第2話 1月25日 記憶そのⅠ

 目が覚めた。

 

 耕祐は自分が布団の中にいる事に気づいた。

 夢だったのだろうか?

 いや、間違いなく夢だ。

 夢でなければ、一瞬で秋葉原から自分のアパートに帰り、パジャマに着替え、布団の中に潜り込んだことになる。

 あり得ない。

 だが、だとしたら、いつから夢だったのだ?

 思い返してみる。


 秋葉原に行った。

 歩行者天国で気分が悪くなった。

 もの凄くトチ狂った巨大な店の看板がフラッシュバックした。

 そうだ、薬屋に行ったのだった。

 変な少年に逢った。

 変なクスリを飲まされた。

 そこまでは、夢じゃ無い。

 自分の記憶の中の時間経過も途切れていない。

 その後、リンという娘にあって……。

 リンに逢う前と逢った後の記憶がない。

 酒を飲んだわけでもないのに、記憶が欠落している。


「クスリ」


 それ以外には考えられない。

 何か、非合法的な幻覚剤でも、飲まされたのだろうか?

 習慣的になってしまって、大金をつぎ込むことになったりしないかと一瞬背筋に冷たい物が走る。

 枕元に置かれたデジタル時計を見た。

 時計の日付は、しっかり日曜日を消費して、月曜日になっていた。

 やはり、薬屋は現実だったのだ。

 記憶はないが、何か、危なそうなクスリを飲んで、正体を失った酔っぱらいのようにふらふらと秋葉原から家に帰って床にき、夢を見たのだ。

 よく、事故にも遭わず無事にたどり着けたものだと、小さく安堵の溜息を付く。

 いつも目覚ましをかけている時間より2時間ほど早い時間だったが、不思議と寝不足は感じられない。

 それどころか、なんだか、遠足の当日のようにうきうきしている自分がいた。

『また、あ・し・たオイデ、コウスケ』


「いや、それは、夢だから」


 そう自分に突っ込んでみたが、何故か、にやけてしまう自分がいた。



「おま・たせー!」

 耕祐が、雑踏の中で振り返ると、そこには昨日と同じ格好をしたリンの姿があった。

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