04『旅の過程にこそ価値がある』
―――――04
サクヤは保安検査の行列に近づき、肩をすくめて息を吐く。
「美味い飲茶が食べられるなら、よろこんで並ぶんやけど」
待ち時間を利用しようとショルダーバッグからガラケーを取り出し、メールの意味がわからないから教えて、とトモにメールを打つ。
五分ほどして返信が届いた。
サクヤは目を細めて画面を見つめる。
「ん?」
届いたメールには、『考える時間はあるでしょ』と書かれていた。
「ほお、トモはわたしに挑戦してきたんやなぁ。この程度もわからんのに、世界を渡り歩く旅人を名乗るのはおこがましい、と言いたいねんな」
ショルダーバッグにガラケーを放り込み、サクヤは腕を組む。
「あっという間に問いたる」
高らかに笑い飛ばす自分を想像しながら、送られてきたメールの文面を口の中でくり返し呟いた。
二十分ほどして順番が来て、無事通過する。同時に行列の原因を知った。
入り口でパスポートと搭乗券のチェックをするだけでなく、門型金属探知機に反応した客に対して、検査員による着衣上から触れて確認しているから時間がかかり、行列になっていた。昨年十月より、航空機テロやハイジャックを防ぐべく国際線の保安検査が強化されたことを、サクヤは思い出した。
つぎに自動化ゲートのモニター前に着たサクヤは、パスポートの顔写真ページをスキャナーで読み込ませ、画面の指示に合わせて両の人差し指を指紋認証機で照合する。
開いたゲートを通過しながら、サクヤは軽く興奮した。
「めっちゃ早っ」
かかった時間は三十秒ほどだった。
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