第2話 異世界冒険者、島に立つ
電車から船に乗り俺はこれまでの事を思い出していた。
ここが異世界だとう事。この世界には魔物も魔法も存在しないという事。文明は進んでいるくせに『人間性は荒んでいる』という事。ヒューマンしかいないのに戦争が何度も起きていたという事。…エルフ至上主義の奴らが言ってた世界を実際に体験するとは思わなかった。いやいや!中にはマトモなヒューマンもいるはずだ!
俺は頭を振ると真新しいファイルを取り出した。
「えっと、これから行くのが『
とりあえずこれからいく場所を確認する。爺さんによると、これから行く島には『異世界の異物』が集まっているらしい。まあ、アッチコッチ移動するのは面倒くさいから助かったけどな。…こっちの文字を覚えるのも面倒くさいというかダルいというか…。それにここまで見た『鋼鉄の馬無し馬車』や『鋼鉄の船』など、とんでもないものをこうも見せつけられるとここが異世界だと嫌でも認めざるをえない。
そもそもこんなワケわからない依頼をなぜ受けたかって?…生活の全面支援という目先の金と夢のような『異世界』にちょっとだけワクワクしたからですが何か?
そうこうしているうちに船は目的地の港に着いたようだ。
「へぇ~。こりゃすげぇ」
港から少しは馴れた場所には洒落たショッピングモールになっていて王都並みの人間が行き来している。
(本当にヒューマンだけしか居ないんだな)
ここにはエルフやドワーフ、獣人といった亜人種は存在しない。ヒューマン至上主義の町みたいでなんか嫌だな。馴染みのイケメンエルフのククーリオや人懐っこい猫獣人の女のリャーナに久しぶりに会いたくなる感情を押し殺して先に進む。参ったな、ホームシックになるほどヤワじゃねぇぞ。
(そもそもそんなことを知られたら
しばらく歩くと立派な門が見えた。
(まさか俺が『学園生活』を送ることになるとはな)
そう、ここは全寮制の学園、その名は
爺さんに言われた書類を門番に見せるとすんなり入れた。入れたは良いが広すぎて何処だかわからない。でかい看板にデカデカと地図が張ってあって助かった。目的地の『男子寮』を目指して歩いてると横から何かがぶつかってきた。
「おっと…大丈夫かい?お嬢ちゃん」
ぶつかってきたのは小さな女の子だった。サイドテールっていうんだっけ?ふさふさした毛がゆらゆら揺れている。あれ?小さな子供の学校は敷地が違うんじゃないか?そこまで考えてると女の子はじっと俺を見上げていた。
「姉さん待ってよ!…ハァ、ハァ、すみません。大丈夫でしたか?」
後ろから走ってきたのは『少年』だった。あれ?間違って入ったのは俺だったか?
「ああ、大丈夫だ。それよりここは初等部じゃねぇよな?違ったか?」
二人はポカンとしたあと少女がキレだした。
「ちょ!!君ね!こんなセクシーな私を捕まえて失礼じゃない?!…イイ男なのにブツブツ」
「あはは…大丈夫、僕らは初等部じゃないよ。それより…君だろ?今日から入る転校生って。僕は君と同じクラスメイトになる
「…マジか!」
プンスカ頬を膨らまし怒った素振りをする少女。うん、気にしてたんだな。女ってのは自分の容姿が気になるものだったな。
「…大丈夫だ。エルフのハーフは成長が遅いだけでちゃんと大きくなるから。ほら、アイツら美男美女だからむしろラッキーだろ?」
「む??…何となく罵倒されてるのはわかった!」
「姉さん落ち着いてよ!もう…とりあえず寮に案内するよ」
「助かるよ。…っと自己紹介がまだだったな。今日から世話になる
ツヴィン・
「よろしくね」
「むぅ~、よろしくね」
…
…
俺の目の前にはデカい箱がある。その箱には小さな人間が芝居をしていた。ナンダコレ??
「アンゲル君、見たいテレビでもある?」
「…ツヴィンで良いぞ隼太。ところでテレビって何だ?」
「へ?」
俺はこの世界の文明を舐めてた。なんとこのテレビ、人が入っているんじゃないんだと!出来事を記録して流すなんてマジックアイテム、聞いたこと無ぇぞ!もう『異世界の異物』より凄いのがゴロゴロしてるんじゃね?もう回収しなくても良いんじゃね?
そんなカルチャーショックを受けて俺の一日は終了した。
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