第3話 噂

翌日


 俺とゆきが学校に行くと、何故か校内のみんなは俺とゆきが付き合ってるのではないかという話題でもちきりだった。


 「何ですかね。 これは?」


 すでに校内なので俺はこの口調でゆきに話しかけた。


 「さぁ、わかりません」


 ゆきのこの口調なれないなぁ……


 「まぁ、人の噂も75日と言いますし。 ほうって起きましょう」


 「そうだな。 では私はこれで失礼します。 また後で」


 こんな口調で、 友達なんてできるのかな?

 俺は途端に心配になった。

 まぁ後で聞いてみるか。


 「ええ、また後で」


 俺は、ゆきとわかれて自分の教室に向かった。

 机に座ると机の中に何かたくさん入っているのが見えた。

 何が入っているのかと思って見てみると、 それは大量のラブレターだった。

 んじゃこの量はあああああああ!!!

 たしかに去年もたくさんくれた人はいるが、 ここまで大量にもらったのは初めてだ。


 「お前が松岡雪乃と付き合ってるんじゃないか?取られたくない!みたいな事をうちの学校の女子たちは思ったみたいだぜ。 だからみんなラブレターを入れたんだろ」


 そう教えてくれたのは同じクラスで、今席が隣の南條虎徹《なんじょうこてつ

》だった。


 「虎徹くん。 それは確かですか?」


 「ああ、 みんなそう言ってたぜ」


 「それは困りました。 僕と雪乃さんは何ともないのに……」


 「まぁ別にいいじゃねぇか。お前は誰とも付き合う気はないだろ?」


 「まぁ、今のところは生徒会の仕事も忙しいですし、告白されても受ける気はありませんね」


 と言ってはいるが、本当は自信が無い上に自分の本性を知らない人間と付き合うのは疲れると思っているからである。


 「そんなことより、数学のここ教えてくれよ」


 「わかりました、ここはですね」


 質問をされた俺は、虎徹にわかりやすいようにはしからはしまで教えてやった。


 ***


 放課後

 生徒会活動の時間になった。

 生徒会室に行くと、またも先にゆきがいた。


 「遅いですよ!!! 先輩」


 「なんか昨日も見たような光景だな」


 ゆきの、生徒会副会長モードじゃない方がやっぱり落ち着くな。


 「この生活のなかで自然体で喋れるの先輩だけなんですから」


 「まぁそうだろうな。 俺もお前とあとは南さんだけど、お前の方が断然話しやすいしな。ところで、お前クラスに馴染めてるか?」


 「まぁ、多少浮いてる感じは否めないですけど、割と人気者ですよ。 この学校は多分生徒会補正が入るんでしょうね」


 「それはあるな。 俺も今日お前との恋の噂がたったせいでラブレターが大量に机の中に入ってたわ」


 「私もです」


「まじかよ」


 俺とゆきは爆笑しながら話していた。

 すると後ろのドアが突然開いた。


 しまった!? 誰かに聞かれたか?


 「ごめん。 わたしよ」


 そこに現れたのは南さんだった。


 「なんだ、南さんか…… ビビったわ」


まぁ、この生徒会室は防音設備が整っているので、よくよく考えるとそんな心配をする必要はなかったな。


 「まぁ、私でよかったわね。私じゃなかったら今頃、大惨事よ。 それにしても2人仲良さそうね」


 南さんはニヤニヤしながら言った。


 「からかうのはやめてくださいよ、学園長先生!」


 「ところでなんのようですか?」


 「明日の新入生歓迎会の事なんだけど。 涼介くんに歌を歌ってもらいたいの」


 !?何故???


 「な、なんで俺が歌なんか歌わなくちゃいけないんですか?」


 「面白そうだからに決まってるでしょ、余計な質問はしないでよ」


 嘘だろぉ…… そんな理由があるか!


 「もう、南さんにはどんなに抵抗しても無駄みたいですね。話を進めましょう。一体なんの曲を歌うんですか?」


 「あなたの好きな歌を選んでくれて構わないわ」


 「先輩って歌上手いんですか?たしかに声は俗に言うイケボに属すると思いますけど」


 何!? 声を褒められたのは初めてだな。

 褒めてくれる、ゆきも可愛いな……


 「まぁ、下手ではないと思うけど特別上手くはないな」


 「謙遜しなくていいわよ。 どうせ上手なんでしょ」


 南さんが嫌みったらしく言った。


 「あなた俺の歌声聞いたことないでしょうがああああ!!!」


 「あっ! ばれちゃった?」


 「バレるわ!? アホですかあなたはっ」


 「おっと、 もうこんな時間。 私はこれで失礼するわ。 歌頑張ってね」


 そう言って南さんは学園長室へとそそくさと帰っていった。

 一体俺はどうすればいいんだ……

 俺は困惑したままゆきの顔を見た。

 自分が困ってる時に見ても可愛いな……


 「歌、頑張ってくださいね! 先輩」


 あまりの可愛さに俺は


 「お、おう。 任せとけ!!!」


 と強気な姿勢を見せてしまった。

 俺はアホか……


 ***


 生徒会の仕事が終わり、俺とゆきは一緒に帰っていた。


 「ゆきはなんで、この学校受けたんだ?」


 俺は何気なく聞いてみた。


 「そ、それは、秘密です。 あと口調をしっかりしとかないと誰かに見られた時まずいですよ」


 ゆきは一瞬恥ずかしそうにした後、口調のことを指摘てきた。


 「それもそうですね。まぁでも2人で帰っている状況を見られたらまた噂になるのでしょうけど」


 「本当にその通りだな。 全く最近の若者は!!!」


 お前も最近の若者だろうが……と思ったので俺は丁寧な言い方で


 「あなたも十分若者ですよ」


 と言った。


 この後も何気ない話を真面目な口調で話していたらあっという間に家に着いた。

 ゆきと話しているときは、生徒会長モードだろうと普通の時だろうとたのしいな

と思う俺であった。

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