Ⅳ
「ロディ、長男の所在は割れているのか?」
「いやー、それがサッパリでね。しかもリストに名前があるのはマリアだけで、長男のアガタという名は何処にもない」
「マリアにアガタか……ユダと言う男は、敬虔なクリスチャンなのか? ロディ」
「さぁ? そこまでは知らないけど、知る人ぞ知るサド侯爵だと言う話はある」
「まさか、長男は監禁されて拷問されているとでも?」
「どうだろう? まだ何とも言えないけれど、ユダと言う男には辟易する様な性癖があるようだよ」
ロディの話が本当であれば、もしかしたら長男は死んでいるのかも知れないとさえ思えた。
ユダの曲がった性嗜好は同性のしかも少年を好み、去勢すると言うもだった。
学生に手を出している事は結構有名な話らしいが、その立場故か誰もそれを表に出そうとはせず、去勢されてしまった本人は自らそれを詳らかに出来ず、結果彼の性癖は表立って問題になった事はないらしい。
息子二人に世界的に有名な聖女の名を与え、もし、父親からそんな洗礼を受けた息子が真面に成長していたら、そっちの方が奇跡だと思える。
しかもアガタとはシチリアのアガタと言われている聖女の名で、権力者に刃向かい両の乳房を落とされた上、拷問の末に獄中死した女性の名だ。
近親相姦の上去勢となれば、どんな天才だろうと倫理観を問われるばかりか、性犯罪者として一躍有名になる事だろう。
そんな事態になる事を危惧して早々に次男を売りとばしたのだろうか……。
だがしかし、マリアがユダの次男だとして、何故マリアだけ売却したのか。
それにマリアは去勢されていない。
「それから、これね……」
現場の写真を数枚、ロディはテーブルの上に放り投げた。
「何だ? これは?」
手の内に残された血文字の様なものが写っている。
第一の犠牲者フレデリックの左手にB5と記してあり、第二の犠牲者ロナルドの左手には08と書いてあった。
「ルース、君これ、何だと思う?」
「あ? 俺が聞いているんだが?」
「サッパリ分かんなくてねぇ……どうやら暗号のようなんだよね」
ふと気付くと、起きて来たマリアが黙って傍に立っていて、思わず息を飲んだ。
「っ! マ、マリア……おはよう」
マリアはコクリと頷くと、いつものように眠そうな顔で首に縋り付いて膝の上に乗る。
「こら、止めないか。人前では駄目だと言ったはずだぞ」
「へぇ……人前じゃ無かったら良いのか。ルース先生はイヤらしい嗜好をお持ちだ」
「ロディ、何度も言うがマリアの精神年齢は相当に低い。日常生活でさえ普通にして来たとは思えん。もしかしたら、犬猫の様に飼われていた事だって考えられる」
「……その割には、言葉は理解出来てるよねぇ?」
「あぁ……」
マリアの事で一番不可解な事は、そこだった。
幼児並みの躾が成されていない生活習慣、食事はやっと真面に食べれる様になったが、ちょっと目を離せば廊下で自慰を始めてみたりする。
初めてみた時には流石にギョッとしたが、本人いわくマリアは十五歳で、思春期を売春して過ごして来た様な物だった。
体が物足りなくなるのだろうかとマリアにはここでならしても良い、と部屋でする様躾けた。その代り、それ以外の所でしてはならない、と。
内股の間に下がるまだ未熟な柔かい肉房を細い指で弄りながら、みっともない程に両足を広げて後ろの蕾をもう片方の手で弄る。
誰に見られても構わないと言う様な奔放さの癖に、その表情は羞恥に悶えていて、後から後から溢れ出る蜜が
まだ若く瑞々しい色気は、硬く凝り固まった三十路男の性欲に沁みる様に垂れ流されて、ルースは手伝ってやろうかと声を掛けそうになる自分を自制するのに必死だった。
余りの堂々とした行為に呆気に取られてしばらく見ていたルースは、自分の指ならもっと奥深くまで快楽を与えてやれるのに、なんて事ばかりが浮かんでしまう。
未成熟な体を淫蕩に蹂躙する背徳感と、美しいものを汚す罪悪感と、マリアと言う聖女の名を冠した美少年を自分の手の内に捕えておきたいと思う征服欲がないまぜになった辺りで、理性を取り戻さなければ一線を越えてしまうと言う恐怖に出逢った。
そしてルースはその時ある事に気付いたが、それがどう言う理屈なのかまだ答えが出ていなかった。
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