三話 初期ステータス ②
それからしばらく歩くと教会に着いた。山道だった事から後半から疲れたアードは父親──ローガが、ソフィナは彼女の父親──アイクがおんぶをしていたが。
教会の両開き扉の前まで来たところで、降ろしてもらったアード、ソフィナは二人で扉を開ける。
扉の先には、アード、ソフィナ以外にも今年五歳になった子供が数百といた。この教会には、アードたちが住むリームス村以外にも様々な村から来ているのだからこの人の数も納得がいくだろう。
アードたちは教会の中へと入り、大人しく五つある列の一番右、教会の入り口側の列の最後尾に並び、職業と初期ステータスを決める儀式の時まで待つ。
教会から子供の話し声は一切聞こえない事から、アード、ソフィナはその雰囲気に合わせて言葉を発さず、彼らの周りからはルーラにおぶわれているナヴィの寝息しか聞こえない。
時間は刻々と過ぎていき、一時間程経った頃、アードたちの番が回って来た。
「ソフィナ。先に行っていいよ」
「いいの? あーどくん、あんなにたのしみにしてたのに」
「それぐらいいいよ。ソフィナの前も後も変わらないから」
そう言うと、ソフィナは教会に勤めているだろう聖教者の前まで歩いて行き、その人の言う事を聞き、淡々とこなしていく。
そして、五分程でソフィナの儀式は終わり、アード達と彼女を仕切っていたカーテンを潜って彼らのそばまで戻って来た。
カーテンは何か大事な話をする為なのか仕切られていて、中の様子が見えないようになっている。
その事で若干不安だったアードだったが、ソフィナの様子からそれは杞憂だと分かり、彼はカーテンの中へと入って行った。
「よろしくお願いします」
「……えぇ。よろしくね」
やはり数百を超える数の子供を相手する、もしくはど天然なソフィナの相手が疲れたのか、覇気の無い目で三十代前半ぐらいの女性が言った。
「疲れましたか? ソフィナに」
「えぇ。あの子は……ね?」
「はい、分かります」
聖教者の女性はアードと目だけで分かり合った。とは言え、彼女がどうなろうが知ったこっちゃ無く、少し、ほんの少しだけ気の毒だなと思ったぐらいだった。
「でも、休んでる暇は無いですよ?」
「……そうね。じゃあ、始めましょうか」
こうして、アードの儀式が始まった。
儀式は簡単で、いくつかの質問に答え、半径十六センチメートル程の水晶玉に手をかざして数秒待ち、どこの指でもいいが、指印を指定された場所に押す。
ただそれだけで、ソフィナより短い三分で終わり、結論から言うと最悪だった。最もアードがなりたく無いと思っていた状況となってしまった。
まず、アードの職業とステータスを見てもらえれば分かるだろう。
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アード・グラウラス 5歳 男
職業:村人
レベル:1
筋力:4 I
耐性:5 I
敏捷:7 I
器用:6 I
魔力:3 I
魔耐:3 I
知識:692 C
運:999 SSS
スキルポイント:0
スキル:無し
エキストラスキル:無し
加護:無し
称号:無し
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このステータスを見た時、アードは絶句した。知識と運の高さでは無く、無スキル、無加護、無称号、そして職業村人という事実に。
アードは職業は然程問題無いと思っていた。アードは自分は転生者だから、初期ステータスは良いと思っていた。
だからこそ、アードは天から地へ叩きつけられた気分だった。聖教者の女性が何事か真剣な表情で言っていたが、彼はそれに気付かず、カーテンの外へ出て──
そこまでだった。アードが意識を保てたのは。次に目が覚めた時は、自室のベッドで眠っており、どうやってここまで帰って来たのか、彼には分からなかった。
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