第5話 友との別れ

「リスク侯爵(こうしゃく)様が来るぞ!」

灰色のマントを背中に背負って、いくつもの金色の装飾をされた軍服を身に纏い、リスク侯爵が城の通路にしかれている貴族だけで足を踏むことを許される絨毯の上を、颯爽と歩いていく。歩き方にも風格が出てきたのか、すれ違う人たちが、二度、リスクの姿を見直すほど、彼は、姿勢も態度も、貴族としての信念も固まりつつあった。彼は子爵から侯爵に出世をしたのは、むろん彼だけの功績ではない。王女アリサの配慮や根回しは、もはや城の中で、知らないものは、誰一人、いなくなっていた。彼は、それを上手く利用しつつも、自らは口にすることは、一度もない。だが、相手がそれでいろいろ考えてくれれば、よりリスクの仕事はスムーズにいくことが多くなっていった。いつしかリスク騎士団の団長という任務以外にも、さまざまな仕事を任されるようになっていった。


「リスク様、先日の母様との会食はいかがでしたか?」

リスクの歩いている位置から数歩の後方で、専属秘書のフィルーナが、リスクの耳の鼓膜に囁いた。

「ああ。いいお店を教えてくれてありがとう。ちょっと高価ではあったが、母には良い親孝行が出来た」

リスクは、微笑みを作りながら、フィルーナの頭をなでた。

「それは良かったです。それはそれとして、リスク様に変な噂が流れておりますが、そちらは、いかが致しましょうか?」

フィルーナが目を細めて言った。

「いつもの周りの貴族たちの『妬み』から発したものだろう?それに犯人を見つけても意味はない。気にはせんよ」

リスクは、指で自分の下顎を何度か、さすりながらそう言った。

「一応、あとで報告書にまとめ提出いたしますね。それと、今日の午後の予定ですが・・・・」

フィルーナは、今日のスケジュールを簡単にまとめた書類をファイルにいれて、リスクに手渡した。そこに見慣れない男の名前が、載っていた。

「バスグ市民税収官?」

リスクは、通路で一度、立ち止まって、書類とフィルーナを改めて交互に見直した。



「下級市民の税金をとる率が下がっているのは、あなた方、市民税徴収官の怠慢でしょう?何故、税金の徴収を騎士団長である私に、ご依頼なされるのかな?」

会議室では、すっかり冷めた紅茶のカップが、二つ。男たちの目の前に置かれている。その紅茶に一口も男たちは口をつけなかった。

「徴収するはずの担当者が、最近、精神病を発症いたしまして、ずっと仕事を休んでいるのです。税金を滞納している人間とのやりとりで、精神をすり減らしてしまったのでしょう」

「では、私ではなく、別の職員を雇えば良い話ではないですか?」

リスクは、ようやくここに来て初めて、紅茶の味を確かめるためにカップの取っ手を握った。紅茶の湖に映るバスグ市民税収官の顔は、濁った茶色の顔をしていた。

「それが今回で五人目でして」

「何がですか?」

「リスク騎士団長殿。細かく言わなくても、わかるでしょう?」

「わかりませんね」

リスクは、相手の土俵には、乗る気はなかった。

「人が定着せんのです。この仕事は」

「でしょうね」

この部分は、リスクは、共感した。

「鬱病になるか、辞めるか、連絡もなく失踪するか、行方不明になるか・・・ああ・・失踪と行方不明は同じ意味でしたね」

「・・・・・・・・・・・・・」

リスクは、そんな重要なことを部外者であるはずの自分に淡々と話す、目の前のバスグ市民税収官という男を改めて見直した。髪の毛は大半が白髪になり、額の皺も、どうやら元には戻らず、永遠にそこに刻まれているようであった。笑顔は少なく、いつも『疲れているという顔』をしている。いつからこんな仕事の責任者に抜擢されたかわからないが、どうやら彼を見るに、この役職は、出世コースではないらしい。それを知っているのか、いないのか。だが、目の前の仕事に手を抜くことも出来ず、ここまでの地位まで来たという雰囲気が彼にはあった。

「その定着しない仕事を、私に、しろと?」

リスクは、彼の依頼する内容の結論を、簡潔に述べた。

「永遠にとは言いません。今、六人目の採用のために、採用をかけています。その間のつなぎです」

「つなぎですか」

「騎士団の本務に支障のない範囲でかまいません。あなたは魔王を倒した英雄ですから、英雄なら、下級市民も話を聞いてくれるかと思いましてね」

「私も、下級市民の出身ですよ」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

二人の間に静かな時間が音もなく、ゆっくりと流れていった。次に相手がどんな言葉を話すのか、二人とも、待っているようだった。順番的にはリスクが話しかける番ではないのだが、自分が話さないと、この場が収まらない空気感が漂っていた。

「わかりました。空いている時間にやらせていただきます」

結論は、初めから出ていた。バスグの背後に国王の影が見え隠れすれば、リスクはYES以外の選択肢など、初めから選ぶ権利はないのだ。不本意な仕事だと言うことは理解していた。でも、彼は貴族の道を歩く以上、こういうことも、やるしかないのだ。

「そう言っていただけると思いました。助かります」

バスグの顔は、そうは言っていなかった。早く配置転換の申請書が受理され、この職種以外の職に就きたいという風に思っているのだろう、の顔だった。リスクの偏見と思いこみが生み出したバスグの幻想は、リスクの思考の遙か上を飛び越えて、勝手に物語として動き出していた。

「紅茶、冷めますよ?飲まないのですか?」

リスクは、湯気が消えた紅茶のカップに手を向けた。

「ああ。これは失礼。すぐに飲みますね」

バスグは、そう言った。だが彼はついに目の前の紅茶を飲むことはなく、しばらく黙ったあと、リスクに頭を下げて、会議室を出ていった。

「・・・・・・・・・・・」

ただひとり取り残されたリスクは、紅茶のカップを見つめたまま、しばらく会議室いた。だが彼もまた、紅茶のカップをそこへおいたまま、誰もいなくなった会議室を、すぐに出て行った。



「この男が、今、どこにいるか知っているか?」

リスクは、路地裏で胸ポケットから取り出した小さな写真を路上に座っている、汚い男に差し出して言った。男は、写真の中にいる幼さが残る純粋な青年の顔をじっとしばらく見つめていたが、首を横に、二、三度振って答えた。

「しらねぇな。見たこともない。こんな純粋そうな人間が、こんな場所にいると思うかい?」

路上生活者は、下級市民ですらない。リスクと話をしている男はもっと下の階級の人間だった。それは公式には存在しない階級であったが、暗黙のうちに、人間は自分が上であるという優越感に浸りたいのか、そんな非公式な階級を、無意識に作り出していた。

