第3話 「痛い立ち蕎麦」
東京アダージョ - Tokyo Adagio
東京に住んでもう長い。というより、そこから、出たことがないのだ。
山手線の内側のごく狭い世界だが、、それでも、たくさんの事象を見ることは避けられない。もう、ずいぶんと以前のことだが、それらが、時間の変遷と共に今の自分に降りかかる。
「痛い立ち蕎麦」
もう、十数年は以前のことであるが、渋谷駅地下のお蕎麦屋さんで、次の仕事の合間に早食いをせねばならなかった。
ここは、一応、背の高い椅子もあるが、、、立ち状態に近い姿勢で、食事をせねばない。
隣の席には、もう、リタイヤされただろう、知性を感じるご年配の方がいた。
そして、悪いことに、たまたま、目が合ってしまったのだ。
丁寧で親近感ある微笑みで返した。
それは、先方もそうしたからだ。
そして、突然にも、「にいさん、」と言われ
「つけ蕎麦に、ワサビといっしょに、唐辛子も入れるとおいしいんだよ、これが」と、 、何度も、言われ、、、
「おいしい」
「絶対においしい」
「それが、通の食・・」 と断言するのであった。
もちろん、違和感なく、
私は、迷わず、そうしたが、
辛くて、、もう、そばつゆの味も無く~
それを表情に出さないのも、辛い、そう、辛い笑顔になった。
「どう、おいしいだろう」 (やさしく語たられ・・)
「ええ、もう、こんなにおいしいなんて・・・知りませんでしたよ」
明るい笑顔で、苦痛、腹痛をこらえて、うなづいた。
好青年を演じたい自分がいつもそこにはあったからだ。
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