10『旅の過程にこそ価値がある』

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 あっという間に、ストロー式の龍陽路駅に到着した。

 現代的な造りだが車両開口部が大きい。ここのホームもとくに設備はなく、下車した乗客はそそくさとエスカレーターを降りていく。

 駅の改札口を出てエスカレーターを降りると、目の前に地下鉄二号線と地下鉄七号線の龍陽路駅がある。

 サクヤは二号線の龍陽路駅へ入っていった。

 ここで切符を買わなくてはいけないが、サクヤは地下鉄一日乗り放題切符、マルチパスを取得済み。

 自動販売機並みの大きさがある切符販売機を横目に、セキュリティーチェックを受ける。地下鉄の全駅には乗車時、セキュリティーチェックが設けられており、小さなバッグだけなら呼び止められないが、大きなスーツケースは必ず通さねばならない。

 自動改札をくぐる前に、サクヤは時刻を確認する。

 このマルチパスは、最初の自動改札を通過したときから二十四時間が計られるため、翌日の同時刻まで地下鉄を使う目論見でいなければならない。


「タイムリミットは、明日の十二時か」


 今頃はホテルに到着予定のつもりだったサクヤは、甘い計画だったと自省しつつ、改札をくぐった。


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