「それよりも兄さん、どこの貴族だい?」

「・・・・・・・・・・・・」

リスクの身なりを見て、路上生活者は、そんな言葉を吐いた。教育が行き届いていなくても、自分の外見を観察し貴族だと予想したこの男は、ある程度の分析できる目は持っているようだった。

「・・・・俺の身分を聞いてどうする・・?」

リスクは、明らかに目の前の相手が自分よりも年上だと知っていたが、敬語を使うことはしなかった。それを使うに値しない相手だとリスクが判断したからだった。

「・・・人に対しての相応の聞き方や態度があることを、お前は知らないのか?貴族になりたてお前さんは、まだ世の中を知らないと見えるが?」

「・・・・・・・・・・」

路上生活者が、何を言おうとしているのかが、リスクには理解できなかった。

「あんたの本当の『誠意』を示せば、こちらも誠意を返す準備は、出来ている、ってことさ。貴族様?」

「・・・・・・?・・・・・・」

相手が、急に自分に対して敬意の言葉を使ってくる意味を、リスクは深く考え始めた。誠意というカタチの意味すること。それは・・・・

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

リスクは、上から騎士団の予備費として自分に直接、渡されていた金貨の意味を、今、ここで初めて知った。そして小袋に入っていた金貨を一枚、手のひらに納めると、路上生活者の手の中に、ゆっくりと忍び込ませた。

「・・・・・・よし・・・・」

路上生活者は唇の端を上へあげて、短く納得すると、急に何かを思い出したように話し始めた。

「写真の男に似ている奴なら、見たことあるぜ。あのギャンブル酒場にいるはずさ」

路上生活者は、ゴミと土で汚れた指で、ある方向を指さした。

「あそこは・・・・」

リスクは、目を細めて男が指す方向に目の照準を合わせた。

「表向きは酒場さ。普通のな。だがな、そんな当たり前なことを知ってどうする?国の認可なんていい加減なものさ」

「しかし貴族の俺が、この事実を知ったら、お前さんもただじゃすまないぜ?」

「いや、大丈夫さ」

「!?」

何が大丈夫なのか、主語も目的語もない路上生活者の言葉に、リスクの心は動き、揺らめきを覚えた。

「お前は本物の貴族じゃないな・・・」

「・・・・・・・・・・・」

男のすべてを見透かした目に、リスクは、後ろに半歩、後ずさった。

「・・・・・・・・・・」

「同じニオイがする。俺とお前は」

「ふざけるなよ。金貨を返してもらうぜ?」

リスクは、腰に差していた騎士団長用の護身剣を抜こうと鞘に手をかけた。むろん、剣を抜こうとする『芝居』ではあるが。

「す、すまない。俺は、これで帰るよ。うん」

みせかけの殺意を身に纏ったリスクを間近で感じた路上生活者は、自分が本当に喋りすぎたことを反省して、しっかりもらった金貨を握りしめ、リスクの前から立ち去っていった。

「・・・・・チッ・・・・・・」

リスクは、帰る家も『おかえり』を言ってくれる家族もいない、男の背中を、いつまでも憐れみの目で見つめていた。


「くそっ!」

そこは、本当に小さな店だった。ダミーのドアを開ければ、約五人ぐらいが座れる酒のボトルが逆さまに並んでいる木製のカウンターと、厨房。そして円形のテーブルが四つにその付属品としてイスが十六個。天井には汚れたプロペラが何のために回っているかわからないまま、しずかに汚れた店内の空気を循環させている。し、店の中は少し薄暗い。その酒場の奥にあるのは隠しドア。そこを隠し合図を言って開けると、小さな小部屋で、いつも見知らぬ男たちの小さなうめき声が、良く聞こえてきた。

「兄さん、お酒、足りないんじゃない?注文する?」

そこは誰も入れる部屋ではなかったし、誰でも入れる部屋でもあった。部屋に入れる条件は、ただひとつ。お金を持っているか、否か、ただ、それだけであった。

「酒はいい。それよりもさっきのイカサマだろう!?俺は見てたぞ!」

ろれつの回らない赤い顔をした男が、タキシード姿の蝶ネクタイのギャンブルの支配者兼店員らしき男に文句を言った。この部屋では、お酒をまず注文しないと『ゲーム』に参加できないシステムになっている。だから、賭けるお金以外にも、多くのお金が必要だった。

「負け続けているからって、根拠のないイチャモンは止めてください。これ以上続けるなら、追い出しますよ?」

「俺は負けてねーよ。お前こそなんだ!?」

会話が成立しているのか、していないかのレベルでの争いに、何の意味もなかった。

「騒ぎは止めてください。これ以上はお酒を注文していただかないと」

「お金ならあるんだよ!今月の五日に、支給されたからな」

「銀行からですか?」

店員らしき男は、酔っぱらいに質問をぶつけた。

「ちげーよ。市役所からさ」

「?」

市役所とお金がまっすぐ結びつかない店員は、額に何本も皺を作って困惑した。

「俺はな、貧困者だ。貧困手当として市役所からお金が入ったんだよ!」

「ああ」

酔っぱらいの意味する事が、ようやく理解できた店員は、持っていたグラスをテーブルの上に置いた。

「それじゃあ、じゃんじゃん飲んでくださいよ。お客様」

グラスに大量の黒ビールを流し込む店員は、ビジネス用笑顔を酔っぱらいに対して用意した。お金を持っていると知った店員の態度が、180度変わっていくことを、誰も責めることはしない。

カランカラン

そんな音が鳴れば、店員は、入り口のドアが開いたという合図を知ってドアに笑顔を向けた。

「ご新規のお客さんですね?わかります」

「なあ、入ってもいいかい?」

また新しい客が、店長の仲介を経て部屋のドアからお酒をもってやって来た。どうやら見たことない顔だから、ご新規だと、店員はすぐに理解できた。

「もちろん。お酒を注文してくれるならね」

店員のビジネス用の笑顔は、まだ続いていた。

「気前いいね。繁盛してる?」

「そりゃあ。もう」

「ここ、席、空いているかい?」

さっき話していた酔っぱらいの隣の席に、新しい客が座ろうとしていたので、店員はすぐに慌てた。

「そこは止めといた方がいいですよ。空いている盤場なら他にもありますから」

何故、今来た客は、他に誰もいない場所があるのに、わざわざ、見ず知らずの他人が横にいる場所に来るのか、わからなかった。他人と競い合うゲームは、もうすでに終わったのにもかかわらず。

