第10話 恋愛相談
ある日の放課後。
俺とゆきがいつも通り、生徒会室に行くと、南さんがいた。
「あんた達、遅いわよ」
「!?南さんが、水曜日を七時間授業なんかにしたから、こんなに遅いんですよ。 俺らは悪くないぞ」
授業終わって速攻来たのになんてことを言うんだこの人は……
「まっ、それもそうね」
南さんは、生徒会室の引き出しを漁ったりしながら適当に返事をした。
「学園長は、なんのよう出来たんですか?」
ゆきが質問した。
「あぁ、君たちに新しいことをやってもらおうと思ったのよ」
「新しいこと?」
どうせまたろくでもないことなんだろうなぁ……
やだなぁ……
「恋愛相談を受けてもらおうと思ってね。既に学園のホームページでは、生徒会の二人に解決してほしい恋愛の悩みという特設ページを作ってあるわ。 しっかり応募もあって明日の放課後さっそく一人目の相談者がくるから。んじゃよろしく」
南さんはそう言い残して、生徒会室をさった。
「おいゆき、大変なことになったんじゃないか……南さんが嵐のように過ぎ去っていったからツッコむ余裕すらなかったが、大変難しいことを言われた気がする」
「先輩の言う通りです。 恋愛相談なんて私できませんよ! しかもいきなり明日なんて……私明日風邪ひきますね」
「おいこら逃げるな」
それにしても、恋愛相談ねぇ……一体どんなやつがくるんだろうか。
***
翌日 放課後
「いよいよこの日が来てしまったな」
「そうですね。 私たちに出来るんでしょうか」
俺とゆきは生徒会室で、多少の不安を抱きながら待っていた。 現在の時刻は15時50分。
相談者が来るのは16時ジャストだ。
コンコン
扉をノックする音が聞こえた。 どうやら相談者が来たようである。
「どうぞ、入ってください」
どんな、人が来るのか俺は少しワクワクしていただが、実際に来た人は俺の目を疑うような人だったのである。
「横溝先生じゃないですか。 恋愛相談に来られたんですか?」
ゆきが、生徒会モードの声色で聞いた。
そう、相談にやってきたのは、
「いやぁ、職員室でこの話を聞いてね。 だったらと思って応募してみたんだが」
「横溝先生は、僕達に恋愛相談をしたいんですか?」
「まぁ、そういうことになるな」
高校生に対しての恋愛相談すらできないのに、いきなり教師とかもっと無理に決まってんだろぉぉおおおおお!!!
と思ったが、口には出せなかった。
「それで先生の、恋愛相談とはなんですか?」
ゆきが聞いた。 ここで気づいたのだが、ゆきの生徒会モードの低い声のすこし強めの口調は、教師に対してだと声は低くしているが敬語になる。なのでキャラを保つのが大変っぽい。
俺も崩さないようにしなければな。 ここで普段の口調を出したら後で南さんに何されるかわからん。
「俺は一年一組の担任なんだが、隣のクラスの担任の
しっかり真面目な恋愛相談がきてしまった。
横溝先生には、プライドというものは存在しないのか……学生に、恋愛相談とか恥ずかしいだろ!?と、思ったが口にすることは出来なかった。
「いつから好きなんです?」
ゆきは、どことなく楽しそうに質問をした。
ゆきのやつ、教師の恋愛に出くわすのは珍しいからって、うかれてやがるな。若干キャラが崩れてるぞ……
「俺が、小学生の時からになるな」
「!? 長いですね。 意外と」
「俺と源先生は、俗に言う幼馴染というやつだな。というか腐れ縁?」
「なるほど。そういう事でしたか。 それで僕達に相談に来たということは、何かやってほしいことがあるんですよね?」
と俺が言うとゆきが、
「でも、なんでこんなところに来たんですか?そんなに前から知り合いならばさっさと付き合おうといえばいいのでは?」
と言った。
まぁそれが一番の理想なんだろうけどな。
「お前はなかなかきついことを言うなぁ。 俺もそうしたいのはやまやまなんだが、最近話しかけてもそっけない対応をされちまってな。 それに、生徒の話では他に好きな人がいるとかいないとか」
横溝先生は、悲しそうな目をして俯きながらそういった。
なるほど、そりゃ大変だな。
「それで、先生はどうしたいんですか?」
「俺は、できれば告白したい。 でも……でも、あいつに、好きな人がいるってんなら、無理に手は出したくない。 煩わせたくないんだよ」
「先生は結構我儘なんだな」
ゆきほそっと呟いた。
その言葉が聞こえていたのか横溝先生は
「そうかもしれんなぁ」
と悲しい目をしながら言った。
さて、どうしたもんかな……
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