AIによるオンライン融資となるともはや「経験と勘」は必要ないのだろうか・・・
AIの時代が到来すると何が変わるのだろう・・・
AIの時代には銀行の窓口事務は90%以上の確率でなくなるといわれているが融資担当も必要なくなるのだろうか?
最近、AIによる個人の信用格付けがなされて、それに合わせて融資が行われるフィンテックが中国ではすでに個人融資分野では流行っており、日本でもはじまっている。今後は企業向け融資に対しても拡大する傾向らしい。
私が、銀行員時代も同じような、スコアリング型融資があった。特に、都市銀行が導入して中小企業に対する融資を積極的に展開していたような時代であった。
簡単に説明すると、スコアリング融資はお客さんの作った決算書をシステムに入力して融資を人が決めるもの。オンライン融資は、企業のお金の(預金の)入出金ベースからAIが判断して融資を決めるもの。といったところであろうか・・・
福岡支店時代を思い出す・・・
スコアリング貸出がわが東西振興銀行でも開発され、小口融資に対応するように上限は30百万円まで、期間は3年で、金利は信用格付けに合わせた定形型の商品であった。
具体的には、決算書をスコアリング融資のシステムに入力する。
すると、まず財務格付が自動で出てくる。これで融資が可能か不可能かが、担当者の判断がなくともシステムで判断される。債務超過等の要注意先は不可であった。
また、スコアリング融資は当然無担保で保証人は社長一人である。
制度や商品はかなり本部としては、自信があるみたいであった。無担保で30百万円だと、融資も相当伸びるだろうと。なのでノルマもひとり一件であったと思う。
ところが、今思うとやり方が駄目であった理由がよくわかる。
本部がノルマに設定すると、必ず対象リストなるものが現場に配られる。それは、現状で決算書をもらってデータとしている取引先で、可能性がある先をあらかじめリストアップして、それを現場が一件一件当たり、成約に結び付けるという営業のスタイルが基本であったからだ。
既存の取引先にセールスしても、意味がない。なぜなら、一般的な融資で問題がないのに一般融資からスコアリング融資に振り替わるだけなのだ。
やはり、新規の先で対応しなければ!それも、スタートアップや信用力の低いアーリーステージ(つまりは創業まもない企業のこと)の企業が対象になるだろうと現場ではわかっているのに。本部は、わかっていなかったのだ!
いわゆる銀行もものづくりみたいに今までよりいい商品を作れば売れるのだろうという気持ちしかない。マーケティングして、ニーズに合った商品づくりや、販売のターゲットを決めなければいけないのに・・・
こんな銀行がコンサルなどと言っているが、できるはずがないだろう。
話を戻すと、
部下の鈴木が、リストを見てターゲット先A社について私に言ってきた
「課長、私の先のA社をターゲットにしてセールスしてきます。この商品は、金利も高いしぎりぎり正常先であるここが一番いいんじゃないかと思います。」
私は、
「わかった。但し、A社は気をつけろ。ソフトの開発といいつつ実はアダルトゲームのソフト開発してるよな。IT系は波が激しいし、ゲームはさらに激しい。無理はしないように。」
鈴木はその後、何度もセールスしていたが、どうしても社長に会えず、電話はつながるのにいつもいないとこぼしていた。
そうなると、いつものメインのお客さんのS機械しかなく、社長にお願いに行くと、社長が、
「また、お願いか。いくらなんだ。」
鈴木が、
「社長ほんとにすみません。30百万円で3年金利は2.5%です。どうしても借りてください。」
社長は、
「この前もそういわれたな。まあ、今回はいいよ。」
このようなやり取りは、いつものことであった。
前述でもしたが、スコアリング融資の商品についてはよかった。(10年以上前の商品がだが)但し、だれにこの商品を売るか?のマーケティングが圧倒的に足りなかったのだ。これは、何十年も前から変わっていない。既存の取引先に提案しても大部分は意味がない。
新しい商品は、実は1.新規先、2.スタートアップ先、3.外国人の企業等、いろんなマーケティングして、どんなニーズに合わせて提案していくかを考えて、新たな基盤先を作らなければいけなかったのだ。
それを、2年間しかいない支店長の指示、つまりは本店も含めて短期的な実績ばかりを求めていった結果、既存の取引先から利益や手数料を搾取していったのだ。
後日談で、A社はその後倒産することとなった。わかったことは、担当の鈴木が電話でセールスしていた時は、事務代行で対応しており、もうすでに本社は夜逃げしていたのだ・・・。スコアリング通りに融資していたら、われわれは、不良債権をつかまされることになったが、私の勘の通りであったし、結果オーライともなった。
私は、鈴木に
「いっただろ、あそこは危ないって。だけどお前は、セールスは電話だけでして、現地に言ってなかったんだな。本社に行けばもっと早くわかって、回収が図れたのに。やはり、現地に行かなきゃだめだ。おれは、今まで、上司から教わったのは
1.財務分析は必ず自分で計算して確認する。
2.現地に行って本社を見てくる。
3.おかしいなと思ったらとことん納得するまで調べる。
だ。経験と勘はこういうところから養われる。われわれは銀行員なんだ。」
と言って、
「ただ、こんな意味のないことは、もうやめて、ちゃんとした融資をしたいな」
とつぶやいたのを覚えている。
後日談となるが、今やスコアリング融資もAIを活用して行うらしい。あおぞら銀行は中国のユニコーン企業と提携したとの記事も出ていた。現在は情報が最も重要なファクターで情報銀行までできるというが、このAIスコアリング融資の情報が中国等に漏れなければよいのだが・・・
また、時代は事業性評価となる有志が主体となっている。どういうことかというと、決算書を判断する場合、決算書とはたとえば4月~3月の事業とすると、3月締めた後5月までに納税するために決算書と納税申告書を作成する必要がある。
決算書とはいわゆる税務申告するための書類でもあるものだ。
ただ、この書類はすでに過去のある時期を表しているものであり、現在の姿ではない。事業性評価は現在の事業を評価するもので、強みや弱み、業界や地域等分析するもので、これについては今後AIも評価をする助けとなるだろうし、既になっている部分もある。
但し、AIに頼ると上記のようなやはり数値だけにとらわれる、またそれがこれまでのスコアリングシステムよりも高度になっているとしても、実際に合って確かめてみるということ、つまりは経験と勘も合わせて判断しなければ『夜逃げ』を防げなかったかもしれない。
難しい時代と言わず、もう一度経験と勘が大事だと信じたい!
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