「お兄さん、お兄さん、俺の酒、飲む?」

新しく入って来た客は、隣の席でテーブルの上に右腕を突っ伏して、半分、寝ていた酔っぱらいの客に声をかけた。

「ああ?」

酔っぱらいは、さっきまで見ていた楽しい夢から強制的に起こされたことに半分腹を立てて、そんな声を出して、礼儀を知らない新しい客に嫌な顔を向けた。

「!?」

「・・・・飲むんだろ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・」

酔っ払いは、隣に座った人間の外見を見て、絶句していた。

「・・・ルシファー・・・お前・・俺の酒・・飲むんだろ・・・・?」

リスクの今まで聞いたこともない、とてつもなく低い声が、この闇ギャンブル場で、静かにルシファーの心に響いていた。

「リ!」

「おっと。名前はそれ以上、言うんじゃないぞ。今日、俺は私用で来てるんだぜ?」

ルシファーの口を塞ぐように、リスクは、自分の手をルシファーの口を上に被せた。いつのまにか貴族の服から私服に着替えたリスクは、店員から貴族として怪しまれることはなかった。

「!?」

「とりあえず、酒を飲めよ。今日は俺のおごりだ」

リスクは、まだ酒が残っている、ルシファーのグラスに、自分が注文した酒を勢いよくそそぎ込んだ。注がれたグラスの中は二つの酒が混じり合って、酒の色は黒色に変色し始めていた。

「・・・・・・・・・・・」

リスクの突然の登場で酔いが一気に醒めたルシファーが、不味そうな目で、そのグラスに入った黒っぽい液体を見つめた。

「・・・ふさげるなよ」

ルシファーの本当の第一声は、相手に対しての言いようのない、怒りであった。

「ああ?」

リスクは、ルシファーの上からの物言いが、癇(かん)に障った。

「帰れよ」

短く簡潔に、ルシファーは、リスクを拒絶した。

「お前と話すことなんかないぜ。俺は」

酔いが完全に冷めたルシファーは、お酒を飲む気分にもなれず、つまみのポテトの端を、意味もなく歯で噛んでいた。

「俺は、あるぜ?」

リスクは、ルシファーの心の中に、一歩、自分の足を踏み出した。

「なんだよ?」

「お前、税金、払ってないだろ?」

「!?」

こんな人間の欲望を具現化した場所で、こいつは何を言い出しているのかと、ルシファーはリスクに怒りを買った。かつて魔王という共通の敵を倒した仲間の顔をルシファーは『化け物』でも見るような目で、見つめたのだ。

「何を!」

黒の液体が入ったグラスを片手に握りしめて、ルシファーが叫ぶ。

「俺は知ってんだぜ?税金も払わずに、お前がギャンブルに金、使ってんの」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・それも・・・半分は国の税金でさ・・・・」

歯を食いしばって、リスクに反論も出来ず、ルシファーは、黙って茶色に変色した汚い店の床をじっと眺めていた。ぶつけようのない怒りで体中の血液が自分の頭に上ってくるのがわかる。だが、その怒りを振り下ろす場所は、今の彼には、なかった。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・ルシファー・・・違うか・・・?」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・早く払えよ・・・」

畳みかけるように言葉を自分の上に積んでいくリスクの顔を、鬼のような面で見つめるルシファーは、人間だった。

「・・・・・・・・・・・・・」

「お前が汚れていくの・・・見たくないから・・・さ」

「!?」

自分への哀れみ、蔑視、同情などの負の感情すべて含んだ、リスクの言葉がルシファーの身体にぶつかった時、とうとうルシファーの怒りが、頭の中で爆発した。

「ふざけるなよ!お前!こっちが何もいわずに黙っていれば、いろいろあることないこと喋りやがって!」

ルシファーは衝動的に、手の中にあったグラスに入っていた黒色の液体を、リスクの上にかけた。

「!?」

「!?」

リスクの高価な私服が、ルシファーのかけた黒い液体まみれになって、二人は、一瞬にして我に返った。

「お客さま!」

店員の悲痛な声も二人の耳には、一切、届かない。ルシファーは、自分がこんなことをするつもりはなかったのだと、少し後悔していたが、もう遅かった。相手は待ってはくれないのだ。

「ルゥシィファアアー!」

地の底からもの凄い低い怒号を放つリスクの怒りの顔を見て、ルシファーはもう、お互いが、歩み寄れない場所にいることを悟った。そして、こちらもケンカをやってしまった以上、仕方がないことも理解していた。

「誰が汚れてるんだ!汚れているのはテメーだろ!!」

「なんだと!?嘘を言うな!」

ルシファーも、負けずに、怒りの顔を作らざるを得ない。

「リスク!お前だってお金もらってるんだろう!!」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・ああ!?ふざけてんのか!?」

一瞬、反応が遅れたことを、ルシファーに感づかれたどうかは、次の相手の反応を見るまで、リスクには、わからなかった。

「テメーの噂は、こっちだって聞いてんだよ!リスク侯爵殿!」

「でたらめ言うな!」

リスクは、さっきから同じ意味の言葉しか言っていない自分を、少し冷静な部分で、見ていた。

「噂は噂だぜ!お前が賄賂をもらったって噂。お前は、俺たちと同じじゃねーか!」

ルシファーは、正確に噂の内容まで知らないらしいということが、リスクにはわかった。

「・・・ルシファー、俺がお前を今ここで、牢屋に入れることもできるんだぞ!?」

「!?」

リスクは、相手の口を封じるために、最後に自分が貴族であるという権力のカードを切った。その効果は絶大で、ルシファーは、黙ることしか出来なかった。

「・・・・・・・・・・」

「わかったか?早くこんなことは止めて、税金を納めるんだな?お前は貧困手当をもらっても、税金を納めなきゃいけない身分なんだ。それを分かれよ」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・なんだよ・・・?」

ルシファーが、黙ってリスクの目をじっと身動きせず見つめてくることに、リスクは少し恐怖を感じていた。

「リスク」

「・・・・・・・・・」

「お前、俺たちとの約束・・・」

「・・・・?・・約束・・・・?」

約束という言葉は、今まで老若男女、いろんな人間と山ほど交わしてきた。だが、誰と、どの約束を交わしたかまで、リスクは、当然、いちいち覚えているわけがない。

「何を?」

「・・・・・・・ハッ・・・・・」

リスクの解答に、ため息と落胆を同時に混ぜてきたルシファーを、リスクはいちいち怒りを覚えた。

「魔王を倒したら・・・お前・・・自分は貴族になれるって・・・そうしたら・・・下級市民のために、虐げられた人たちのために政治をするって。みんなが・・・お金があっても・・・なくても・・笑って楽しく暮らせる。そんな社会にするって」

「・・・・・・・・・・・・・・」

確かに、青臭い頃の俺自身が、そんな約束をしたような気がする。あの時は若さだけで、何でも出来ると粋がっていた俺が、根拠もなくそう言った。未来は明るく、どんな願いも、どんな金も自分の力で切り開けると思った頃の俺が、あのころのお前たちに約束をしたんだ。いい加減な約束を・・・

