めて平凡な水属性であることを少しだけ残念に思ったが、実践魔法のセンスでは誰にも負けない自負があったため〈ま、いっか〉とすぐに開き直っていた。


自身の属性に一喜一憂する生徒たちはゆっくりする間も無く入学式の会場〈大広間〉へと向かう。


大広間に入るや否や盛大な拍手とともに屋内にも関わらず花火が打ち上がる。一面真っ暗な夜空に流れ星が煌めいたかと思えば、瞬時に晴れた空に虹がかかる。在校生たちの魔法によるものだった。


魔法義務教育で受けてきた魔法学からは想像もつかない領域の魔法の数々に新入生たちは虜になっていた。


「ウェルカーム スチューデーンツ!!!」


白髭眼鏡のスキンヘッド爺さんが地鳴りほどの大きな声で出迎えをする。大きな魔法ローブでも羽織っていそうだが、意外にもキチッとしたスーツに紫のネクタイを合わせている。言われなくてもわかる。学校長なのだと。


「我輩は我が校学校長のパトランティスである。諸君。入学おめでとう!!!」


【モロヘイレオ・パトランティス 72歳・男・学校長】


学校長の声が大きい。クリ高の学校長はかなり偉大な魔法使いであるとの評判であったがまるでその偉大さは声量からの勘違いなのではと思ってしまうほどの大きさであった。


「高等学校では諸君がこれまで学んできた魔法学をベースにより実践的な魔法を取り入れて学んでいただく。昨今の不穏な社会の動きに備えてキッチリと学ぶように。以上!!!」


話の短い学校長であるため面倒嫌いのターナーはつくづくありがたく感じていた。そして式典はいよいよお待ちかねのクラス分けへと移る。


するとパトランティス校長が両手を大きく振りかぶる。


「よぉ〜お!!!パァン!!!」


大きな掛け声とともに大きく手を叩いた。すると生徒たちは先ほどとは別の並び順で綺麗に整列されていた。


「はい。終わり〜」


ニヤケながら呟きパトランティス校長がその場から消え去った。


なかなか個性溢れる校長であったが、この規模の人数に対してほんの一瞬でかけた魔法のすごさなど実践魔法をろくに学んでいない生徒たちですら簡単に判断がつく。校長の次元が違いすぎる。


ともあれ、さすが魔法学校と言わんばかりの衝撃が次から次へと訪れるさまにターナーの心は踊りっぱなしである。


因みに校長の魔法によって属性が概ね均等に16人ずつの7クラスに分けられたが、ターナーはすぐ後ろにいるターブヒヒの存在に気付き一周回って運命的な縁を感じていたのであった。

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