その4 車にて

短い話だ。つい先日だった。

友人の車に乗り、ホームセンターに寄ったときだった。洗剤を買いたいという友人を車の中で待っているとき、コンコンと自分の座っている助手席の窓を叩かれた。


外には作業着のような格好、痩せていて眉毛の間に産毛をたっぷり生やした男が立っていた。窓越しに『なんですか?』と僕が言うと、

眉毛に(窓を開けろ)とジェスチャーを返された。


窓を少しだけ開けて、なんですか?とまた僕が言うと、眉毛が窓の隙間からハリセンのように折られた紙を渡された。


なんだろうと思って、ハリセンを開く。


すると紙いっぱいに、殴り書きで、びっしり、


信じて!信じて!信じて!信じて!信じて!

信じて!信じて!信じて!信じて!信じて!

信じて!信じて!信じて!信じて!信じて!


と書かれていた。


驚いて、ハリセンから窓へと目を戻すと、走って逃げる男の後ろ姿が見えた。


なぜかめちゃめちゃ怖かったし、あの男のことを、絶対、金輪際、いや初めから1ミリも、信じられないと思った。

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僕に起きた奇妙な体験 帆士 航 @vaticahan

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