吸血鬼の物語である。すでに血は薄く、彼女らは世を儚んでいる。滅びを望むもの、かなえるもの。青薔薇、白薔薇。そこに「夜の女王」たる歌姫の独唱が加わる。ゴシックに徹底して抑えられた文章のなか、もう一つの物語が進行する。吸血鬼は滅んでなどいなかった。筆者は怪奇眷属の血脈であろう、間違いなく。
どこまでもゴシック。どこまでも絢爛。それでいて全体に通底するこの静けさと哀しさはなんだろう――。