第14話 鶴の恩返し・番外編<昔話系>
「鶴の恩返し」という昔話があります。有名なお話です。
「鶴の恩返し」は、助けた鶴が若い女性に姿を変えて現れ、美しい布を織って貧しいおじいさんとおばあさんを助ける。布を織るところをみられると去っていくというお話です。
その昔話を聞くたびに、羨ましく思っていたおじいさんとおばあさんがいました。
「いいのう、鶴の恩返し。あの布はかなり高く売れたそうじゃ」
「羨ましいですねえ。うちにも鶴が来てくれるといいのにねえ」
「本当に。なんとか鶴を見つけて」
「助けてやれば家にも・・・」
毎晩、夢のような話をしてため息をついていました。
ある晩のこと、おばあさんが言いました。
「家の中で話ばかりしていても、鶴は来ませんねえ。いっそのこと探しに行ったらどうですか?」
「おお、そうじゃな。ついでに罠を仕掛けてみるか」
話はまとまって、おじいさんは自分の畑に罠を仕掛けました。
一番初めにかかったのは黒いカラス。
「おい、ばあさん。黒い鳥がかかったぞ」
「おじいさん、カラスの恩返ししたなんて聞いたことありませんよ。真っ黒のカラスなんて縁起でもない」
「そうか。鶴は白い鳥だったよなあ」
カラスはポイと捨てられ、山の方に飛んで行きました。
翌日、今度こそ首が長くて白い鳥が罠にかかってもがいていました。おじいさんは早速罠から助けて逃がしてやりました。
「もう罠なんかにかかるんじゃないよ。わしが助けてやったのを忘れるんじゃないよ」
自分で仕掛けた罠なんですけどね。
その日から、おばあさんと二人で鶴が来ないかと、首を長くして待っていました。二、三日たったある夜、表の戸を叩く者がいます。おばあさんがとんで行って開けると若い男がいました。
「私は、先日おじいさんに助けられたもので、ダイと言います。ぜひお礼がしたくてまいりました。今晩一晩、泊めてくれませんか?」
「いいとも。いいとも。一晩と言わずず~っといておくれ」
その日からダイはおじいさんの家で暮らすようになりました。働きもしないで、食事には注文をつけ、毎日大名暮らしです。最初は、恩返しをしてくれるのだからと目をつぶっていたおじいさんとおばあさんも、とうとうしびれが切れました。
「いつまでのんびりしているんだい。そろそろ恩返ししてくれてもいいだろう」
「そうだった。悪い悪い。今晩は向こうの部屋で休ませてもらうよ。ガタガタ音がするけど、何があっても絶対覗かないように」
そういうと、隣の部屋にこもってしまいました。
おじいさんもおばあさんも、ホクホクです。いよいよ、機織りが始まると思うとなかなか寝付けないほどでした。隣の部屋はその夜は遅くまでガタガタ、ゴトゴトと音がしていました。
翌日、期待満々のおじいさんとおばあさんが起きると、隣の部屋は物音ひとつしません。静まり返っています。
「機織りで疲れたのかな。開けるよ。もういいだろう」
おじいさんが戸を開けると、その部屋には誰もいませんでした。それどころか、部屋の中にあった家財道具もすっからかん。
外でカラスの鳴き声が聞こえました。
「アホー、アホー」
驚いて外に出ると白い鳥が空高く去っていくところでした。
ちょうど隣のおじいさんが出てきて言いました。
「おや、珍しい。サギが飛んでいく。ありゃあダイサギだ」
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