第56話 つぶやき
「しかし……ガッパ爺は、どうしてそんなに詳しく知ってるドン?」
輪入道が尋ねた。
「そうだよ……どうして、そんなに?」
泰平も気になっていた。
「実はな……泰平のじいさんから聞いたのじゃ」
「え? 爺ちゃんから……」
「あの、じいさんは天牙一族の“頭目”であり“召喚者”じゃからな」
「確かに! あの齢で、あのパワーは普通の人間じゃ有りえないドンな~~」
当然と言えば、当然である。
なるほど、“
爺ちゃんが結界を張っていたからである。
「だから、小さい時から、あんな訳のわからない修行をさせられたのか~!」
爺ちゃんの事を、てっきり“サドで意地の悪い爺さん”だと思っていた。
「泰平が、大人に近づくごとに“召喚者”としての力が強くなること“も”聞いておる……」
「“も”? 今……“も”って言わなかった? ねぇ~♪ ガッパ爺~♪」
ガッパ爺の、まだまだ秘密を知っていそうな口ぶりを見逃さない雪ん娘である。
「ワシが今、何か言ったか? 言った! さぁ……どうかの~」
「ハッキリと言ったっしょ~♪」
女子中学生と、爺ちゃんの会話は何処でも
「そうだ! 私は~~泰平に召喚なんかされないからね!」
雪ん娘の隣で、相変わらずリンカ様に見惚れている泰平に詰め寄った。
「雪ちゃんを召喚? 俺だって……雪ちゃんを首に入れるなんて嫌だよ~」
「でも……泰平が『どうしても♪』って頼むなら、考えてあげてもいいわよ♪
私が守ってあげようか?」
「え! 守る? 雪ちゃんが……俺、男だぜ~」
「泰平は、男でも、その前に“弱虫”がつく“弱虫泰平”なのよ~」
「でも……俺は……雪ちゃんには、そのままで……傍にいて欲しいかな♪」
頬を紅潮させ消え入るような小さな声で言った。
そんな泰平を見て、更に小さな声で「バカッ♪」と答えた――雪ん娘だった。
輪入道が、河童の五郎、半魚ッチが、そんな二人を見比べながらニコニコしている。
妖怪は、人間より遥かに耳が良い事に気づいていないようである。
「そうじゃ……泰平!」
「なんだよ~ガッパ爺~! いきなり厳しい顔をして……」
「このことは肝に銘じとくのじゃぞ……残り三つの【首(左手首、右足首、首)】に召喚できるのは、お前と心が通じ合えた妖怪だけだということを」
「通じ合える? 妖怪と……僕が? うん! それは、大丈夫な気がするよ」
泰平は、雪ん娘に振り向くと、親指を立ててウインクをした。
「なによ♪ 気持ち悪い~♪」
今日二回目のダメ出しを喰らった。
上げたり、下げたり――振り回される泰平である。
「とにかくじゃ! 泰平は、まだまだ多くの経験を積んで……多くの妖怪から信頼を得ていかなければならん! 甘やかすわけにはいかんからの」
「頑張ってね♪ 泰平さん♪」
(もしかして……リンカ様は、泰平の為に、ここに来てくださったのか。同じ神の血を受け継ぐものとして……)
ガッパ爺は優しく微笑むリンカ様を見て思いめぐらせた。
「皆の衆! これで分かったじゃろ。泰平が、ピラニアより早く泳げた事も。半魚人君が吹き飛ばされ事も」
「…………」全員が無言で頷いた。
「しかし……この事が知れ渡ると泰平の身が危険に
「分かったゲロ~! 絶対に言わないゲロ!」
「ワシらだけの秘密にするドン! ……でも“嫁入道”には話してもいいドン?」
「サタン~~! ソンナ怖イ化ケ物ナンカ絶対ニアイタク無イッチ~~!」
三者三様が心に誓った。
「それでは明日の朝、日の出と共に集合じゃ~! 忙しくなるから、ゆっくり休むのじゃぞ」
「オ~~~~!」
ガッパ爺に
泰平も、雪ん娘と仲良く談笑しながら“
そんな二人を眺めながら――リンカ様は心の中でつぶやいた。
(みんなは知らない……天牙一族に、千年に一度産れてくる運命の子の事を。その子は“
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