「・・・覚えてないな・・」

唇から絞り出すように、リスクはそう、ルシファーに答えた。

「そうか・・・そう・・・だろうな」

納得と諦めと、失望が入り交じったルシファーの声が、リスクの耳の鼓膜を、静かに振るわせた。リスクは、今日、いろんなものを見えない間で沢山、失ったような気がした。

「・・・マラーナはどうしたんだ?」

「!?」

リスクの肩が、マラーナという単語に反応し、小刻みに跳ね上がった。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

何もマラーナのことを話そうとしないリスクを見て、ルシファーの目は、鋭かった。

「・・・会ってないのか・・?」

「ああ・・・あのパーティ以来な・・・仕事が忙しいから・・・お前の方が知っているのかと・・・」

リスクの歯切れは、良い方ではなかった。

「・・・お前・・俺が知っているわけないだろう!?」

ルシファーが、当たり前だという声をあげる。

「・・リスク・・・お前は知ってるだろう!あの日、マラーナが自分の部屋に朝まで戻ってこなかった意味を・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

なんで、そのことをルシファーが知っているのか、知り得たのか、リスクの頭の裏に、冷たい汗が、流れていた。

「・・・・・マラーナこと好きだったんじゃなかったのかよ!?」

言ってはならない壁が、一瞬にして、今、崩壊していた。魔王を倒す以前から、三人の中に静かに流れていた、何ともいえない空気感や重苦しい雰囲気の正体。揺れるマラーナの心と、恋を諦めた男の思いを、誰も口に出しては、いけなかった、のに。

「・・・・・・・・・ちげーよ!」

という言葉しかリスクには出てこなかった。なんと単純で簡単で、短い言葉の軽さよ。こんな言葉のレベルで、相手が納得するわけもないのに、自分の教育レベルの浅さが、ここに出てきた。貴族という肩書きがついたのに、ゴロツキのような言葉遣いしかできないというコンプレックスは、永遠にリスクを苦しめるだろうと、リスクは思った。

「マラーナのこと・・・お前の方が好きだったんだろう!?ルシファー!俺は知ってたぞ!」

子供のように反発し、相手をからかうことで、自分への疑惑の矛先を変えさせようとする浅はかな知恵が、リスクの口から突然、飛び出した。

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・?・・・・・・」

しかし、そんなリスクの浅知恵に、相手が正直に反応するとは、リスクにとって予想外であった。ルシファーは、リスクの言葉を否定も肯定もせずに、黙ってリスクをにらみ続けてきた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・えっ?・・なに・・・お前・・・?」

リスクはルシファーの沈黙に、長くは耐えられそうになかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・お前・・・変わったな・・・・」

ルシファーは、リスクの言葉には反応せず、違う話題をふっかけた。

「変わってねーよ」

リスクは、とりあえず、否定した。

「いや、俺も・・・お前も・・・あの時のまま・・・何も知らないころのままじゃ・・いられないんだな・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

リスクは、ルシファーが架けた言葉の梯子(はしご)に登らなかった。同意も賛同も同調もせず、じっとルシファーを眺めた。そして、薄暗い部屋の中で時計らしきものを眺めた。この薄暗い部屋の中では、たとえ、今がお昼だとしても、夜の空間が、どこまでも広がっていたのだった。

「・・・言いたいことはすべていった。ルシファー・・・俺はお前が税金をちゃんと支払ってくれさえすれば、どこで何をしても、何も言わないし、何も、しない」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・俺は・・・・お前が怖い・・・」

ルイファーは、小さい声で、呟くように言った。

「俺は・・・俺だ・・・これからも変わらないし・・・変われない・・・マラーナも・・・お前も・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・ルシファー・・・お前たちは・・・俺にとって素晴らしい・・・『友達』だ・・・・」

「・・・・・・・・・・」

ルシファーは、リスクの言葉に反応しなかった。

「だが、もう・・お前たちに『会うこともない』・・・これっきりだ・・ルシファー・・じゃあな・・・マラーナにもよろしく言っておいてくれ・・・」

「何を?」

「・・・・・・・・・・・」

ルシファーは聞き返した。

「・・・ごめん・・・と言ってくれ」

「・・・・・・・・・」

ルシファーは、リスクのたった『三文字』の言葉を聞いて、二人の間に、『何かが』起こったことを、すぐに悟った。

「・・・・・・・・・・」

「ルシファー・・・じゃあな。お前・・絶対に死ぬんじゃねーぞ」

リスクのルシファーへの最期の言葉は、貴族とはほど遠い、下級市民のころの言葉遣いに、近かった。リスクは親友に別れの挨拶をすると、闇ギャンブル場を、一人で出て行った。

「・・・・・・・・・・・」

ルシファーは、最期まで、かつての仲間だった男の背中を、黙って見つめていた。途中で、ルシファーは闇の中で浮かぶ、リスクの背中に、鬼のような顔が張り付く幻覚を、見ていた。


ルシファーは、リスクと会った日のその翌月、滞納していた下級市民税をすべて役所に納めた。

彼が、どんな気持ちの変化があったかリスクにはわからなかった。自堕落な自分自身を見つめ直したのか、それともリスクへの対抗心なのか、それは結局、本人に聞いてみないとわからないことであった。だが、これでひとつわかったのは、リスクのバスグ市民税収官から依頼されたイレギュラーな任務は、ここで終わりを迎えたということ、だけである。


『リスク侯爵殿、この度は、ありがとうございます。無事、新しい部下の採用も終わり、税金の滞納リストも更新することができました。なお、引き継ぎも順調です。来週にでも、一度、お食事でもいかがでしょうか?女を買える店で、いいお店を知っています。あなたなら、どんなことをしても、許されるでしょう。あなたは私と違って、顔だけでなく、お金と権力と名声を手に入れつつある。正直、私はあなたがうらやましい。すべての未来が順調なのですから。今回の件で、また出世なさるのも、お間違いないでしょう。是非、お返事ください』

そんなバスグ市民税収官からの直筆の手紙を、リスクは自分の寝室で裸のまま、じっと読んでいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

たかだが下級市民たちの税金の徴収率を、多少、上げたところで、あの国王が喜ぶとも思えなかった。でも、どんなときでも他人から感謝されることは、悪い気はしない。

「・・・ウゥン・・・・・」

横で同じく裸で寝ていた秘書のフィルーナの頬に寝室に置かれたロウソクの灯が揺らめいていた。フィルーナの若さと、白く滑らかな弾力のある肌の美しさは、リスクを一瞬で惑わせるのに、十分な揺らめきを持っていた。一緒に仕事をしていて、彼女の身体『すべて』から漏れる自分への好意に、リスクは最初、しばらく気がつかないフリをしていた。リスクの秘書としての仕事を日々、完璧にこなしながら、時々、隙をつくって、普段から考えられないようなミスをするときが彼女にはあった。その際、リスクがどんな反応をするのか、彼女はじっと見ているような気がした。ここで彼が私に好意を持っているか否かを見定めて、彼がないようなら、他の騎士のところへ行くつもりだったかもしれない。わざと見せてくるような、黒い透き通る制服の隙間から見える、胸の谷間に、リスクの理性は、しばしば仕事中に吹き飛んでいた。そして彼女の合格点に達したあと、リスクの自宅で、アリサが来ない合間をぬって、リスクはフィルーナの肌に、自分が溺れていくのを止められなかった。フィルーナは、アリサ王女と自分の関係を知っていたかもしれないし、本当に知らないかもしれない。だが、わかっていても『来る女』かもしれなかった。

