第59話「勇者禁止 その3」
「……コピー」
クロネはその能力の恐ろしさを実感し、口の中で
「……勇者パーティを送り込んだのは、ワタシたちの力をコピーするため?」
「もちろん、それもありますよ。この僕がたった1つや2つ程度の理由で仲間を死地に
「……でも、リミット本人は見れないはずなのにどうして?」
「ああ、それは」
リミットは
クロネには見慣れないモノだったが、現代人なら誰もが知っているモノ。
イスズとアリはすぐにそれが何か判り、忌々しそうに呟いた。
「チッ、やはりスマホくらい持っているよな」
リミットはスマホを少し弄ると、画面にはヤマトやクロネの戦いが映し出された。
「……ルーが映っていない」
映像は全てルーの視点で撮られており、撮影者が誰かは容易に推測できた。
「体力や魔力に
リミットはその言葉通り、素早く動き、クロネに肉迫する。
「スイの技は逆に体外に気を出す技だ。だから、手から出せば――」
ゼロ距離にも関わらず、ドンッという衝撃がクロネの体を貫く。
「ガッァ!!」
防具も関係なく、体の芯へと届く攻撃に、苦悶の声と共に鮮血を撒き散らす。
「おっと!」
リミットは血でコートが汚れないよう再び距離を取る。
「実力の差はわかってもらえましたか? そろそろ降参してもらえると嬉しいんですけど……。ムリですね」
クロネの瞳にはまだ強い意志が見てとれ、降参など死んでもしない覚悟があった。
ローブの端で顔の血を拭うと、クロネは呟いた。
「……勇者、考察、その1。コピー能力の同時使用は可能」
クロネはリミットに殴られた間も、一瞬たりともリミットの瞳から目を逸らさなかった。
それは、別の技を使った際にアクセル・アクセスが解除されるかを確認するためであった。
次にクロネは再度氷柱を出現させ、打ち出した。
「ん? それは無駄だとわからなかったんですか?」
リミットも同じ攻撃を仕掛け、今まで通り
クロネが出した氷柱は当たる前に勝手に破砕し、リミットの打ち出した氷柱は障害をなくし、真っ直ぐにクロネを襲う。
クロネは怯え1つ見せず、氷柱を見つめている。
突き刺さる寸前、氷柱の真下の地面が隆起し競り上がる。
本来は壁となるはずのそれは氷柱を下から押し上げ、彼方へと弾き飛ばした。
氷柱は丁度、円形闘技場を出た辺りでまるで幻かのようにすっと消え去った。それを見送ったクロネは再び呟く。
「……勇者、考察、その2。能力範囲は白い光の内側。勇者協力者がいるところまで」
「なるほど、なかなかやりますね。僕のコピーの範囲だけじゃなく、固有魔法の範囲の条件まで特定するなんて」
「……それはすぐにわかった。ルーには触れて、イスズ、ヤマトはスルーしたから」
リミットはなるほどと納得し、自身の迂闊さに肩をすくめた。
「どんどんと能力がバレてますし、そろそろ攻勢にでましょうかね」
リミットは攻撃すべく、銃を構えたが、その標準がクロネを捉えることはなく、徐々に下へと下がっていく。さらには体全体も重くなり始め、そこで初めてクロネの魔法の影響だと理解した。
(これはグラビティ。なぜ、一思いに重くしない? これじゃあ、魔法を打ち消せと言わんばかりだ)
少しずつ重くなっていく状態に、違和感を覚えたが、このままではただ押しつぶされて負けるため、リミットは真逆の軽くなる魔法を発動させた。
それでも魔法を解かないクロネを見てリミットは何をしようとしているか理解した。
クロネの思惑は、すぐに対処しなければ敗北に近づくもので、リミットは即座に銃弾を撃ち出した。
氷の籠手で弾き、その
「……勇者、考察、その3。魔力量は普通」
つまり、リミットは現在、常に魔力を使わせられている状態で、このまま行けば確実にクロネより先に魔力がなくなり重力に押しつぶされる。加えて、重さが一律ではなく徐々に重くなることも、魔力操作を行わなくてはならず、リミットを消耗させていた。
「……そこから導かれる勇者の倒し方は――」
クロネの言葉はまるで予期されていたかのようにリミットに引き継がれた。
「逃げる事。って言おうとしてますね!」
すでにその行動に移そうと、観客席へ跳躍しようとしたクロネ。
その瞬間、地面より魔物が現れ、襲い掛かった。
「ダンジョン作成の一部。人工魔物
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