第7話

私は病院から戻ってきて…ひたすら泣きながら練習をしていた。

振られたことが辛いんじゃない。

傷が痛いんじゃない。

ただ…あんなに輝いていた西野優翔先輩が…変わってしまった。

怪我のせいであんなに別人みたいな人に。

私は悔しかった。怪我というものが憎かった。

私達…弓道部の楽しさを奪ったことが憎かった。


私は…1本を射つことに叫んでいた。

未來『やーーーーー!!!!!』

…これに意味があるのかといわれればない…。

しかし、私はこうしていると気分が紛れて集中できた。


私の…一人練習はそこから二週間もつづいた。


未來『(本番まであと一週間…)』

結局あれから先輩たちは一度も来なかった。

やるべきことをわかっているはずなのに…。


私は昼休み…いつものように三人でご飯を食べていた。

優希『未來…本当にもうやめなよ…』

蒼太『その傷の量は以上だって…』

私の指はほとんどテーピングされていた。

腕には湿布がつきもの。耳にもテーピングが施されている。

未來『私が…やめたら…ダメだから』

優希『でも…先輩たちも来ないんでしょ…?』

未來『…絶対にくる…来てくれる…』

蒼太『未來…』

蒼太と優希は顔を見合わせていた…。


私は…一人でも道場に今日も来て練習をしていた。

いつものように…声を張り上げて…。

未來『やーーーーー!!!!!』

??『射つときは集中しろって言ったでしょ!』

私は急に声が聞こえておもいっきり的をはずしてしまう。

未來『…栞里先輩』

栞里『友達が…一年が一人で毎日練習してるっていってたから見に来てみたら…本当にやってるなんて…』

未來『私は…先輩達みたいに逃げたりしません』

私は栞里先輩を無視して練習を再開した。

未來『やーーーーー!!!!!』

栞里『だから!集中しろって言っ…』

未來『だったら…先輩がやって見せてくださいよ!!!』

栞里『!!』

私は先輩が言い終わる前に叫んでいた。

未來『集中しろとか…制服のままの人に言われても私は知りません…逃げた人なんて…私が知ってる栞里先輩じゃない…!』

栞里『未來…』

??『なんで喧嘩してるの……』

??『…本当にやってた…』

私は入口の方を見た。

未來『美波先輩…蘭先輩…』

美波『…喧嘩してる暇なんてないよ…蘭行こう』

蘭『はい…。』

二人はどこかへ行ってしまった。

未來『栞里先輩も…やる気がないならどうぞ…』

私は先輩を無視して再び練習を開始した。

未來『やーーーーー!!!!!』

美波『それじゃだめ。こえはださない。集中』

私が振り返ると…着替えた美波先輩と蘭先輩がいた。

蘭『これで先輩の権利はあるよね』

美波『あなたがやってるやり方は…無駄なやり方。無駄にやって怪我しても意味ないよ』

未來『美波…先輩…蘭先輩…』

私は…やっと…思いが通じたのが嬉しくて…弓を落としてしまった。

栞里『弓を落とさない!!』

未來『栞里先輩まで…帰ったんじゃ…』

栞里『バーカ。後輩に見せてって言われて…そのまま帰る先輩がどこにいるのよ。見てなさい…弓道は心を落ち着けて…射つ』

栞里先輩が放った矢は見事に真ん中に命中した。

未來『栞里先輩…ありがとうございましゅ…』

私はついに泣き出してしまった

栞里『なんで未來がお礼言うの…お礼を言わなきゃいけないのは

私たちの方だよ…ね、美波?蘭?』

美波『そうだよ…未來私達を信じて待っていてくれてありがとう…』

蘭『ごめんね…すぐに来てあげられなくて…』

未來『先輩……』

栞里『さあ!やるよ!本番まであと一週間!』

美波『もちろん!ね!みら……未來!?』

私は…返事をしようとしたが…疲れがたまっていたのか…

気をうしなってしまった。

蘭『未來!未來!?大丈夫!?』

蘭先輩の…叫びを最後に聞いて…私は完全に気絶した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る