「・・・・・・・・・・・」

彼女も下級市民出身で、学歴がなくても貴族の専属秘書まで成り上がった、上昇志向の強い女だった。心のどこかで下級市民の俺に共感したのか、貴族である俺にしか興味がなかったのか。どっちにせよ、この肌は、今、確かに俺のものであった。

「・・・・・起こしたか・・・・」

手紙から目の照準をそらして、リスクがフィルーナに声をかける。

「・・・・うう・・・リスク様・・・?」

うっすら、目を開けて、裸のままのフィルーナがベッドの白いシーツの中でうめく。

「起きなくていいんだぞ。まだ、夜は明けてない」

赤ん坊をさとすように、リスクは優しい声で言った。

「何を読んでいらっしゃるのですか?」

リスクが眉をひそめて読んでいる手紙の内容が気になるフィルーナは、手紙をつかもうと左手を伸ばした。自分の身体は、リスクに密着させたまま。

「お前は見なくて良いよ」

「もう・・・・・リスク様は以外と意地悪なんですね」

怒った顔も、リスクにとって不快ではないから、彼女を抱けるのだ。

「それよりも、この前、お仕事で失敗した件、許してくれる?」

急に、自分との心の距離を縮めてきたフィルーナに、思わず、リスクの下が熱く反応した。

「・・・・なにが・・・?」

意地悪っぽく、リスクは、とぼけてみせる。

「もう!あなたがあんなに怒ること、初めて見た・・・怖かった・・・」

「ごめん・・・ごめん・・・」

「でも・・・すぐにフォローしてくれて・・・私のこと見てるって・・・お前には期待してるっていってくれて・・・嬉しかった・・・」

フィルーナはリスクの腕に、自分の胸を押し当てた。

「・・・あの時・・・私のことお前って・・呼んでくれたの・・・ちょっと・・きゅんとしたよ」

「・・・・・・・・・・・・」

本当に腹が立ったから、とっさに名前ではなくお前と呼んだことを、フィルーナは、男らしいと受け取った。そんな女の好意的な感情というやつが、リスクは予想外におもしろかった。

「今度は気をつけろよ。お前しか、俺の秘書は出来ないんだからな」

リスクは、そう言って、フィルーナの返答も待たずに彼女の唇を塞いだ。そしてまた二人の長い夜が始まろうとしていた。リスクの指に、さっきまで握られていたバスグ市民税収官からの手紙と一緒に同封されていた小切手が、音もなく、床に落ちていった。その存在を、見たものは、誰もいなかった。リスク以外には。


「・・・・・・・・・・・・・」

時計は十四時を回り、城の中にある百人以上が収容できる広い食堂でひとり、リスクは遅い昼飯を食べていた。いつもは秘書のフィルーナが用意してくれた軽食を、リスクに割り当てられた専用の部屋で食べるのが日課であったが、フィルーナは席を外しており、自分で料理をすることも、買い出しに行くのも面倒なので、たまには城の食堂で食事をとることにした。侯爵特権で食事は無料で食べられる上、栄養のバランスもカロリーも計算してある料理は、リスクの好みではなかった。彼はそれを薬だと思いながら、黙って皿の上にあるご飯の山を、自分の口へ静かに運んでいだ。

「・・・・・・・・・・・・・」

周りで食事をしている人間に、視線の照準を合わせるリスク。食堂の中では、二・三人の貴族や商人、上級市民のグループが、配膳係りの人から料理を木製のトレーにのせて、それをおかずに笑いながら話していた。

「・・・・・・・・・・・・・」

ひとりで、この食堂でご飯を食べるのは、本当に久しぶりだった。話す友人もなく、愚痴を言える友も作らず、成り上がりの為、同期の貴族もいないリスクは、ただ、黙ってご飯を食べていた。

「・・・・・・・・・・・・・」

自分が出世すればするほど、彼は孤独だった。気を許せる相手を作ることもせずに、下の階級の貴族をからかったり、後輩や部下に本気じゃないダメ出しや一般的な説教、ミスの指摘をして、時間を潰す日々が続いた。

『俺はな、お前のためを思って、怒っているんだ!こんなに怒ってくれる相手は、俺以外に、いると思うか!?』

何度となく、礼儀を知らない年下に、同じ説教の言葉を使ったことがあった。だが、本心で年下が出世して欲しいとは、一度も思ったことはなかった。自分がどうしたら、もっと上に上がれるか、貴族として成り上がれるか、それ以外のことを、考えない日は、なかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

自分が孤独なことは仕方がないと思いながらも、リスクは、寂しさを感じていた。自分の成功を分かち合う仲間がいてほしいというのは、自己中心的だと思いながらも、出世しても誰にも賞賛されず、敵だけを身内に増やすこの生き方に不満がないわけではなかった。自分の愚痴やこの国の不満、貴族の悪口をアリサやフィルーナに言うわけにもいかず、彼は、昔の仲間の顔を少し思い出しながら、自分からさよならを告げた相手に、自分の都合のいいときだけ慰めて欲しいという自分の身勝手さを無理矢理、自分の身体の中に、閉じこめて平静を保っていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

料理のおいしさも感じなくなってきたのは、長い時間をかけて食べているせいか、自分の孤独から来るものか。そうひとりで思っていると、遠くから、秘書のフィルーナが、見たこともない顔をして、走ってこっちへ来るのが見えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・フィルーナ?」

フィルーナが自分の元へあんな顔をして、走ってくることは、過去に二三度、あった。それは、大抵が自分にとって何か良くないことがあって、その尻拭いや、責任を負わされたり、解決策を考えろといった難題の時であった。だから、フィルーナの顔を即座に見たリスクの身体は、石のように硬直化し、身体が自然と臨戦態勢に移行し始めていた。

「フィルーナ!?どうした?」

「リ・・リスク様・・・・ラダム国王様が、今すぐリスク様に不死鳥の間に来いと」

「・・・国王・・・・?」

今度の失態は、超ド級のものに違いなかった。リスクは黙って、一度、フィルーナに頷くと、最低限の身なりを整えて、不死鳥の間に歩き始めた。



「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

何度、顔を会わせても、一向に慣れるものではなかった。それぐらいの威圧感と威厳とオーラを内包していなければ、つとまらない仕事や責任がこの世にあったことは、間違いなかった。ラダム国王と正面から対峙したリスクは、国王に睨みつけられた自分自身の、体中にあった生気が、床から抜け出ていくことを、止められなかった。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

