第9話 ゲームをする日曜日 後編

  1,いいわよ。付き合ってあげる。


  2,全速力で逃げる


  3,殴って蹴ってサンドバック化


「どうしましょうか先輩」


「これは……とりあえずサンドバッグだけは選んじゃダメだぞ」

 

 サンドバッグは、明らかなバッドエンドルートだろう。

 だがしかし、ぎゃくにどれを選べばTrue Endになるのか、皆目見当がつかない。


「わかりました、とりあえず全力で逃げましょう!」


 ゆきは、そう言って全力で逃げるを選択した。


「松岡雪乃:な、何よこいつ!?」


 雪乃(ゲームキャラ)は、そう言って全速力で逃げ出した。

 それと同時に、遠藤カトリーヌ健三郎も、走った。

 速度は、雪乃より遅いらしくすぐに捕まるということは無かった。

 雪乃(ゲームキャラ)は走って走って走りまくった。

 すると、前方にふられてとぼとぼと下校している涼介(ゲームキャラ)の姿が見えた。


「松岡雪乃:ちょっとそこのゴミムシいぃぃぃぃ」


「おい、ゆき…… 流石にゴミムシは酷いんじゃないか?」


「言ってるのは私じゃないですよォ」


「あはは、わかってるよ」


 このやり取り、楽しいな。 俺はふと思いながらゲーム画面に目をやった。


「内山涼介:雪乃じゃなねーか、どうしたんだよ。鬼の形相で走ってきて」


 どうやらこの男、ゴミムシと呼ばれなれているようだ。なぜなら一切ツッコミがない!!!


「松岡雪乃:遠藤カトリーヌ健三郎が、襲ってきてるのよ」


「内山涼介:誰だその聞き覚えのある名字のやつ」


「松岡雪乃: 知らないわよ。 とにかく助けてぇ」


「遠藤カトリーヌ健三郎:ハァハァハァハァ、やっと、ハァハァ追いついたぞ」


「内山涼介:おい何だこの変態みたいなやつは」


「松岡雪乃:変態みたいじゃなくて、変態よ」


「遠藤カトリーヌ健三郎:何を言っているのだ、俺はただ君が好きなだけなのに…… 俺と付き合えぇぇぇぇ」


 いよいよ健三郎が、本物のの変態に変わったな……

 残念だ。

 とここで、男側の俺に選択肢が出てきた。


 1,健三郎の味方をする。


 2,雪乃を助けて愛の逃避行。


「愛の逃避行ってなんだよ……」


「わかりませんけど、逃げるってことでしょうねぇ」


「うーん…… 俺はこの遠藤カトリーヌ健三郎が生理的に無理だから、雪乃(ゲームキャラ)を助けることにしよう」


「やった〜。 先輩が助けてくれた!」


 ゆきは何故か喜び始めた。 なんか可愛いな。 それはいつもの事か。

 という気持ち悪いことを考えつつ、俺は2番を選択した。


「内山涼介:とりあえず、そこの変態! 雪乃は俺がもらっていく」


「遠藤カトリーヌ健三郎:うるせええぇぇ」


 カトリーヌ健三郎は、そう言いながら雪乃(ゲームキャラ)に向かって殴りかかってきた。


「んな馬鹿な!?好きだったんじゃないのかよ……」


「遠藤カトリーヌ健三郎って、最低な男ですね…… ふられだからって手を出すなんて」


 ゆきの言ってるのことはご最もだった。


「松岡雪乃:きゃあっ」


「内山涼介:危ない!!!」


 涼介(ゲームキャラ)は、かっこよく健三郎のパンチを受け止めみぞおちを喰らわせた。


「松岡雪乃:あ、ありがとう」


 雪乃(ゲームキャラ)は泣いていた。 それはもう大号泣だった。

 そしてゲームの場面が変わった。

 どうやら、場面変更で、涼介(ゲームキャラ)の家に来たらしい。


「内山涼介:まったく、なんであんなのに絡まれたんだ?」


「松岡雪乃:し、知らないわよ。 ほんとなんなの……」


 雪乃(ゲームキャラ)は依然として泣いたままだった。


「内山涼介:まぁ無事でよかったよ。 これでも一応大事な友達だからな」


「松岡雪乃:ねぇ、私ね。 実はね、」


 とここで、ゆき側に選択肢が現れた。


 1,あんたのことが好きなの。


 2,あんたのことが死ぬほど嫌いなの友達だと思ったことすらないんだからね。


「おい2番んんんんん。 ゆき、これはもう1番を選ぶしかないぞ」


「そう見たいですね。 流石にここで2番はダメですよ」


 ということで、ゆきは1番を選んだ。


「松岡雪乃:私ね、あんたのことが好きなの。 も、もちろん恋愛的な意味でね」


「内山涼介:!?な、何言ってんだ。雪乃。エイプリルフールならとっくのとうに終わったぞ」


 なんとも、古典的なぼけ方だな。


「松岡雪乃:本当よ! 実はずっと好きだったの。 なのにずっと恥ずかしくて言えなくて……本当に最低な女ね」


 雪乃(ゲームキャラ)は再び泣き出した。

 とここで、男側の俺に選択肢が出現。


 1,泣くな泣くな、俺も雪乃のこと好きだぜ(イケボ)


 2,泣くな泣くな、俺も雪乃のこと好きだぜ(普通の声)


 3,泣くな泣くな、俺も雪乃のこと好きだぜ(ゴミボ)


「ゴミボってなんだよ…… てか全部告白じゃねぇか!!!」


「アハハハハ、もうどれでもいいじゃないですか」


「それもそうだな」


 俺は、1番のイケボバージョンを選択した。

 すると、画面上に【マイクに、セリフを吹き込んでください。 1番を選択したのでイケボでお願いします!】


 俺は一瞬状況が理解出来なかった。


「!?!?これやらなのか……」


「ここまで来たらやっちゃいましょうううう!」


 ゆきは、驚くほどハイテンションだった。

 そんなに俺を、はずかしめたいのか……

 くそおおお、こうなったら吹っ切れてやるぜ。


「泣くな泣くな、俺も雪乃のこと好きだぜ(割とマジでイケボ)」


 セリフを言い終えると同時にピッという音が鳴った。


「先輩の告白音声ゲット〜」


 ゆきは、満面の笑みを見せた。 少し頬が赤い気もするが気のせいだろう。


「あっ、こらっ!!! 録音しやがったな!! 消せぇぇえ」


「嫌ですよ! 精神的に辛くなったらこれを聴いて癒されますから〜」


「俺の声で癒されるわけないだろっ!!!消せぇぇええ」


「そんなことよりゲームに戻りましょう」


 ゆきは、話を思いっきり逸らした。 まぁいい今言ってもどうせ消してくれないし、後でどんな手を使ってでも消してやる。


「松岡雪乃:ほんと、に? じゃあ私と付き合ってくれるの?」


「内山涼介:あぁ、もちろん!!!」


 そして、エンディングに突入した。


 ***


「ふぅ、なんだかんだ最後は綺麗に収まったな」


「そうですね。 なんだかんだ楽しかったです」


 時計を見ると、まだお昼すぎだった。


「よし、昼ごはん作るかぁ」


「作ってくれるんですか??」


「当たりえだろ? 怪我人は黙って座ってなさい」


「ありがとうございます。先輩」


 ゆきは、満面の笑みでお礼を言ってきた。

 こんな日曜日が毎週あればいいのにな、と思いながら俺はキッチンに行くのだった。

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