第21話 五百羅漢<ホラー系>
「紫陽花が綺麗だって。行こうよ」
明希に誘われて駅二つ離れた街の寺に行った。
確かに、紫陽花が美しく咲いていた。
しかし、陶子が興味を惹かれたのは境内のあちこちに鎮座する五百羅漢の像。今まで見てきた五百羅漢像とは違って、趣向が新しい。ノートパソコンを開く羅漢様。ウオークマンを聞く羅漢様。将棋を指す羅漢様。・・・・他にも今風の遊びに興じる羅漢様たちがいた。
あまりに面白いので、写メを撮っていると声がかかった。
「これこれ、私も写真を写しています。まっすぐ立って、こっちを見て」
踊る羅漢様のそばでカメラを構えた羅漢様が笑っている。
「え? え? 私?」
「そうじゃ。ほら笑って。はい、チーズ!」
冗談じゃない。
「私、写真嫌いなの」
「しかし、撮っておるじゃないか?」
「撮るのは好き。撮られるのは嫌い」
「わがままじゃのう。しかし、わしのカメラに収まると悟りが得られる」
「悟りを得られると何かいいことあるの?」
「そりゃああるさ。簡単にいうと悩みがなくなる」
「え〜っ、本当?」
陶子は今、真斗と別れ話の真っ最中。
陶子は別れたくないのに、真斗に新しい女ができたのだ。
悩みがなくなるというと、真斗が戻ってくるのかな?
「撮って撮って。撮ってください」
勢い込んで言った。
『ハイポーズ。カシャッ』
悟りを得たその日から、陶子は何事にも動じなくなった。
真斗は去って行ったが、淡々と受け入れた。
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