第5話「ラッキースケベ禁止 その1」

 辺境の村、『ラース村』いくつかの家屋が並ぶ、ごくごく普通の村。周囲はモンスター避けなのか木の囲いがされているが、あまり役に立ちそうには見えない。


 そんな村へ食料などの補給の為イスズたち一行は立ち寄った。


「ここはラース村です」


 村へ近づくと、入り口にいた男性が開口一番に村の名前を伝えてきた。


「このラース村で告白をすると成功する確率が20%アップするという伝説があります」


 第一村人の謎の村紹介を無視し、イスズは村の名前に興味を持った。


「ラース村? ラースって確か怒りとかそういう意味だったよな」


 イスズは入ったとたん怒鳴り散らされたら、即座にぶん殴ろうと決め拳を固めた。

 しかしイスズの心配は杞憂きゆうに終わり、すんなりと村へ入ることができた。


 元勇者ヤマトと元魔王クロネもイスズの後へ続いて村へと入ると、


「あっ!!」


 ヤマトは急に何かに躓き、イスズへと向かって倒れこむ。

 イスズは一瞬早く察知し、避ける。


 ガシャン!!


 鎧のせいで大きな音をたててヤマトは地面へとキスをした。

 兜をしていればキスすることもなかったのだが、ただの村に入るには仰々しすぎる為、ジョニー号の荷台へと残してきたことが災いした。


「いつつっ。ちょっと、倒れる前に支えてくれてもいいじゃない!?」


 ヤマトが抗議するのに顔を上げると、なぜか今度はイスズが転びそうになっていた。


「くっ、オラァ!!」


 歯を食いしばり、地面を割るほどの勢いで足を踏みしめ、転ぶのをなんとか回避した。


「村に入っていきなり2人も転びそうになるだなんて。この村、怪しいな」


 転生者を予感させる出来事にイスズは苦々しく呟いた。

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