国王との沈黙はさらに、続いていた。この辛さは、魔王と対峙したときの、その比ではない。逆に、リスクにとって見れば、今、目の前に座っている男こそが、魔王そのものではないか、魔王の生まれ変わりではないかと見間違えるほどである。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・こっ・・・・・国王・・」

「リスク侯爵!」

自分の言葉を消し飛ばす程の国王の一喝が、不死鳥の間の隅々に響きわたれば、部屋の中で石のように動かず、直立不動のポーズをしていた貴族たちの身体にも、恐怖と不安の成分が生まれ始める。ラダム国王は、この城で、いやこの国で絶対的な権力を持っているのは、子供ですら知っていることであった。その国王が、この場で、リスクを自分の気分が悪いと称して、殺すことも出来る程の、力である。リスクが身体に内包している勇者の力とは別次元の、この国において絶対的な唯一無二の正義の力である。それが、今、ここで発動することを、リスクは、恐れていた。

「はい!国王様!私はここにおります!」

意味不明な返事を返したリスクは、しまったと思ったが、口からいってしまった以上、どうにもならないことは、わかっていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「娘・・・いや・・・アリサ王女・・・がな・・・」

「へ?」

国王の声量が、微妙に下がったことを、リスクの意識は見逃さなかった。

「アリサ王女が、私に何かご不満が・・・・申し訳ありません」

なにも心当たりがなくても、先に相手に謝罪することで、相手の怒りの溜飲を少しさげる狙いが、リスクにはあった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

ラダム国王は、口元を何度も歪ませながら、必死に次に言葉をひねり出すために、目の前の沈黙と戦っていた。

「アリサが・・今朝・・・体調を崩した・・」

「!?」

最近、疲れやすく眠いと、よくリスクの家で愚痴っていたのを、リスクは、今、頭に思い浮かべて『しまった』と思った。自分の記憶のあいまいさを呪い、自分の家まで、見つからないように隠れて足を運んでくれたことにすっかり依存しきっていた。彼女の精神的なストレスと疲労を、自分は今まで感じたこともなかった。それだけ、自分の感性が鈍っていたのだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

再び、二人とも目を合わせながら、しばらく黙っていた。二人とも、相手が次になにを言うのかを、待っていた。先に、迂闊な言葉を言えば(特にリスクには死が待っていることを、この場にいる国王以外は、知っていた。

「吐き気とめまい、そして寝ても、寝ても眠いと何度も言っている・・・・」

「・・・・・お医者様のもとに・・・赴かれたのでしょうか・・・?」

リスクは、国王の下の根っこの感情の部分を刺激しないように、ゆっくりと優しい言葉で撫でた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

国王の予想外の沈黙に、リスクの神経の糸が切れてしまいそうだった。相手は俺をどうしたいのか、が、わからない以上、相手の言葉以上の証拠を探すしかなかった。国王の態度はすでに、自分を排除したいという意志しかリスクは感じなかった。だから、さっきから体中から冷や汗しか出てこないのだ。こんなに冷たい水が、自分の身体のどこに溜まっていたのか。リスクは、こんなときに、そんなどうでも良いことに脳味噌を使っていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・あ・・・・・・・・・・」

「!?」

リスクも、国王の単語を反射的に口に出そうとして、口をつぐんだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・子供・・・・」

「え・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・アリサに・・・子供が・・・」

「そうですか・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・って・・えええええええええ!?」

反射的に国王の言葉に返事を返していたリスクは、ことの重大さを頭が認識するまで、数秒の時間がかかっていた。

「・・・・・・妊・・・娠・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・ってこと・・・だ・・・・・・・・」

「!!?」

とっさに、自分のあの日の夜のことを、思い浮かんだリスクは、自分のしてしまった、最初で最期のあやまちの重さで、胸が一杯になった。

「・・・もっ・・・申し訳ありませんでした・・・」

何よりも先にリスクは、全身全霊をかけて、国王の前に頭を、胴体を地に擦り付けて、そして差し出して、謝罪の意志を示さなければならなかった。元は下級市民出の男に、自分の大事な娘を汚された父親の怒りを、一刻も早くすべて鎮めるために、謝罪以外の『誠意』をリスクは、まだ知らなかった。

「・・・・・謝罪は・・しなくていい・・」

「えっ!?」

謝罪以外に、自分の責任の取り方があるのかと、リスクの身体は、王の言葉で揺れ動いた。まさかやっぱり『死』なのか。王の気分で、今、ここで首をはねられるか?謝罪をしても、もう、何もかもが遅かったのか。リスクの恐怖という汗は、夏でもないのに、体中の汗腺から溢れ出し、鎧や服に汗ジミを作っていた。あの日、アリサの柔肌を感じたことが、そんなに・・・死ぬほどの罪だったのか・・・・

『俺は・・・まだ・・・・何もしていなんだぞ・・・?』

王政による理不尽な死など、過去の歴史で山ほどあった。だが、根拠もなく自分がこんなところで死ぬなんて、夢にも思っていなかったリスクは、迂闊だったのだ。

「リスク・・・侯爵・・・いや公爵・・・・・・・」

「・・・・・・・・・えっ・・・・・」

こんなところで自分が貴族として一階級、階級があがることに、何の意味があるのだろうか?王の言葉に余計に頭が混乱し始めたリスクは、ニ度目の謝罪を口にしようとしたとき、それを遮ったのは、国王のたった一つの叫び声だった。

「今日、ここに、宣言する。リスク公爵を、アリサ王女の配偶者として、王族の一人として迎えることを!」

「!!?」

その絶叫の真の意味を理解するまで、リスクは五分ほどの、時間がかかった。また、この場にいる王以外の人間も、リスク以上の時間をかけて、王の言葉の真の意味を理解できた。それほどの強烈な宣言であった。下級市民を王族にするという前例は、この国の法律には、過去の一度もない。だから、異例中の異例なのだ。

「・・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・」

リスクは王の言葉の意味をはっきり理解したと同時に、安堵していた。まだ、この場で王に殺される危険は、なくなったということだ。今日は、それだけでいい。リスクは、自分の周りで唖然とする貴族たちの顔を見ずに、身体の力がすべて抜けると、その場にへたり込んだ。緊張があまりにも長時間続きすぎて、身体が休みを欲していた。それに頭で考えることが多すぎて、脳味噌の処理が追い付かなかった。

「頭が痛い・・・薬をもらえるかな・・・今日は・・・」

貴族がこの部屋で、王の前でいきりなり座り込むような行儀の悪い行動をとれば、即座に牢屋行きだ。だがしかし、今日、王族になったリスクにとっては、あまり関係のないことだった。


