4点目 授業中の事件

ともあれ、久しぶりの校庭でのサッカーに気を良くした児童たちは私の望んだ景色にぴったりの笑顔快晴で、空の模様など何の障害にもならない様子で心の底から楽しんでいた。


サッカーボール相手にルールなく蹴るだけでは盛り上がりに欠けていたので対戦を行うこととした。

1クラス男女合わせ30人程度であるため、即席で2チームを編成する。


児童たちにはランダムを装ってパワーバランスが拮抗するよう、我ながら上手く分けることができたと心の中で自賛していたところで、あることに気が付いた。


弘人がいない。


さきほどまでは確かにみんなと一緒にボールを蹴っていた。目を離したつもりもないがいつのまにか弘人が消えていた。


「誰か!弘人知らないか?」


「知らねぇートイレでも行ったんじゃないすか?」


優馬が答える。


おかしい。これだけの人数がいながら弘人の行方を知る者がいないのである。


「先生、オレ探します!」


高橋が勢いよく言った。気持ちは尊重したいがそういうわけにもいかないので、児童たちには対戦をしておくよう言いつけ、私は一先ずトイレを見に行くことにした。


私が校舎に向かう際、高橋が駆け寄ってきた。


「やっぱり探します!心配です!」


「高橋、気持ちは嬉しいけどここは先生に任せて。な?」


そう言うと高橋は観念したかのような寂しい顔で校庭へ戻っていった。


トイレへ来てみた。だが弘人の姿はなかった。取るべき行動としては他の職員へ報告し、対応するのがベーシックであるのはわかっていたが、本来のカリキュラムを曲げてサッカーをさせている手前と現時点でさほど大きな問題と考えていない点、さらには真面目な弘人は待ってれば戻ってくるだろうと楽観的になっていたこともあり、報告の前に一度児童たちの様子を見に行くことにした。


校庭に戻ると満点の晴れ晴れとした顔でサッカーをする児童たちがいた。だがまだ弘人はいないようだった。


ここでまた高橋に声をかけられる。


「みんなで探した方がいいですよ!」


私は、このタイミングで他の職員に協力を要請することとした。ただし、児童たちには引き続きサッカーをしているよう伝え、新任の女性よ先生に監督をお願いし、先輩職員らと校舎内を探し始めた。


私は担任として監督の不届きであったことを素直に認め、懸命に探したが結局弘人は授業中には見つからなかったのである。

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