第4話
なんでこんな筋肉の塊が召喚されたんだ。化け物には化け物をぶつけろってか。俺の期待していた美しい使い魔はどこだよ。
そうか、分かったぞ。召喚に失敗したんだな。それで、美女とは正反対の筋肉ダルマが召 喚されてしまったんだろう。きっとそうだ。
「よし、召喚に成功したわ。いやーさすが私、天才ね。さぁ、もう大丈夫よ。私の最強の 使い魔、プリ子が召喚されたからには、あんなキチガイはサクッと退治できちゃうから」
嘘だろ。今、召喚成功って言ったか?あの筋肉の塊が成功?しかも名前はプリ子?もう、何もかもが狂ってやがる。プリ子じゃなくて、ゴリラの間違いだろ。一文字も合ってねーぞ。何を思ってプリ子なんて名前つけたんだ。だいたい、使い魔じゃなくて軍人の間違いだろ。 どう見ても魔法使わないだろ。物理でドンパチ解決するやつだろ。もうツッコミが止まらねぇよ。
美しい使い魔が拝めなかったことは非常に業腹ではあるが、仕方がない。強さは召喚者のお墨付きなわけだし、サクッと化け物を倒してもらうとしようじゃないか。
「じゃあ、任せるぞ。プリ子を使ってサクッと倒してくれ。」
「任せて。さぁ、プリ子!あの化け物を退治するのよ!行きなさい!」
プリ子は無言で頷くと、⻑いこと暴れ続けている化け物に向かって突進して行った。何も持たずに。
果たして、プリ子は勝てるだろうか。もしも、プリ子が負けてしまったら...。いや、プリ子はこの女の最強の使い魔だ。負けるはずがない。プリ子に敗北の二文字など存在しないはずだ。そういえば、俺はまだこの女に名前を聞いていなかったと思い尋ねた。
「あんた、名前はなんて言うんだ?」
「ごめんなさい、名乗っていなかったわね。私の名前はクリスティーヌ=チョメ子よ。チ ョメでいいわ、よろしくね。」
よろしくね、じゃねぇよ。偽名にしても適当すぎるだろ。なんだよ、チョメ子って。しか も愛称もクリスとかじゃなくてチョメっておかしいだろ。絶対呼びたくないし。チョメ子をチョメに短縮した意味も分からんし。なんなんだ、この女。
「あなたの名前は?」
「ああ、俺も名乗っていなかったな。俺の名前は...」
俺がチョメに名前を名乗ろうとした時だった。俺とチョメの背後にドサッと重量のある 何かが降ってきた。なんという既視感。俺はなんとなく察しながらも、ゆっくりと音のした 背後を振り返った。するとそこには、血だらけのプリ子が倒れていた。知ってたよ。
「プリ子が負けるなんて...。あの化け物、やはり強すぎるわ。」
「いや、化け物傷一つ付いてませんけど。ピンピンしてますけど。」
何が最強だよ。何一つダメージ与えられてないじゃねぇか。化け物は相も変わらず荒ぶってるし。よく疲れないな。
あの化け物が強いというのは確かだ。だがそれ以上に、チョメとプリ子がクソザコすぎる。 俺が言えたことじゃないが。頼みの綱であるプリ子がこうもあっさりと敗れてしまった以上俺たちにもう打つ手はない、完全に詰みだ。やはり、死ぬしかないのか。と俺が絶望しかけた時だった。横にいるチョメが、神妙な面持ちで俺に告げてきた。
「一つだけ、この絶望的状況を打破する方法があるわ。」
「何?そんな方法あるのかよ!なら早速その方法で...」
「それは、私の中にある全ての魔力をあなたに転移して、あなたがあのキチモンを倒すと
いう方法よ。」
え?なんだって?いや、バッチリ聞こえていたけど。
なぜ俺に魔力を転移させて俺が戦うことが打開策なんだ。というか、今まで突っ込まなかったけど魔法とか魔力ってなんだよ。
「なんで俺に魔力を転移させてやつを倒すのが打開策なんだ?俺、化け物どころか、碌に に喧嘩すらしたことないクソザコだぞ。」
「それは、プリ子という切り札が敗れ、戦闘能力のある私もやられて、負傷し動けない。 つまり、今唯一まともに動ける戦闘力ゼロに等しいであろうあなたがやるしかないという、 苦肉の策ね。」
聞きたくなかった。というか言われて気づいたが、俺の身体の痛みはほとんどなくなっているし、キチモンにブッ飛ばされたときの出血も完全に止まっていた。どうやら先程チョメがかけてくれた回復の効果らしい。ならチョメが自分を回復して戦えば良いのでは?と思った諸君。それ以上いけない。それに、チョメは少々頭がおかしいようだが、見た目は超が付くほどの美人だ。そんな美人に、そこまで辛い重荷を背負わせるわけにはいかない。それに最初はどうせ死んでやろうと思ってたんだ。ここで戦って死んでも何の問題もないじゃないか。よし、いっちょやってみっか。
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