それは、とても、素晴らしいことであった。


「妹のアリサとの結婚、おめでとう」

「ありがとうございます」

「ありがとう」

第一王子のエリードは、王の宣誓があったその日の午後に、リスクやアリサたちと城の中の外にある、太陽の光が指す安らぎの間で、テーブルを囲んで、談笑をしていた。

「紅茶は飲むかい?貿易協定を結んでいる隣国から取り寄せたものさ。味は保証するよ?」

エリードは、リスクが答えを返す前に、テーブルの上に置かれていた花柄の刺繍が入った紅茶のカップに、ティーポットから茶色の液体を目一杯、注いだ。

「エリード様・・・いえ・・・私はまだ・・仕事が残っておりますので・・・私は・・・」

「様をつけないでくれよ・・・もう・・(義弟になったんじゃないか・・リスク」

もう、貴族の階級名を飛び越えて、エリードはリスクを、名前のまま呼び始めた。

「・・・どうも・・・慣れないもので・・申し訳ない・・・です・・」

年下の兄という、この意味不明なエリードとの関係は、死ぬまで続くのかという思いが、リスクの視線を、床に落とさせた。王族になったばかりのリスクの目の前には、一つ年が下のエリードがにこやかに笑っている。どうみたって新参者の自分が、年下の次期王位継承者に、頭が上がるわけが、ないのだ。

「兄さん、やめてよ!まだ彼が困ってるじゃないの・・・」

アリサが、エリードに詰め寄った。その行動を見て、リスクは自分の代わりに義兄に発言してくれるアリサを、頼もしく思った。

「いえ・・・アリサ様、こんな今日に仕事を入れている私が悪いのです」

自分を思いっきり下に下げて、エリード、アリサの両方の顔を、同時にたてることが出来たリスクは、心の中で、そっと微笑んだ。

「ちょっと、兄さんの前だからって様とかつけないで。いつもアリサって呼び捨てじゃないよ」

「・・・・・・・・・・・」

黙って苦笑いの口元をつくるリスクを、じっと傍で見つめるエリードの、切り裂くような二つの眼差しに、リスクは、しばらくして気がついた。

「・・・・・・!?・・・」

リスクはエリードの視線を自分の視線でよく混ぜて中和しようとしたが、義兄の圧倒的な眼差しに、先にリスクの精神がギブアップをし、視線の照準を外した。

「・・・リスクはまだ、自分が王族という自覚がないから、僕らを特別扱いしているみたいだな・・・だが・・・徐々にそれを止めてくれると嬉しい・・・じゃないと・・・僕が父に怒られる」

鋭い眼差しを、胸の奥にしまい込み、柔和で優しい笑顔を取り戻したエリードが、リスクを優しく包み込むように諭す。

「善処します・・・いえ・・・私も王族として・・アリサの夫として・・国のために、そして国王のために、この私の力とすべての命を捧げる所存です・・・」

「・・リスク・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

リスクの宣言を聞いて涙目になるアリサと、リスクのその宣言を聞いて鋭い眼光を復活させるエリード。二つの対照的な反応を見せる兄妹を前に、目を伏せるリスクは、これ以上余計なことを言わないように黙っていた。

『・・・・なんだ・・・・?気のせいか・・・?』

リスクのその杞憂は、胸の奥にくすぶったまま、日の目を見る機会はないと思っていた。だがそれはしばらくして、自分の皮膚を通して、下界の世界に飛び火し、この現実世界に出ていくのを、止めるものは、いなかった。


この国すべてを巻き込んだ、アリサとリスクの結婚式は、言葉にできないほどの豪華絢爛な宴であった。結婚式は、三週間以上も城の中で続き、あまりにも長引いたため、国家機能の一部が麻痺する程のものであった。様々な人間の贈り物、催し、料理が、アリサとリスクと、もうひとりに。これから生まれて来るであろう子供に向けられた。二人とひとりの夫婦は、この世のすべての幸福を受け止めるには、あまりにも自分の身体が小さすぎた。楽しさと疲労が限界に達し、寝ているのか起きているのかわからない状態で、ようやく二人は、長かった祭りを終えると、自分たちの自宅へたどりついた。

「ハハッ・・・まさか・・これほどとは・・ね・・アリサ・・・大丈夫だった?」

「うん。平気だよ」

アリサの細く白い指を、自分の指で絡ませ、自宅のリビングにあるソファーへ誘うリスクは、自分の疲労が最大限、溜まっていても、アリサへの配慮を怠ることはなかった。だが、その優しさはおそらく、結婚前だけであろうことも、リスクは薄々、気がついていた。自分の疲労を回復させる本能を無視して、アリサへ逆回転させる力は、どうやら長くは続くまい。今は、そんなことは忘れて、永遠の愛と、産まれてくる子供を祝福しようと、リスクはまっすぐ思っていた。

「でも本当につかれたー。足の感覚ないよー」

アリサも、大分、リスクに慣れたせいか、初めてあった印象とは違う、荒い言葉を口にする機会が増えた。清楚で礼儀正しくて、知性があっておしとやかという当初のイメージは、以外と酒好きの大酒のみで、隠れてタバコを吸っているというマイナスイメージがあって、初めて成立しているのだとリスクは、後に知った。アリサがたとえ、それをしているからといって、リスクはアリサを嫌いにはならない。王族として二十四時間、いつでも高貴に振る舞わなければいけないというのは、自分には理解できない重圧とストレスがあるだろう。そのための息抜きならば、多少はしかたがないのだ。それに、そんな中でも下級市民出身である自分を好きでいてくれたことが、本当のところ、重要だった。

「リク、今日の、第五十四次祝賀会の席で、変な女の人が、私を睨みつけてきたの知ってる?」

「!?」

コップに入った一杯の水を、口に含もうとした直後に、アリサからそんな言葉をかけられて、リスクはあやうく、服の上から水をこぼしそうになった。

「なんだよ。急に」

リスクは、口に付いた水滴を、手で無造作に拭いた。

「だって、気持ち悪かったんだもん」

「何かされたの?」

リスクは、冷蔵BOXから野菜ジュースの入った瓶を取り出すと、アリサのためにそれとコップをソファーの前の机に一緒に置いて、空のコップにゆっくりそれを注いだ。

「何にも。ただ、顔はよく見えなかったけど、ちょっと離れた場所から何も言わずに睨んでくるから、気持ち悪くて・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・リク・・・心当たりある・・・?」

アリサは、リスクがコップに入れてくれた赤色の液体を、感謝を挟み込みながら口に含んだ。野菜ジュースが血のような色になるのは、トマトの成分が強い性だ。

「・・・・・・・・・・・・・」

心当たりのある女性は、実はリスクは山ほどいた。だが、それをアリサに言うわけには、絶対言えない。秘書のフィルーナは、先週、適当な理由をつけて解雇させたし、ほかの女にはとりあえず、お金を渡して別荘を追い出させた。

