第8話
私が目を覚ましたのは…学校の保健室だった。
先生『あなた…大丈夫?』
未來『私は……ハッ!はやく練習をしなきゃ…!』
先生『練習ならとっくに終わったわよ…何時だと思ってるの…』
私は先生に言われて、時計を見る。
未來『7時半!?…す、すいません…先生…』
先生『ん?あぁ、勤務時間なら大丈夫よ。私独身だし』
未來『そうですか…ありがとうございました』
私はそう言って帰ろうと荷物を持ち上げようとした。
しかし…指に力が入らない…。
先生『ん?どうしたの?』
未來『…いえ…(なんで…)』
私はもう一度荷物を持ち上げようと試みた…が結果は同じだった。
先生『力…入らないのね?』
未來『……』
先生『手を見せて』
私は言われた通りに手を見せた。
先生『疲れと怪我で力が入らないんじゃないかな。
指も擦り傷で終わるはずなのに…出血が普通より酷い。
たおれたところをみると休んでないでしょ?』
未來『休むわけにはいきません…』
先生『なんか…去年もこんな生徒がいたような…あ、君たちの部活の…玲香っていう生徒だ…』
未來『玲香さん…?』
先生『あの子の場合は喘息だけどね。休めないんだ!って言って聞かなかった』
未來『玲香さんがそんなことを…』
先生『まあ…いいわ、今日は私が家まで送ってあげるわよ』
未來『えっ…』
先生『ほら、いくわよ?』
先生は私の荷物をもって保健室を出ていった。
私は…そのあとをゆっくりと追った。
顧問と保健室の指示で…私は本番まで練習を禁じられた。
先輩方には、十分やったし大丈夫…っていわれたけど…
気休めだってわかっていた。
私は悔しかった…本当に…。
私は家でもゴムを使って手を引く練習をしたり、
ランニングをして体力を落とさないように練習をひそかにした。
そして…本番当日…。
私は先輩方とともにインターハイ予選会場へ来ていた。
私達は顧問の話を聞いてから…着替えに入った。
美波『団体戦…ついにきたね』
未來『はい!絶対勝ちましょう!』
栞里『相変わらず…あなたの傷は生々しい…』
栞里先輩が私の傷を見ていった。
未來『努力の象徴です!(うっ……なに……?)』
私は…ガッツポーズをしたときに感じた痛みに顔をしかめた。
蘭『どうしたの?まだ指痛い?』
未來『いえ!全然!』
私は……できるだけ明るく振る舞った。
美波『…?…よし、はじまるよ…行こう』
一同『はい!』
しかし…私達はかなりのピンチに追い込まれていた。
先輩達が終わって…得点でいえば10対10…。
私がここで…全部当てて、相手がミスしなければ…。
私が一回でもはずしたら…負ける。
私は一.二.三本は何とか当てることができた。
しかし…二本目の時点で…私の腕は悲鳴をあげていた。
未來『(次をはずしたら…負ける…)』
私は常にそう思って射つと決めていた。
??『未來~!!いけー!!!』
私が…三本目を射とうとしたとき…そう叫ぶ声が聞こえた。
未來『(優翔…先輩…?なんで…)』
先輩を見ると…車イスで成瀬先生に連れられていた。
優翔先輩は…スタッフによって注意を受けていたが…。
私は応援してくれる…人がいると思ったとき…痛みが消えた気がした。
未來『(いけ!)』
私は祈る気持ちで矢を放った。
矢は…なんとかまとに当たった…しかし、私の腕は…限界だった。
試合に勝ったと同時に…私は痛みで倒れてしまった。
美波『未來!!』
蘭『未來!?』
先輩達が私のもとへ駆け寄ってくる。
未來『すいません…安心したら…気が抜けちゃって…』
ランチ『まったく…人騒がせなんだから…みら…』
美波『そんなわけないでしょ!…腕見せて』
未來『痛っ!!』
私は美波先輩に腕をさわられ…痛みで顔をしかめた。
美波『こんなに腫れて…いつからなの?』
蘭『う、うそでしょ!?こんなので試合出てたの!?』
私は…ただうなずくしかできなかった。
成瀬『おい!大丈夫か?』
先生が…優翔先輩の車イスを押しながらやってくる。
未來『当たり前ですよ…』
優翔『未來…』
成瀬『…棄権するしかないか…』
未來『え!?できます!!私は…できます!まだ!』
優翔『無理するんじゃない!!』
優翔先輩が…私にはいきなり怒鳴った。
優翔『お前は…まだ一年なんだから…来年からの大会でも
戦えるように準備しとけよ…今無理してどうするんだよ』
未來『…でも、玲香さんとの約束が…』
優翔『それは…個人戦でこいつらが果たすさ…な?』
栞里『当たり前じゃん?ってか…未來、でしゃばりすぎだよ』
美波『そうそう!あとは私たちに任せて』
蘭『ね?辞退して…ゆっくり休もうよ』
未來『はい…』
私は…初めての試合で…無念の棄権をしてしまった。
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