03『旅の過程にこそ価値がある』

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 目立たず行列のない自動化ゲート利用登録カウンターに足を運んだサクヤは、係員にパスポートを見せて申請用紙をもらい、必要事項を書き込んでから専用機械で両方の人差し指の指紋を登録した。これで完了。あとは、係員からパスポートの最後のページに、登録済みの判子を押してもらえばいい。

 これで出入国審査に並ぶ苦痛から解放される。欠点といえば、パスポートにスタンプが押されなくなること。もしスタンプが必要なときはゲート通過時に職員に申し出れば押して貰える、と係員から教えられた。

 サクヤはパスポートをショルダーバッグに入れる。


「ほうかぁ、押してもらえなくなるのは寂しいね」


 スタンプは旅をした証になるとはいえ、押してもらっていたら時間的メリットがなくなる。かといって、スタンプがないと免税購入した際、入国日確認できないため手続きができない。


「便利なのやら不便なのやら、どっちなんやろなぁ」


 サクヤは苦笑いをして息を吐いた。

 海外へ行くときくぐる出入国審査(Immigration Control)、通称イミグレの列に並ぶのさえ、サクヤは苦痛でしかたなかった。そんな悩みを解消する救世主こそ、出入国審査システム自動化ゲートだった。


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