第5話

ついに…私たちが想定していた最悪の事態が起きてしまった。

私達はいつも通りに練習を行っていた。

唯一違ったのは…私が射つ練習に参加するようになったこと。



栞里『未來!もっと肩の力を抜いて!』

未來『はい!!』

美波『売ったあとの残心!大切に!』

未來『は、はい!!』

優翔『未來?俺と栞里がやってみせるから見てて』

未來『はい…』

私はついに一時的に下げられてしまった。

最初に栞里先輩が的を狙い、見事真ん中に命中をした。

静かな拍手が起こる。

次の優翔先輩が打った矢はも真ん中にいくと誰もが思っていた。


しかし…現実は…大きく反れていた。


優翔『!!!』

優翔先輩が打った直後に弓をおとし…倒れてしまった。

栞里『優翔!?』

美波『優翔!!!!』

蘭『せ、せんぱい!?』

未來『優翔先輩!!!』

優翔先輩の全身は…痙攣を起こしてしまっていた。

栞里『だ、大丈夫!?優翔!!!!』

優翔『へ、平…平気だよ…』

言葉とは裏腹に…先輩の腕や足は言うことを聞いていない。

美波『未來!顧問を呼んできて!!!…はやく!』

未來『は、はい!!』

私は全速力で職員室に駆け込んだ。

先生『ど、どうしたんだ君…1年?』

未來『…きゅ、弓道、弓道部の白石未來です…

成瀬先生はいらっしゃいますか!!?』

先生『成瀬先生…あぁ、いるよ。成瀬先生!弓道部の子が読んでますよ!』

呼ばれた成瀬先生が私のところにやって来る。

成瀬『ど、どうしたんだ?なにがあった?』

未來『優翔先輩が…優翔先輩…が…』

成瀬先生はそこまで聞くと…『いくぞ』といって、

道場まで走っていった。



成瀬『西野!!!大丈夫か!!』

成瀬先生は先輩たちをどけて、優翔先輩に駆け寄った。

優翔『だ、大丈夫…です…やれます…』

優翔先輩は這って弓を拾おうとする…が掴めていない…。

栞里『優翔!!!!やめて!』

成瀬『西野!お前は終わりだ!!病院へいくぞ!!』

優翔『嫌だ…』

美波『優翔!自分の体を大切にして!!』

栞里『無理しちゃダメだよ!!』

優翔『俺は!!………玲香の分までやらなきゃいけないんだよ!

…ハァ…ハァ…こんな…ハァ…ところで休んでられないんだよ!』

優翔先輩は見たことないような形相で…そう叫んでいた。

成瀬『白石!保健室へ行って救急車を呼んでもらってこい!』

未來『はい…!』

私は…涙をこらえながら保健室まで走った。


私は保健室をノックせずに入った。


先生『こら!!ノックして入りなさいって書いてあるのが見えないの!?』

未來『それどころじゃないんです!…ハァ…ハァ…』

先生『な、なにがあったの?』

未來『救急車…ハァ…呼んでください…ハァ…ハァ…』

先生『なんで?なにがあったの!』

未來『先輩が倒れたんです!!西野優翔先輩が!!』

先生『西野くん…3年の?』

未來『そうです!早く呼んでください!!』

私は精一杯に叫んだ。

先生は私が叫ぶとすぐに救急車を手配してくれた。


私が道場に戻ると…丁度優翔先輩が運ばれるところだった。

優翔先輩は…気を失っていて動いていなかった。

未來『優翔先輩!…優翔…先輩!!!』

私が駆け寄ろうとすると先生や先輩に止められる。

美波『未來!…わかるけど落ち着いて!』

成瀬『白石!落ち着きなさい!救急隊に任せるんだ!』

私は…なにもできずに優翔先輩がつれていかれるところを

見ていた。


栞里先輩と先生は救急車に乗り込み一緒に病院まで行った。


私達は…なにもできずに泣いていた。

美波『…優翔……なんで…』

蘭『せん…ぱい……』

未來『優翔先輩…』




ー救急車ー

先生『西野!!!しっかりしろ!』

栞里『優翔!…しっかりして!』

救急隊『西野さん、頑張ってください…!もう少しです…』





その後…優翔先輩は緊急治療室にて治療を受けた。

先生と栞里先輩から聞いた情報だと…。

左半身は…もう麻痺が続き動けない可能性もあるということだった…。

それによって…もう弓道をやってはいけない…

これは怪我のせいだけでなく…周りの安全のためでもあるらしい。


私達がお見舞いに行った日…優翔先輩は怒りをぶつけるように

叫んでいた。そして泣いていた…。


栞里『優翔落ち着いて!まだわかんないでしょ!』

優翔『俺は!!玲香と約束したんだ!こんなところでやめてたまるか!…早く俺に道具を貸せ!!…頼むよ…』

未來『優翔先輩…』

美波『優翔…』

優翔『予選もでれなくて…玲香との約束も果たせないなら…

死ぬ方がマジだ!』

優翔先輩はベッドから起き上がろうとする…が…

麻痺によって起き上がることができない…。

蘭『先輩!なんてこと言うんですか!』

優翔『蘭にわかるのかよ!!この…俺の気持ちが…』

未來『先輩…』

優翔『…わるい…全員帰ってくれ…』

栞里『でも…!』

優翔『帰れっていってるんだよ!』

栞里『わかったよ…皆…行くよ…』


私達は…なにもできずに…先輩の病室をあとにした。

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