5 ja+ti sekas la:metzo.cod judnik kap era foy mi:fe.(勝者が歴史を作る。この世界も同じか)
グルディア王国。
その歴史は今から百年ほど前に遡る。
当時、イシュリナシア王国では最初の王朝の王族が、ある野心的な貴族によりほぼ惨殺され、成り上がり者のラザンスという男が新たな王に即位した。
これに反旗を翻したのが「真の正義の騎士団」である。
彼らはイシュリナス騎士団を脱退し、わずか数人で活動を始めた。
打倒ラザンスが目的である。
紆余曲折があったが、ついに彼らはさまざまな国内勢力をまとめ上げ、ラザンスを処刑した。
しかし唯一、生き残った王位継承権者の女性は王位を「真の正義の騎士団」を立ち上げた騎士に譲り、かくして現在のイシュリナシア騎士王朝が始まる。
だが、途中で彼とたもとをわかったグルードという騎士がいた。
彼は新たなイシュリナシアの王となった盟友が実は最初から王位を望んでいたことを知り、一同から離反したとグルディアの史書には書かれている、らしい。
そしてイシュリナスの教えを捨て、セルナーダ各地を放浪したグルードはやがてウボドを名乗る黒い鎧の騎士姿の神に出会った。
神は苦悩から解き放たれるには、あらゆる感情を捨て去るしかないとの教えを授け、彼に人々を救済するための王国の建国を命じた。
グルードは神に命じられるがままに、当時、グラワール湖岸で栄えていた八つの都市国家をまとめあげ、イシュリナシアに伍する王国をつくりあげた。
これが、現在のグルディア王国の始まりである、という。
どこまでが真実か、とモルグズは思わずにはいられない。
ただ一つだけ確かなのは、神々は積極的に人の歴史にまで関わってくる、ということだ。
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ラクレィスから着いた話にも、特に感銘は受けなかった。
それにしても、もうちょっと上等な宿屋はなかったのか、と文句を言いたいところだが、グルディアに入ってからは極力、目立たないようにしている。
この国ではゼムナリア信仰は盛んではないようだが、信者と分かれば死刑になることにはかわりはない。
ただ面白いのは、イシュリナス信者もまた処刑されるということだ。
ウボドの教義によれば、イシュリナスは偽善の神であり、正義の名を騙って人々を好き勝手に殺しているのだという。
彼らの実態を知ってるモルグズからすれば、案外、ウボド神の言っていることのほうが正しいのではないか、とすら思う。
もっとも、ウボド神もまた気の滅入るような神ではある。
ときおり、グルディアでもウボド信者を見かけるがすぐにわかる。
奇妙に無機的というか、魂を抜かれたような顔をしているのだ。
人々は表向き、ウボド信者や僧侶を尊敬している。
だが実際はどうなのだろう。
グルディア人はイシュリナシア人よりも、遥かに感情豊かなところがある気がする。
地球でいえばラテン的というか、陽気だが愛憎の感情もまた深い、といった感じだ。
逆に言えばだからこそ「感情を失えば救われる」という教えが受け入れられたのかもしれない。
グルディア人は短気で、激情的なため、さまざまな日常の問題が発生しやすいのだ。
それほどイシュリナシア人を知っているわけではないが、どうもグルディア人はやはり感情の抑制が苦手としか思えない。
酒場などでの刃傷沙汰も日常茶飯事である。
さらにグルディアは、かなり異様な神々も信仰されている。
荒淫と情欲を司るオルダス、慰安と悦楽の神キシュスス、さらには異常性欲の神であるヌラノークなどというものまで、ひっそりとではあるが人々の間で信仰されているのだ。
オルダスは男を精力絶倫にする法力などを僧侶に与えたりするがまだましなほうだ。
キシュススは美食なども司るが、危険な麻薬の守護神でもある。
ヌラノークに至っては、現代の地球でも明らかにまずい獣姦や小児性愛までありとあらゆる「愛」を許容している。
ヴァルサがグルディアを「堕落した神々を崇めている」と評したのは、決して間違ってはいなかった。
どうも北方のシャラーン文化というのは、かなり退廃的な側面があるようだ。
これらの神々も、もともとはシャラーン文化圏の神なのである。
ただ、シャラーンにはゾンキア帝国という国家があり、その首都であるウル・ゾンキムは百万を超える人口をもつ世界最大の都市であるともいう。
前近代社会で百万都市というのは尋常ではないが、ありえない話ではない。
ひょっとすると文明の進展度はシャラーンのほうが高いのかもしれなかった。
ただかつてはセルナーダもセルナディス帝国という国家をネルサティア人が建国し、その最盛時の首都の人口もまた百万を超えたらしい。
ただ、それから帝国は三つの王国に分裂し、互いに争った挙句、一頃は人口が激減したという話だ。
ときおりラクレィスから聞く歴史の話は面白かったが、いまはcharsuyの情報を求めて、このグルディアの都市にいる。
riames、つまりはリアメスという都だ。
この都市の人口が十万という話を聞いたときは眉唾ものだと思ったが、実際に入ってみると、誇張ではないだろうと理解した。
ただ、どうにもこの都の建物は、なかなかに気持ちが悪い。
一つ一つの建物は石造りのものが多いのだが、そのほとんどは、まるでスペインの建築家、ガウディのそれのように、やたらと曲線を多用しているのである。
この石材加工技術は、手間なども考えれば明らかにこの世界の本来のそれを超えていた。
つまり「魔術による建築物の可能性が高い」ということだ。
実際、石材をよく観察すると、もとは四角く切り出されたものが歪んで他の石材と融合しているとしか思えないものが多い。
そんな街を歩いていると、まるで生物の体内をさまよっているかのようだ。
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