「・・・・特に・・・ないかな・・・」

リスクは、そう、言った。

「そう」

アリサは、野菜ジュースを飲み干して、短く言葉を切った。それ以上、追求してもしょうがないという諦めもリスクに対してあったかもしれない。

「それよりもさ、これ見てよ」

アリサは、大きな鞄の中から、小さな服を取り出した。

「えっ?これプレゼント?誰から?」

「誰だと思う?」

アリサは、初めから正解のわかっている、無駄な会話をするのが、たまらなく好きだった。

「えっ・・と、お兄さんから?」

「違う!次!」

いきなり正解がでなかった安堵感で、アリサの顔は少し笑顔になった。

「叔父さんとか?」

生まれてくる子供のために専用の服を贈り物として買って上げる相場として、リスクの頭の中には、男の顔が次々と浮かんできた。

「全然違う!あの人はそんなマメじゃない!」

アリサは、以外とリスクがこのクイズの正解を言わないことに、腹を立て始めた。アリサが出したクイズに、疲れた身体で乗って上げているだけでも、感謝されてもいいのにと、リスクは早くベットで寝たい気持ちを抑えて、アリサに答えを言い続けた。

「・・・・国王・・・・お父さん・・・」

「正解!」

いい加減に、初めから予想できた答えをリスクはいちいちじらす必要もなかったので、三度目に言い放った。

「正解!でも言うのが遅くない?何でそんなにわからないかなぁ?」

「!?」

カチンと頭に金属音がなった。怒るスイッチが、リスクの身体に走った。

「はぁ?こっちは初めから、わかってましたけど?」

疲労とストレスのピークで、リスクの口調に怒気が混じり始める

「!?」

アリサは、まさかリスクから責められると思っていなかったので、言葉を失ったが、すぐに反論してきた。

「何よ!その言い方?あたしに対しておかしくない?」

「おかしいのはおまえだろ?こっちは初めから答えわかってたけど、クイズをすぐ終わらせるの悪いかなと思ってたから、遠回しにいってやったのに!」

「言って”やった”?」

二段階目の怒りのスイッチが、アリサに入った。

「何?あなたは王族でもないくせに!そんな上から」

「それを言っちゃお終いだろうが!?ああ、そうだよ。俺は下級市民だよ!」

初めに言っていた内容とは明らかに違う、どうでもいいことで、二人は、身体を休めることもなく、喧嘩をし始めていた。

「もういい!これ、誰かにやって!」

アリサは、子供用の服をリスクにつきだして、これ以上話すことはないというカタチで、喧嘩を終わらせようとしていた。

「誰にやんだよ!?やれるわけないだろ?」

リスクは、まだ自分を侮辱された怒りが収まっていないのか、喧嘩越しの口調は相変わらずだったが、アリサから突き出された服は、素直に受け取った。

「そこらの男の子のいる家庭に渡せばいいでしょ?」

「・・・・・・・・・・・」

「なによ?急に黙って・・・」

アリサは、リスクが急に黙って自分が渡した子供用の服をじっと眺めている姿を見て、自分の怒りが冷めていくのを、ゆっくりと感じ始めた。

「男の子用・・・だよな・・・・これ・・・」

「うん・・・そうだよ・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

改めて自分たちが、国王から『何を』望まれているのかが、すべてわかったリスクは、じっと黙っていた。

「・・・・今日は、もう、寝よっか・・・」

「・・・・そうね・・・・」

家庭の中の戦争は終わり、休戦協定が結ばれた二人は、黙って寝室に向かうと、ベットに転がり込んで、そのまま意識を失った。途中、アリサが寝室から抜け出すような感覚におそわれたリスクは、夢か幻かわからない意識の中で、タバコを左手にもったアリサの後ろ姿を見ていた。

「・・・・・・・・・・・」

こんなときでもタバコを止められない背中に、止めろといったらまた戦争が始まりかねないと思ったリスクは、大丈夫だろうという意識の中で、再び、夢の旅に出発していた。



リスクとアリサの間に産まれる子供の性別は、依然としてわからなかった。が、みな、子供が男であることを、無意識のうちに望んでいた。誰も口には出さなかったが、王族としての男子は、一人でも多い方がいいと思う潜在意識が、無意識に二人の元に届いた。戦争や忙殺、下克上などの事件で、いつ誰がいなくなるかわからない状況が続く中、この国では、女が国王になった例はなかったから、自然と男子を生むであろうアリサに対しての期待と重圧は、日に日に大きくなっていった。アリサはそんな中でも、ひとり王族としての責務を果たさなければいけなかったし、それはリスクも同じであった。王族としての振る舞い、教育、国が所有する植民地管理や騎士団長としての任務を兼務する毎日で、一日があっという間に過ぎていった。夜、帰ってきてもアリサと会話をする時間がなく、ご飯も夜に外で済ませて来ることが多くなったリスクは、アリサと話したかった。そんなある日。

「アリサ王女の生まれる子供の性別がわかりました!」

アリサの専属の国家主治医が、国王たちのいる不死鳥の間に駆け込んできたのは、午後二時を回った直後である。ちょうどリスクも国王に報告することがあったので、主治医の青白い顔を、一緒に眺めることが出来た。

「・・・・・・・・早く答えよ。」

国王は、冷静さと威厳を少しもブレさせず、短い言葉で示した。

「はっ・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

リスクも、目の前の医者らしき男が何を言うかを聞き漏らすまいと黙っていた。子供を産むために、いちいちこんなプレッシャーと戦わなければいけないのは、正直つらかった。だから、今回だけでいい。もう、これはたくさんだ。早くこんな王位継承権の争いから、解放されたいという意志が、医者を睨みつける動作へと変わっていった。

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・男の子・・・男子です!」

その直後、不死鳥の間に歓声がわき上がった。リスクはその声を聞いて、ひとつため息をつくと、体中の筋肉のネジがはずれて床に座り込んだ。やはり、そんな不躾な態度をとっても誰も注意するものはいなかった。ふと、目の照準を横にずらして国王の表情を伺うリスク。国王は目を伏せて、相変わらず仮面の表情を崩さなかった。だが、口元の緩みは、押さえられなかった。

「よくやった医者殿。リスクも、ご苦労だったな。これからも、一生、アリサを支えてやってくれ」

医者とリスクの肩を二、三度叩くと、肩から延びたマントを床で引きずりながら、付き添いの女従者とともに、国王は、不死鳥の間から姿を消した。リスクは、そんな国王の背中を見送りながら、一つの仕事を片づけた安堵感で、胸が一杯になった。

「・・・・・今日は、よく眠れそうだ・・・・」

最近、不眠が続いていたリスクは、自分にそうつぶやき、今夜はまっすぐアリサの待つ自宅に帰ることを、決めた。

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