5 ne+do! ne: isxurinasma i+sxuresa e+zema tigatse!(否! 私は私自身の力でイシュリナスの女騎士になったのだ!)
satom o+de ers nes konrxucs.ers non fo:los.sxumasat cod chagsum ya: tic.(彼女の兄はnes konrxucs.大貴族よ。sxumsatがこの近くにあるはず)
nesというのは、どうも固有名詞と見て間違いなさそうだ。
なんとかrxucsという単語はいままで何度か領主のことを訊ねたときに聞いた記憶があるので、爵位のような称号かもしれない。
sxumasatはたぶん、sxum-が統べる、治めるといった言葉の語幹なのだろう。
領主のことはsxumreysといっていたはずだ。
このsxum-のあとにsat、つまり土地がついているので「領地、領土」という意味だと推定できる。
だいぶセルナーダ語にも慣れてきた、という気がする。
ありがたいことに、この言語は単語の語尾で、わりと品詞などが区別しやすいのだ。
たとえば-ce、-n、-feで終わる単語は形容詞が多い。
そして副詞は、-umの形がよく出てくる。
またそのほかの場合も、子音で終わり動詞の活用形にないものは名詞だと推測できる。
なかでも-sのものは、火炎形名詞が圧倒的に多い。
ただ、大地形の場合はさまざまな子音が語尾になりうる。
厄介なのは、動詞が名詞化しているときだ。
この場合、たいていは母音で終わるのだが、火炎形か大地形なのか、音だけではまったくわからないのである。
たとえば動詞menor「見張る」の場合は名詞形はme:noとなる。
これは火炎形の名詞だ。
しかし動詞mogor「憎む」は名詞だとmo:goに変わるが、これは大地形なのである。
主語が火炎形か大地形かで動詞の活用が変わってしまうので、いままで幾度、ヴァルサに細かい間違いを指摘されたか数え切れない。
どうもこれは深く考えず、火炎と大地、どちらの形なのか単語を一つずつ覚えていくしかないようだった。
品詞の語尾が特徴があるのは、地球のさまざまな言語で見られる。
たとえば日本語では、形容詞はたいてい「い」が語尾につく。
甘い、高い、速い、遅い、例をあげていけばきりがない。
さらにこの形容詞は後ろに用言、つまり活用する単語がつくときは「い」が「く」に変わり、甘く、高く、速く、遅くなどとなるが、外国語の品詞のような表現をするならこの形は「副詞」に限りなく近い。
英語でもmove,live,haveなど語尾が-eで終わる単語にはわりと動詞が多いのだ。
ただし英語の場合、sing、swimのようにこれに該当しないものもたくさんあるので一概には言えないが。
さらにいえば、他の品詞でも-eで終わるものは少なくない。
とはいえ、あまり既存の品詞にこだわるのも危険ではある。
名詞、動詞、形容詞、副詞などは一般的だが、地球にも実にさまざまな特徴を持つ品詞が言語ごとに存在するからだ。
ましてやセルナーダ語、yurfaは異世界の言葉だ。
地球のどこにも存在しない品詞や用法もありえる。
また言語について考え込むところだったが、現状はそれどころではない。
aldea wam era marnas cu?(アルデアはなんで有名なんだ)
era isxurinasma i+sxuresa ta non fo:losma tansa dog.era mig vanmars.rxafs kap rxafsa kap joynowa sel.(イシュリナスの女騎士で大貴族の娘だから。とてもvanmarsなの.男の子も女の子も彼女に憧れている)
そこまで聞けばvanmarsの意味も見当がつく。
要するに、人気があるのだろう。
あるいはイシュリナスの騎士そのものが、イシュリナシアでは「正義の味方」のように人々にみなされていることもありうる。
思わぬ大物を捕まえた、と思ったが、逆にこれは厄介なことになるかもしれない。
こんな有名人に危害を加えたら、今度は王国全体を敵にまわしかねないのだ。
ついているのか、いないのか。
gow reys kap yas yujus aldeama zadyurfazo.ne: ci isxurinasma i+sxuresale era non fo:losma u:kla teg.(でもアルデアの悪口を言う人もいる。彼女が大貴族の一族だからイシュリナスの女騎士になれたって)
心外と言った感じでアルデアが怒りに顔を赤くした。
ne+do! ne: isxurinasma i+sxuresale e+zema tigatse!(否! 私は自分の力でイシュリナスの女騎士になったのだ!)
このアルデアという女騎士も、それなりに苦労していそうだ。
大貴族の妹として生まれついたぶん、たとえ実力でイシュリナスの騎士になったとしても人々はそれを疑う。
階級差が厳然と存在している世界だから公言はせずとも、裏ではいろいろと言われているのだろう。
もちろん、この世界に「言論の自由」などというものがあるとはモルグズは考えてはいなかった。
あまり余計なことを言えば、見せしめに処刑される、といったことも日常的に行われている可能性すらある。
だが、人々がそれで怒るかといえば、そうも思えない。
貴族や領主がなぜ自分たちを支配しているのか、と考える民衆はほとんどいないはずだ。
なぜならいままでずっとそうした歴史が続いてきたであろうし、もしそれに民が不満があればたぶん今のイシュリナシア王国は存在していない。
人々の支持をうけた新たな支配者階級が新しい王朝でも開き、その王朝が滅べばまた別の国が生まれる。
かつての地球がそうであったように似たようなことをここでも今まで続けてきたはずだ。
民衆が「これ以上、我慢し続けるならもう死んだほうがまし」という段階まで悪政が続かなければそうしたことは起きないだろう。
しかし、今まで見てきた限りではこの国は多少の問題は抱えながらも、きちんと人々は暮らせている。
むしろ当初の予想よりも遥かに平和、といってもいい。
とはいえ、それゆえに今度こそ、敵も本気になってくる。
おそらく「ゼムナリア教徒に街をまるごと焼かれた」というのは、滅多にないような大事件なのではないか。
だからこそイシュリナス騎士団、正義の神に仕える騎士たちがこうして動いているのだ。
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