08『旅の過程にこそ価値がある』
―――――08
上海空港から市街地への移動方法は四つある。
タクシーなら市街中心までおよそ二二〇元、所要時間は五十分かかる。
エアポートバスは、行先によって八~三〇元、市中心地まで一時間必要だ。
地下鉄は市中心駅まで七元と一番安いが、一時間ほどかかる。
リニアモーターカーは空港から龍陽路駅まで四〇元、八分で行ける。そこから市中心まではべつの移動手段を考えなくてはならない。
「選ぶまであらへん」
サクヤは迷わずリニアモーターカーを選択した。
案内板には、『磁浮 Maglev』と表示され、リニアモーターカーとは書かれていない。磁気浮上を表す英語、Magnetic levitationを縮めた呼び名だ。ちなみに、リニアモーターカーは、超電導リニア最初の開発者であった京谷好泰が名付けた和製英語である。
「漢字が読めてよかった。マグレブいわれてもわからへんかったわ」
切符売り場に立ち寄り、関空で両替したお金でリニアモーターカーと地下鉄一日乗り放題切符(磁浮地鉄一票通)を購入したサクヤは、大きな荷物検査機でセキュリティーチェックを受けて自動改札にチケットカードをかざす。開いたゲートをくぐり、だだっ広いコンコースへ向かった。
エスカレーターでホームへ降りると、すでに白い車両が停まっていた。
ドイツが開発した、トランスラピッドリニア方式という常電導磁気浮上タイプだ。超電導にくらべると圧倒的に磁場が弱く、一センチくらいしか浮上しない。
浦東国際空港駅と上海市郊外にある竜陽路駅、三十キロほどの距離を結んでいる。
ストロー式のホームにホームフェンスがあるものの、乗車口に自動扉はない。代わりにロープが張られている。到着時の際、係員がロープを外す。
リニアモーターカー内部は、向かい合わせの三人がけ客席シートが二列設けられ、シートピッチは国際線のエコノミークラスほどあり、座席にはセルリアンブルー色のカバーが掛けられている。高級そうではないものの、座り心地は悪くなかった。
座席上部には読書灯が設置され、窓には日光を遮るカーテンもついている。
久しぶりの乗車に、サクヤの気持ちも高ぶっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます