誰も実態を知らず、噂だけが伝わる謎の遊牧民、狐追いの民。
怪我をして意識を失った主人公ハーンは彼らに助けられ、しばらく一緒に過ごす。そして恋をする。狐追いの民のなかにおいて見た目も振る舞いも異なるひとりの娘に。けれど彼女が笑顔を向ける相手は別にいて、それは、人間ではなかった。
しゃべることが苦手な女の子がハーンと出会って変化する。離れたいけれど離れたくないような、もどかしさや苛立ちといった心情の機微が、ハーンの目線をとおして伝わってくる。そんな彼女に惹かれるハーンの恋心を応援したくなる。
光の姿をした狐、という不思議な存在も、目の前で動いているような臨場感があった。
謎がいくつかあって、これはどういうことだろうと想像をかきたてられる。
大草原や遊牧民、夢か現か不思議で幻想的なお話、じれったい恋、そういうものが好きな人にお薦め。